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奴隷を買う話  作者: 川木
8/10

8 奴隷のステータス

 奴隷は物扱いだ。だから殺しても自由だし、何をしてもいい。ただし外から見てペットと同じような枠になるので、宿屋によっては奴隷禁止もあり、場合によっては馬小屋に泊めさせるとなるらしい。


 首輪が魔法具で、主人のどんな命令にも従い、逆らうと締まる。主人に敵意を持つだけで締まる。ただし命令を聞き間違ってしまった場合などは、逆らったとは見なされないので、改めて罰を与えるなりしなければならない。首輪は締まれと言えば、何もなくても締まる。

 衣食住にも規則はないが、しかし街中を歩かせるならば最低限の服を着せたり、飲食店に入るなら身綺麗さが必要だ。またどこで奴隷を鞭うちしても自由だが、血を流して他人の土地や物を汚した場合は主人の責となる。


 大雑把に言えば、一般的な常識には従い、他の人に迷惑をかけないようにして、ペットの躾は主人の責任と言うことだ。


「はい、ありがとうございます。これで契約完了となります。サービスとして初期に奴隷と一緒に買い取った武具と、奴隷服をサービスでつけさせていただきます」


 武具ってその丸太みたいなこん棒のこと? 二人がかりで運ぶ武器とか、使えないからいらないだけでしょ。服ももう一着くれるって、単に他にこのサイズ着る人にいないからじゃない?

 と思ったけど素直にお礼を言っておく。


「ありがとうございます。もう命令できるんですよね?」

「はい、試してみられますか?」

「そうですね、初めてですから、ちょっとすぐ信頼しにくいですから。そこ、お座り」


 奴隷は私の前に座った。それを思いっきり蹴り倒して、踏みつけてから馬乗りになって顔面を何度も殴った。

 奴隷は殴られる度に顔が揺れるが、表情ひとつ変えない。いや、単に表情が分からないだけか? こちらの手が痛いくらいに殴っているので、いくらレベル差があろうと全く痛みがないはずはない。


「お、お客さま?」

「……これだけしても、何も反応しないって、どうなんですか? 反抗心もって、首輪がしまってもいいと思うんですけど」

「いえ、殺されても当然の立場であることは、奴隷にはきつく教え込んでいます。特にこの男は、すでに一度死んでいるようなものですから、死ぬ間際まで反抗心を抱くことはありません」

「そうですか」


 確かにこの奴隷、目を見ても全く怒りなんかは感じられない。と言うか感情そのものが感じられない。奴隷が道端でいきなり苦しみ出すのも見たことあるから、機能にも嘘がないはずだ。

 念のため、さらに立ったり座ったり、いくつか命令したけど問題ない。命令をよく聞くのだから、首輪が不良品と言うこともないだろう。


 人間で男で、でかくて、正直ちょっと怖かったけど、こう言う風に足蹴に簡単にできて、怒ったりもしない。本当に首輪があればいくらでも従順らしい。

 これなら、大丈夫かな。


「すみません。床、汚れてたら弁償します」

「いえ、この男は頑丈ですから。ですけど、女性奴隷なら吐血してもおかしくありませんからね。今回はいいですけど、今後はお控えください」

「すみません」


 とりあえず買えた。


 男を連れて店を出た。回りから注目されてちょっとびくっとしたけと、奴隷の容貌にびっくりしてるみたいだ。

 えっと、何か顔を隠すものあるかな。


 アイテムを見る。お面とかそんな都合よくないし、隠すもの……紙袋被せたら怪しいか。

 いいや。手近な宿に入って、とにかく休もう。


 二件目の宿で、ベッドにいれないなら奴隷可だったので部屋を借りた。


「はぁ、疲れた。君、えっと、」


 名前なんだっけ。もっかい調べて、はいはい、ヨアンね。


「ヨアン、私は疲れてるから寝るけど、邪魔しないでね。私に触れたり、危害をくわえたら殺す。だけど、もしおかしな人が来たなら、私を起こすためにベッドまで近寄るのは許すから、ベッドごと傾けて私のこと起こして。床に転がしてもいいから。なにもなければドアの前でずっと立って、こっち見ないで。わかったらドアの前に行って」


 ヨアンは黙って移動した。よし。寝よう。








 起きた。冷静になった。

 街ごとぐるはさすがにないだろ。アホか。てか、何奴隷買ってんの。まあ、安いし、実際一人じゃこの辺の依頼難しいし、いいか。


「ヨアン、おはよう。こっち向いていいよ」


 ヨアンは振りむいた。じっとしてる。 


「ちょっと話があるから、こっちきて、そこ座って」


 ヨアンはベッド脇に座った。会話と言ったけどこいつ喋れないや。面倒なのを買ってしまった。素直に普通に小汚ないおっさんとかにしとけばよかったかな。


 とりあえず、メモ帳とボールペンを渡す。鉛筆とかいちいちめんどいし、シャーペンとか説明めんどいし、無難だよね。


「これつかって筆談しよう。それはあげるから、用がある時とか使ってね」

「ありがとうございます、ご主人様」


 思ったより綺麗な字を書いたヨアンだけど、ご主人様はやめて。アユム様とするように命じた。


「それであなたを買った理由だけど、冒険ももちろんだけど、ちょっとごたごたして変な人に襲われる可能性もあるの。とりあえず相手が人間でも魔物でも私を守ってね」

「わかりました、アユム様」

「返事でいちいち名前呼ばなくていいよ。書くのに時間かかるから、文字数はできるだけ省略して。どうせ文字だし、敬語じゃなくていいよ」

「わかった」


 よしよし。あ、そうだ。ヨアンのステータスって見れるかな?

 お、見れた。あの悪党三人組は見えなかったけど、所持品はパーティメンバーとしてカウントされるのか。

 能力高いなぁ。って、あれ?


 私の魔法使いも僧侶も、スキル獲得するのに必要ポイントの合計は300だ。だから上位職とかはわからないけど、戦士は基本職だし、同じ300Pのレベル30で全部とれるはずなのに、まだとれてないのが結構ある。取得してるスキルポイントの合計数は300超えてるのに?

 よく見ると、最初のスキルの、ぶった切りも取得必要ポイントが15って高すぎる。一番最初は5なのに……てことは! 私の3倍ってこと?


 え、なんで? 巨人族は人より強いからそんな枷を背負って生きてるの?


「ヨアン、私実はとおーくの国から来たから、この辺の常識に疎いんだけど、聞いていい?」

「はい」


 スキルとか職業とか気になることを聞いてみた。

 それによると、やっぱりおかしい。職業を持てるのは一つで、転職するとステータスもリセットされるとか、おかしすぎだろ。

 なに、ヨアンくんはその体格で、転職したら私以下の腕力になるの?


 改めてシステム画面を見直してみる。

 初期画面では左端に縦に選択肢が出て、右上に時間と現在地が出てくる。

 選択肢は上からステータス、調べる、アイテム、装備、仲間、依頼、設定、ログアウトだ。

 依頼の中にまたマップとかの選択肢がでてくる。仲間は人数増えないけど、フレンドリストとか言うやつ。チャット欄みたいのあるし。

 ステータスでも装備とかできるけど、装備から選ぶと3Dで出てきて姿が見える。ログアウトはずっと暗くなってて選べない。


 そう言えば、音量の大きさとか関係ないし、他のゲームでも設定は触らないから無視してたけど、一回開いてみようかな。

 

「ぴっ!?」


 設定を選んだら次に出てくる選択肢が、設定、ヘルプ、Q&A、GMコールだった。

 このGMコールって、なんかあれだよね!? 管理人に連絡するやつだよね!?


 一瞬テンションあがって選択しようとしたけど、よく見たらこれも暗くなってて選べない。く、くそぅ。ぬかよろこびさせやがって。死ねよもー。


「えーっと?」


 設定は、あ、やっぱ普通に音量とかボタン位置とか、色とかモーションとかそんなのね。はいはい。

 じゃあ次のヘルプは、あー、普通に説明書か。これ読んだら、スキルとかの説明もでたのか。でも量が多いから面倒だなぁ。

 どうせゲーム通りで、なかに入っちゃった場合の出方なんてないだろうし。ま、時間があるときに読むってことで。

 最後に Q&Aか。よくある質問一覧が……お、NPCのスキル取得ポイントがおかしい? これ見てやろ。


 パーティメンバーにしたNPCはプレイヤーの皆様とは異なる仕様になっています。詳しくはヘルプのステータスについて、の一番最後をご確認ください、と。

 ステータスについて、の部分が色が変わってて選べる。地味にこう言う機能は便利だな。


 選択するとステータスについてがでてきた。バーを下にして文章を飛ばす。お、あったあった。この注意文だな。


 ※イベントの為、NPCも仲間にできるようになっています。強制加入もあるため、通常のプレイヤーより1.5倍レベルがあがりやすくなっています。

 ただし本ゲームではプレイヤー間のコミュニケーションを尊重するため、NPCが有能になりすぎないよう設定されています。

 NPCはスキル取得にはプレイヤーの3倍のスキルポイントが必要になります。またサブ職業を持つことができず、転職すると以前の職業は上書きされて残らず、ステータスも初期に戻ります。

 NPCは用法容量を守って正しくお使いください。


 お、おお。ええ、なんか、思った以上にNPC差別されてるんだな。

 えっと、じゃあ基本、私の職業とかについては秘密でいかなきゃ。で、このヨアンは転職させちゃ駄目だな。


 と、そこでヨアンがじっと私を見ている。なんだこら、やんのか。


「ん? なに、ヨアン、何か言いたいことあるなら、言ってよ。気になることがあるなら言いなさい。それが有用かどうかは私が決めるから」


 ヨアンはこくりと頷くと紙に書いて見せた。


「ありがとう。アユム様が突然考えこんで虚空を見つめたから気になっただけ」

「ああ、そう。とりあえず、お昼にしよう。あ、そうそう、トイレとかもあるだろうから、私からいちいち許可しなくても自分から発言していいよ。ただ、トイレだとしてもなにも言わずにどっか行くのは禁止だから」

「わかった」


 ヨアンは一回だしたページをめくり直して答えた。おう、わかってきたね。









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