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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

髑髏の騎士 -魔国建国-

作者: レレナ

短編書いてみました。


ダークです。

裏切りと復讐ものです。


後半、かなりショッキングな、拷問シーン等が登場しますので、苦手な方は控えてください。

 彼は日本の一地方に住む14歳の少年だった。


 家も、とりとめてお金持ちでもないが、生活に困窮するほどでもないし毎月決まった額のお小遣いももらっていた。

 その金額も学校のクラスのみんながもらっているお小遣いを平均したら真ん中か、やや下。まあ、こんなものだろ、と言う金額。


 通っている学校も、有名私立でもないし小・中・高・大とエレベーター式の有名学校でもない。

 何の取り留めの無い、普通の公立の学校だった。


 彼自身も特別頭が良いわけでもなく、スポーツ万能というわけでもない。

 いや、スポーツに関してはむしろ苦手と言ってもいいだろう。

 彼は、同年代に比べて背が小さく、体付きも細いーーを通り越してガリガリだった。体重などは下級生の女の子を入れてもダントツで軽かった。

 背が小さくて「カワイイ」なんてもはや呼ばれず、むしろ「その体付きで大丈夫なの…」と逆に心配されるほどだ。


 もちろん、彼は病気など一切持っていない。

 そんな体付きでも健康そのものなのだ。

 特に食べないわけじゃない。普通の同年代男子と同じくらいものは食べる。まわりと同じ量を食べるのでむしろヤセの大食いに見えるほどだ。

 ただ、なぜか筋肉や脂肪が付きにくい体質みたいで体付きが改善されない。

 なので持久力も瞬発力も低いガリガリくんになってしまう。


 当然ながら、そんなガリガリ、もやし君が女の子にモテるわけがない。

 嫌われてはいないが、とりあえずクラスの一員。そんな立ち位置だった。


 ガリガリのもやし君でも病気も無い健康な一男子だ。人並みに女の子にモテたいと思う。


 つまり、彼には自分の体付きがコンプレックスだったのだ。


 そんな彼がある朝の登校時、急に目眩がして気が付いたら当たり一面真っ白の空間にいた。

 どこまでも続く真っ白な空間。足元にはドライアイスでも使っているかの様にモヤモヤと白く霞んでいる。


 目の前には自分を神様と名乗る、男か女かよくわからない人物。


「わたしの管理する世界を救って欲しいーー」


 神を名乗る人物はそう言った。


 色々と突然の事に混乱したが、長い時間を掛けて、神と名乗る人物は彼に状況を説明し、彼もまた様々な事を質問し、答えてもらい状況を理解する。


 要約するに

 ・自分の管理する世界に魔物がはびこり過ぎ、人間が生活出来なくなっている。原因である魔王を倒して欲しい。

 ・神は直接世界に干渉してはいけないから、別の世界から勇者として彼を呼んだ。誰でもいいわけじゃなく、いわゆるフィーリングが合った者しか呼べないとの事。

 ・魔王を倒してもらえれば、現地の人間が普通に生活出来るようになるから、元の世界に返してもらえる。


 つまりは異世界召喚モノ。異世界トリップ。

 呼び方は様々あるが、つまりはそういう事らしい。

 そして魔王を倒さないと元の世界に戻れない。


 随分勝手な言い草だと思うが、話を聞くに、この神を名乗る人物も異世界からの召喚は出来ればしたくない最終手段みたいなものだったらしく、不本意らしい。


 とは言え、強制召喚→右も左も分からない状態で異世界へ放り出す。何て事はあまりに不誠実という事で、一旦ここに呼んで状況説明をしているみたいだ。


 だったら最初から強制召喚なんてするなと思うが、そうまでしなきゃいけないほど状況は切迫しているみたいだ。

 流石に1日2日で魔王とやらを倒せという訳ではないみたいだけど。


 魔王を倒す為に異世界に渡るに当たり、3つ願いを叶えてくれるらしい。

 持ちきれないほどの金銀財宝とかでも構わないけど、そういう願いよりは『魔王を倒すには何が必要か』を考えそれを願いにした方がいいとアドバイスされた。


 神と名乗る人物には、質問すれば何でも答えてくれた。

 例えば、異世界では言葉は通じるか? と聞けば、通じないと答えられた。

 言葉を通じさせるなら3つの願いで通じるようにすればいいーーと。


 それはつまり、好きな願いを3つと言いながら1つはもはや確定ではないかと言ったが、現地で自力で覚えるという可能性のあるのでこちらで決めさせるということらしい。


 ふむーーと、彼は納得する。


 確かに語学が堪能な者からすれば、そういうこともできるな、と。


 結局、いろいろ考え、3つの願いを決めた。


 ・『言葉が通じるようになる』

 彼は英語は得意じゃなかった。授業で教わっても成績は悪いのに独学じゃ無理。と思ったからだ。

 これは無事に叶えられた。

 ・『魔王や魔族を一撃で倒せる武器防具一式』

 すべての敵を一撃死させるような武器になると、もはや『神器』となり神が直接世界に干渉する事と変わりなくなるので、これは無理らしい。

 色々とさじ加減が難しい。

 代わりに闘争心によって剣と防具一式は元より、肉体も段々強化されていくという武器防具一式という形で叶えられた。

 剣も全身鎧も全て白銀に輝く派手な防具だ。神の加護が宿っているらしい。

 かなり派手だが、勇者として皆の前に立つのだから派手な方がむしろいいかもしれませんねと言われれば、まあ、そうかもしれない。

 ・『不老不死』

 魔王とやらを倒すのにどれくらい時間がかかるかわからない以上、年を取って肉体が衰えるのはまずいし、怪我をして死んでは元も子もない。

 まあ、予想通りというか、これはダメだった。

 代わりに『不死』ではないが『不滅』という形で叶えられた。

 これは肉体は普通の人間の様に死んでしまうが、時間を置くと、予め決めた位置で復活出来るというもの。セーブポイントというやつだ。

 そして強靭な肉体。

 これには1にも2にも無く、喜んだ。

 彼は自分のガリガリもやし君の身体に異常な程コンプレックスを感じていた。

 元々不老不死を願ったのも、ガリガリもやし君では何も出来ないと理解していたので願ったのだ。

 彼はそのコンプレックスから「ムキムキ」「ガチムチ」に強い憧れを持っていたのだ。


 3つの願いを叶えられた彼は無事に異世界に転送された。




 ********************************



 彼は無事魔王を倒した。


 彼は頑張った。

 それはもう遮二無二頑張った。


 異世界に降り立ってから2、3年の頃は、一人で無双をしていたのだが、いくら神の加護がある勇者とは言え身体は1つ。

 不滅の体があっても疲れはする。

 一人で万の大軍は無理だった。


 それでも、何度やられても立ち上がり、戦う姿に『不倒不屈の勇者』と呼ばれ味方が付き始めた。

 何度も死に、何度も立ち上がる。

 何度も死に、何度も立ち上がる。

 何度も死に、何度も立ち上がる。

 何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。

 個人ではなく国々が勇者を称え、味方に付いた。


 個人ではなく、国を味方にする事を覚えた勇者は各国と手を取り合う窓口として奔走し、軍備を増強、魔王軍の数倍の兵力差を整え、ついに魔王軍を打ち破った。


 異世界に降り立ってから、実に10年が経っていた。


 魔王を倒したがどうしたら元の世界に戻れるのかわからない。神からの連絡は無い。


 神からの連絡を待つまで、一番世話になっていたラスフォール王国で世話になることになった。


 国民は諸手を挙げて歓迎した。

 なにせ救国どころか、世界を救った勇者だ。

 王の傍らに控え、常に全身鎧の白銀に輝くフルアーマー。兜に面頬から覗く眼光は鋭く、その姿はまさに威風堂々。

 国の武の象徴だった。




 魔王を倒して3年。

 神からの連絡は無い。元の世界に帰る手がかりも無い。

 この頃から周りの状況がおかしかった。


 いや、おかしくなる兆候はもっとずっと前からあった。魔王軍と戦っていた頃から。


 初めに異常に気が付いたのはいつの頃だったろうか?


 もはや何100回ともなく死んでは生き返った頃だった。


 足の指先が骨になっていた。

「何だこれは!?」

 勇者は焦った。

 1センチ程だが、明らかに肉が無く、骨が剥き出しになっていた。


 薬草や、高価な薬を使っても治らず、常に一緒に闘っていた回復魔法の使い手に回復魔法をかけてもらった。

 何となく、骨になっている足の指先を見せるのは躊躇われたので「調子が悪い」とだけ伝えて。

 結局直らず、回復魔法の使い手には「良くなった」とおためごかしをして終わった。


 そんな事をしていても、こちらに怪我があっても魔王軍の散発的な進軍は止まらない。


 骨になった足先を隠すように戦い、何度も死んでは何度も生き返り、勇者は戦い続けた。


 始めの頃は足先だったので靴を履いていれば問題は無かったが、骨になる箇所は段々進行して行った。


 足先… 足首… 指先… 腕… 脚… 腰…


 初めは呪いかとも思い、高名な僧侶などにも症状を隠し直してもらおうかともしたが、結果は変わらなかった。


 そうしているうちにも魔王軍の進撃は続き、戦い、何度も死んで何度も生き返りながらも戦った。


 もはや身体の半分以上骨となった頃になって、ようやく分かった。


 死んで生き返る度に勇者の骨化は進んで行ったのだ。


 急激には骨化はしない。

 じわり…じわり…と、ゆっくり。


 目に見えない程の遅々さで。

 じわり…じわり…と、ゆっくり。


 魔王軍の進撃は止まらない。


 勇者は戦い続けるしかなかった。


 骨の身体を隠したまま。


 勇者の請願で、世界各国が勇者の元に集い共に戦っている。


 勇者は戦い続けるしかなかった。


 何度も死んで。何度も生き返って。


 ゆっくり…ゆっくり…じわり…じわり…


 勇者は骨化を進行させて行った。


 魔王を倒した時には、もはや勇者に肉体は一片も残されておらず、完全に骨のみの身体となっていた。


 そして、それはついに国王の知るところとなる。


『救世の勇者』

 国王は、その功績を忘れてはおらず、このまま国に残って今まで通りで構わないと言った。

 よくできた王だった。


 ただ、どうしてもその見た目に、国民が怯える事を危惧した国王は、人前では常にフルアーマーでいる事を提案し、勇者もそれに了承した。


 魔王を倒し3年。


 ラスフォース王国国王が急逝した。

 急病だったとも、暗殺だったとも囁かれたが、真相は分からなかった。


 跡を継いだのは順当に継承権第1位の第1王子。


 新たに王になった元第1王子も、勇者の中身が骨である事を知っており、新王は勇者に異常な程警戒心と恐怖を抱いていた。


 結果、勇者は冷遇されていく事になる。


 それまでは常に王の側に控えて武威を示していただけだったが、新王は勇者か近付くのを認めず、むしろ近付くなと言い放つ。


 魔王の驚異が無くなると、当たり前というか、愚かと言うか、テンプレ通り人間の国どうしでの戦争、そして獣人の国への進行。獣人の迫害。


 勇者も戦争に駆り出される事になった。


 無論勇者は拒否した。

 俺が魔王を討ったのは世界の平和の為だ。こうして新たに争う為ではないーーと。


 元の世界に戻りたかったのが一番の理由だが、争いを無くしたかった。

 人々が死んで行くのは見ていられなかったと言うのも、偽らざる思いだった。


 新王は言った。

 勇者と呼ばれているが、魔王を討ったのはお前だけの功績ではない。我国の兵士がいなきゃ何も出来なかったではないか!


 勇者は何も言わなかった。

 それは全て事実ではなかったが、事実の一つではあったから。

 勇者一人ではあの何十万という魔王軍に太刀打ちは出来なかった。

 だから国に援助を求めた。

 だが、援助はこの国だけじゃない。この世界の国々すべてが援助し、共に戦ってくれたのだ。


 自分の国が一番手を貸したーーそう言う思いがあるのだろう。


 こうなっては水掛け論になる。

 だから勇者は何も言わなかった。


 何も言えんか?

 事実だからな!

 お前は単に最前線で戦っていただけの傭兵に過ぎんのだぞ!


 一国の国王とは言え、全世界から認められている『救世の勇者』『不倒不屈の勇者』への暴言。


 最前線で共に、文字通り肩を並べて戦ったこの国の騎士団長や各国の意見調整に骨を折り続けた宰相、外務卿などが「いくらなんでも…」と新王をたしなめたが、新王が暴言を撤回することはなかった。

 出兵の命令も。


 騎士団長と宰相は、勇者の事を不憫に思い、命令なのでとりあえず従軍だけしてくれ、実際に戦わなくていい。その姿だけ味方の兵に見せてくれれば戦意高揚。敵兵に見せれば戦意低下が起こるからーー従軍したという事実だけ整え、切り抜けようとしてくれた。


 実際、勇者の姿だけで敵は戦意消失し、ラスフォール王国兵は俄然戦意高揚した。

 結果は、圧倒的な状況で隣国を落とした。


 気を良くした新王は次いでさらなる隣国、獣人の国へ進行。同時に国内の獣人を迫害した。

 大量虐殺の上、残った獣人をすべて奴隷に落とした。


 ここまで来ると勇者は激怒し、国を出る事を表明した。

 獣人側に付く事も。


 慌てた新王は勇者を罠に嵌めた。


 全身甲冑の中身が骨のみである事を公表し、全国民に発布し、魔王を裏切った魔物と公表した。

 元々、前王と新王しか知らなかった事実であり、勇者の甲冑の中身が知れ渡った。

 ショッキングな内容だけに、その事実の広がりは凄まじく勇者は孤立した。


 噂の火消しにあたっていた、勇者に理解のある者達は拘束され、牢に繋がれた。そのまま処刑され口封じされた者も数多く。

 騎士団長、宰相、外務卿も処刑された。


 ラスフォール王国兵に勇者を騙る魔物の拘束が命令された。


 もちろん勇者が本気になれば拘束される事は無い。

 いくら新王に嵌められたとは言え、従っているだけの兵士をなぎ払い殺すのは躊躇われる。


 勇者の力があれば、殺さなくても押し通る事も出来ると考えた新王は、結界魔法の使い手を大量投入。

 もちろん勇者はこの結界だって破れたが、無理やり破るとその反動で術者が大量に死んでしまうだろう。

 勇者の反撃はそれほどまでに強力であった。


 勇者が無用の犠牲を出さないように考えている事を逆手に取った、新王の作戦であった。


 勇者は大量の結界魔法に拘束され、そのまま地中深くの遺跡に封印された。

 勇者が封印された遺跡は、『凶悪な魔物が封印されている遺跡』として、王家により、立ち入りが完全に禁止された。




 *******************************



 勇者が封印されて30年。


 いくら勇者でも、嵌められ、封印されればその心には怒りが溜まる。


 神から不老の加護は貰ってはいなかったが、もはや骨だけの身体だ。老いは無い。

 さらには『不滅』の加護がある為、死ねない。

 死ねない、動くことも出来ない、眠る事も無くなってしまった状態で、30年という年月は怒りが恨みに変わり、そして怨念へと変わっていった。

 自分を嵌めたラスフォール王国の国王、そして魔王を倒したのに未だに元の世界に返す事の無い神に。


 勇者の心の有り様は変質していった。


 封印されて50年目のある日。


 理由はわからない。

 封印の効力が弱まったのか。

 誰かが封印を解除したのか。


 ただ、如何な理由かはわからないが、勇者は封印から抜け出た。



 さあ、ラスフォール王国国王に復讐だ!


 勇者の心の中にあるのは、ドロドロとした怨念。

 自分を嵌めたラスフォール王国国王への恨み、つらみ、復讐。


 その心の有り様は、かつての勇者と呼ばれた者の有り様ではなかった。

 白銀に輝いていた鎧はどす黒く変色し、背中のマントもボロボロと煤汚れ真っ黒。

 神から与えられた白銀に輝く鎧は『復讐』という闘争心の為、どす黒く変色変形していた。

 同じく、どす黒く変色変形した兜と面頬。

 面頬を取れば同じくどす黒い髑髏。その窪んだ両の眼窩の奥にはゆらゆらと揺らめく青白い幽幻の炎。


 もはや『勇者』とは言えない存在。

 その、おどろおどろしい姿はまさしく『髑髏の騎士』であった。


 行動を始めた勇者だったが、封印が溶けた事をイチ早く察知していた王国は大軍勢を持ってこれに対応。


 髑髏の騎士はラスフォール王国兵士をなぎ払い、殺すつもりだったが意外な事に体にセーブがかかった。


 自分を嵌めたラスフォール王国国王と神に怨念を抱いていたが、まだ勇者としての心が残っていたのか、兵士に対して攻撃出来なかった。


 実は、まだ存命だったラスフォール王国国王はこうなる事を予想し、前回と同じく、結界魔法の使い手を大量投入。

 さらに髑髏の騎士を封印していた30年の間に情報統制、思想統制を徹底し、勇者という存在を無かった事、封印されているモノは凶悪な魔物としていた。


 たかだか30年で、自分の身体を骨にしてまで戦った事を無かったことにされた。

 そして疑うことなく、それを事実として受け入れたラスフォール王国の国民すべてを呪った。


 何100年も前の事じゃない。たかだか30年前だ。

 当時お前たちは何に怯えて生活していた?

 何と愚かな、自分で考えることのしない国だろうか!


 髑髏の騎士はラスフォール王国の全てを呪いながら再び封印された。




 *******************************



 髑髏の騎士が再封印されてから10年。


 髑髏の騎士は再び封印から抜けた。


 今度は自力で封印を解除した。

 10年。ずっとラスフォール王国の恨み、つらみ、怨念、呪いを吐きながら、封印の内側から封印を壊し続けた。


 封印を壊した衝撃で封印の遺跡ごと破壊され、あたりは巨大なクレーターが出来た。

 そのクレーターに川の水が流れ込み、数時間もすればクレーターの形そのままに、大きな湖ができるだろう。


 皮膚すら無い、骨だけの身体には風の感触すら感じない。

 しかし10年ぶり、最初の封印からは40年ぶりの地上。


 カカカカカカカカ


 自然と高笑いが出た。


 目指すはラスフォール王国!


 今回も、ラスフォール王国の反応は早かった。

 ラスフォール王国兵数万。数百人の封印魔法の使い手。


 今度は攻撃を止めん!


 鎧袖一触。

 ラスフォール王国兵数万。数百人の封印魔法の使い手はわずか1時間で地上から消滅した。


 そのわずか1時間後。


 ラスフォール王国は混乱を極めた。

 封印に来た兵士達のその全て(・・)が髑髏の騎士に虐殺されたのだ。

 そう、全て(・・)。伝令兵すら逃さずの虐殺。


 全く情報がないままの王都奇襲。


 重要建造物や、重要施設、王城が先ーーなんて事はない。

 まさに進軍そのまま、進行方向にあるものは全て破壊されていった。


 この時になると、髑髏の騎士を筆頭に、近隣の魔物がすべて髑髏の騎士の元に集まり、王都を蹂躙した。

 勇者が魔王を討伐しようと、魔物がそのまま、消滅したわけじゃない。生き残りはどこにでもいるし、野生の魔物として今まで生きてきていたのだ。

 壊し、殺し、奪い、嬲る。


 地獄絵図。

 王都の光景はまさにそれだった。


 たった一夜。

 ラスフォール王国王都は完全に破壊され、生き残っているものはいなかった。


 早々に生け捕りにされていた、ラスフォール王国王室の面々は、未だ王位に就いていた62歳の国王ーー髑髏の騎士を嵌めたその人の眼前で一人ずつ処刑されていった。


 ゆっくり。ゆっくり。時間をかけ、爪の間に針を一本ずつ刺し、その後は生爪を剥ぐ。

 その指を一本づつハンマーで叩き潰す。

 片目に針を刺し、潰す。

 鼻を削ぐ。

 耳を削ぐ。

 下の先っちょだけ削ぎ落とす。

 身体の末端部分からわずかづつ肉を削ぎ落とし、治癒魔法で回復させ、またそぎ落とす。


 始めの犠牲者は国王の孫娘、10歳の少女で、爪の間に針を刺したところで失神したので回復魔法をかけようとしたが、回復する前にショック死した。


 ふむ。失敗した。


 次は国王の三男で35歳の侯爵。

 侯爵は随分もった。

 体中の肉を削ぎ落とし、回復させ、削ぎ落とし、回復させーーを繰り返していたらいつの間にか死んでいた。


 次も国王の孫娘で2人同時。

 オークやゴブリンに預け、陵辱させた。

 何百匹という魔物に陵辱され、ぼろ雑巾のようになり、最後にはオーガに食わせた。

 ボリボリと、骨ごと砕かれ食われる音が小気味よい。


 髑髏の騎士は喜々として拷問を行った。


 拷問は、全て王家の者達に見せた。

 目を逸らす事を許さず、強制的に見させた。


 拷問の理由。国を潰す理由を問われたので国王に話させた。

 嘘を付く度、他者への拷問を強めながら。


 かつての魔王軍の侵攻。

 勇者の活躍。

 各国一丸となっての協力。

 勇者への奸計。

 勇者を魔物として封印。

 その後の情報統制。

 思想統制。


 次第に明るみになっていく事実、そして現在王国でされている教育の嘘。


 王族達は初めて自分たちの国王が、国が、何をしてきたのか知ったようだ。

 そして髑髏の騎士がかつて勇者と呼ばれていた存在であったことも。


 王族達は現国王の処刑と髑髏の騎士への賠償、国民への真実の発表をすると言ってきたが、そんなことは関係無い。


 ラスフォール王国は潰す。

 全て残らず!


 それからたった一日。

 王都破壊から夜が明け、次の日暮れが来るまでにラスフォール王国のすべてが壊し、殺し、奪い、嬲られた。

 この日、ラスフォール王国は滅亡した。


 わずか40年で世界3大強国にまでなったラスフォール王国が一夜にして滅亡。

 この事実は一気に全世界に轟いた。


 魔物の大群が次はうちの国か?


 旧ラスフォール王国領の近隣諸国は戦々恐々したが、髑髏の騎士はそこから先は一切進軍を行わなかった。


 髑髏の騎士にとってはラスフォール王国さえ潰せればよかったのである。後は元の世界に戻さない神だ。その他はどうでもよかった。

 ラスフォール王国は呪っていたが、他の国に何かされた訳じゃない。

 わざわざ戦争したいわけじゃないので、魔物たちにはこれ以上の破壊や殺戮をするなと命令し、魔物たちもそれに従った。


 しかし、そうなると、喉元すぎれば熱さを忘れるわけで、突然空白地帯になった、旧ラスフォール王国領に他国の侵略が開始された。

 しかし、国境を越えたとたん尋常じゃない数の魔物によって追い払われた。

 戦争を吹っかけるつもりはないが、棚ぼたを許す様な真似は許さなかった。


 後に、この国は魔王が治める魔族の国として周辺諸国に認識され、ちょっかいさえ出さなきゃ、普通に貿易等も出来る国として認知されることになる。

今回初めて短編を書いてみました。


いかがだったでしょうか?


誤字・脱字・感想等ございましたら、お待ちしております。

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