出会
「…あぁ、よかった。目が覚めたか。」
今、目の前には見知らぬ顔があった。
赤い髪に金の目、ワイルドな顔立ちの男だ。歳は三四くらいだろうか。
今はそんなことはどうでもいい。
少し前を思い出す……
「―ふざけ――でよ――。」
「ミーナ?どうし――」
ミーナの無線から小さく何かが聞こえ、聞き返そうとした瞬間。
「ふざけないでよっ!何で私の場所を奪うのよッ!いつも、いつも…無人機の鉄屑のくせにィィィッ!!」
無線越しに爆発するような声と、外部マイクが拾ったブースターが爆発するような音が同時に響く。
同時に、ミーナの乗るプリュムが最大出力でブースターを吹かし、燃える街へ…あの赤い粒子を飛び散らせ飛び込んでいった。
慌てて追おうと手元のディスプレイを操作しようとすると…
ふと目に入ったレーダー、ケイトのクレールの後ろと、自機であるジュネスの後ろに一個ずつ赤い点が表示されていた。
「……ッ、ケイト!」
すぐに手前のレバーを動かし、ディスプレイを操作しながら背後へ向き直り、すぐ目の前に迫っていた鉄の剣を牙鉄盾から素早く抜いた刀で受け止め、もう片腕の盾で敵機のコックピッド部を殴りつけると、鈍い音と共に敵機が地面に倒れた。
そのまま、敵の撃破を確認せず、すぐにケイトのクレールをカメラに収める
次の瞬間、コウタの中で渦巻いていたものが、一瞬にして消えた。
ミーナが飛び出す前、実はもうこの時からケイトは敵の姿をレーダーに確認していた。それは、彼が臆病だからこそ身についた能力だった。
「…ッて、何なんだよぉ!」
さらに、先ほどの試運転でガンブレードを手に持っていたのが幸をなしたようだ。背後へガンブレードを向けながら体を相手に向けると同時に、ブレード部が敵の右肩を偶然捉え、破壊した。
「よしっ…ッ。」
しかし、現実は無情だった。敵機が武器を持っていたのは左手で、さらにそのプラズマキャノンの銃口がクレールのコックピッド部につきつけられていた。
――終わった。
そう思ったとき、クレールの上体がわずかに傾く、それが助けになった。
コックピッド部のすぐ横部分が抉れる。もしこれが敵機「ポーン」の、プラズマキャノン以外の武装、グレネードマグナムなら爆風で確実に死んでいただろう。
「…コウ…タ…。」
しかしコックピッド部すぐ横からの衝撃だ、ケイトは最後に親友の名を呟き気絶した。パイロットに合わせるように、クレールは地面へと倒れた。
「……ッ、ケイト!」
コウタが叫んだのは、それは『死』と解釈した故だった。
薄れゆく意識の中、ケイトは外向ディスプレイを見る。
「…やっぱ、コウタはすげぇや…。」
そこには、紅を纏う黒騎士の姿があった。
『JUNES-ABSOLUTION 』
「?」
クレールが倒れケイトの名を叫んだ瞬間、コックピッドが真紅に包まれ、そんな言葉がメインディスプレイに表示されていた。
そして、変化はすぐに訪れた。
「機体が…勝手に動いているのか…!?」
コウタはどこにも触っていない。しかし、機体の動きはコックピットにいる限り振動として伝わってくる。
いまコウタはなにもしておらず、機体は振動している。
画面には絶えず『ABSOLUTION」の文字が点滅している。
直後、コックピットが大きく揺れた。
機体が跳躍したのである。
跳躍してから落下するまでの間、ジュネスは刀を取り出し、盾を投げ捨て、すぐ近くにいたポーンの右肩口から左太ももまでをバッサリと斬ると直後、ポーンの機体が閃光と共に爆発した。
「…わからない、この…力は。」
機体の動きに体が同調せず、コックピットで意識が薄れていく。やがてコウタの意識は途絶えた。
動かなくなった機体を見る二つの勢力があった。
ケイトのクレールは、近くを走っていた火星軍の輸送トラックに回収され、コウタのジュナスは謎の三機の機体により回収されることとなった。
…そして、目を覚まし今に至る
赤い髪に金の目、ワイルドな顔立ちの男は、友達を遊びに誘うように
「なぁ、あの黒い機体どうやって動かしたんだ?どこで手に入れた?どうやって動かすんだ?」
と、マシンガンのように質問をぶつけて来た。
答えようと口を開くと、パンッという音がした。男が後ろから後頭部を叩かれたようだ。
「…ってぇな、おい!」
「病み上がりの少年に、そんないっぱい答えられるわけないでしょう、この"赤髪"。」
パッと見、知的な美青年とも見える長身で眼鏡をかけた女性が呆れたように赤髪の男をみていた。
その目が僕を見るとニコリと笑い
「初めまして、よく眠れたならいいわ。」
と、母性のある笑みを向けた。
そして、こう続けた。
「そして…ようこそ、『屍兵団』へ。アタシは貴方を保護したこの軍の団長のヒミコ・カガリよ。貴方は?」
「…コウタ・ハガネです。…あ。」
流れるまま、つい名乗ってしまった僕を馬鹿にしたように赤髪の男が笑って
「ハッハッハァッ…!わりぃわりぃ!俺はキザム・テンだ、よろしくな、捕虜のハガネくん。」
…背中に何か重たいものが乗ったと思いながらも、二人から差し出されたてを握り返した。