皇帝のカルテ?
★ひよりが見つかった次の日★
目の前にいる無駄にお花畑を振り撒く人物にいい加減ウンザリしてくる。
睡眠不足・魔法部のフォローで心身ともに疲れきってるあたしにはこのお花畑はかなりキツイ…だけど相手にしないわけにはいかない。
…何と言っても相手、皇帝ですから。
無駄に長い足は医術部の丸椅子には全く合っていないし、銀糸のような髪と澄んだ青い瞳を持つ彼の雰囲気は上に立つものが纏っているそれでしかなく、何か患いを抱える患者のような弱さは微塵も感じられず医術部では浮いた存在でしかない。
「で、どうされたのですか?」
「そんな他人行儀な言い方はよしてくれ。私とお前の仲だろう」
誤解の無いように言っておきますが、あたしと皇帝の間に色恋なんて物は無いんで、この人の言ってる事は単に『幼馴染』…今のあたしの心境的には『腐れ縁』ですので…まぁ皇帝自らこう仰られてるんで、遠慮なく
「ってか、執務室なり私室に医者呼べや。皇帝が自ら医術部に乗り込んでくるなんて馬鹿…馬鹿なのか?」
「…変わりすぎだ」
飛んでくるお花畑はあたしの絶対零度の怒りに枯れ始めるけど、皇帝はどんどん咲かせるので医術部の雰囲気はとんでもない事になっていて、それを証明するように助手も誰も近寄るどころか部屋に1人もいねぇし…
「こほんっ私用で呼びつけるわけにはいかんだろう。出向くのが当然だ」
「その目は節穴か?今あたし職務中」
「私が来るまで寝ていただろう」
「………」
確かに寝てましたよ。寝起きなんで機嫌最悪ですけど何か?
「ほぉ~お前のその口がそういう事を言うのか…。魔法部の馬鹿共の大量手術で精神的に疲れ果てるは、すぐに文句を言う奴らのせいで連日、睡眠時間もまともに取れない。おまけに魔法式の方面のフォローまでしてきたうちにそういう事言うのか?」
「すまない」
まぁ、治療については本職なのだし、フォローについては皇帝が自ら動こうとしたのを止めたのはあたしなので、つまりはっきり言ってこれは八つ当たり以外の何物でも無いのだけど、素直にリュージュが謝ってくれたのは、あたしのストレスの抜きどころを知っているからこそで…
つまり彼がここに来た理由は、イライラ最高潮であるあたしのガス抜きに他ならない。あたしはそこで皇帝という名の器を持った彼に対して自分自身の未熟さを考えさせられる。つまり冷静になりイライラした態度はどこかへ消えて無くなってしまうのだ…
「どっちが治療されてんだか…」
「…どうした?」
「うっさい。皇帝死ね」
…昔からこうだ。
自分の意見を押し付けるんじゃなく、相手自ら自分を振り返らせる技。相手は自分で考え改めちゃったら直さざるおえなくなる。
…たちの悪い技だ
「でも……ありがと。後であたった助手に謝っとくわ」
にっこり笑ってその言葉を受け止めてくれる。
それで帰るのかと思いきや…
「で、聞いてほしいのだが…」
そこから手配書の女『アサミズ』に関して、やれ「小さかった」だの「年齢の割りに苦労していて、礼儀正しかった」だの2時間延々聞かされた。
ようやく必死に皇帝を探していたシュビに捉まり、連れられていったのだが、その時にすでにあたしは灰と化しており……
あぁ…「あたしの感謝を返せ」と思ったのは言うまでもない
少し短いですが、皇帝×シーのやりとりです