俺じゃない
次こそは魔王を殺す。
「ふむ。弱いな」
ボギッ
今度こそ魔王を殺す。
「勝負だ。勇者」
ザシュッ
次だ。次。
次こそ。次こそ…………。
もう、何回死んだ?
やばい、忘れた。
でも、今回は……。
俺の目の前には、黒く大きな城。
「やっとだ……」
やっと、たどり着いた。
俺の手に握られるのは、黄金に光り輝く聖剣。
俺がすべてに絶望した時、煌々と光輝いた伝説の剣。
俺が死ねば死ぬだけ光り輝く、意地の悪い剣。
でも、今度は勝てる。
「ようこそ勇者よ。全員で歓迎するよ」
俺の目の前にいるのは、十五体の魔族。
然の王アベッキ以外の十四体の負王角と、魔王。
「魔王。お前を必ず殺す。どれだけ犠牲を払っても」
俺の後ろに転がっているのは、剣士の死体と、魔法使いの死体と、僧侶の死体。
そして、無数の俺の死体。
今まで死んできた俺が言っている。
殺せって。
終わらせろと言っている。
でも多分、その瞬間は今じゃないんだろうな。
「いつか絶対殺してやる」
俺は真っ先に一番近くにいるナキイラヅを殺した。
そしてその隣にいた双子と思しき少女を殺す。
その瞬間、世界が暗くなる。
その世界に白い粒が無数に浮かび、何かが俺の額を貫いた。
あぁ、これ、また死ぬ奴だ。
じゃあ、今何体殺せるか試さないとな。
俺が聖剣を振るう。
あぁ。
後、何年俺は生き続けるのだろうか。
きっとそれは途方もない時間なのだろう。
生きて、死んで、生きて、死んで。
そして……
あれ。
なんか、涙が出てきた。
なんで、戦ってるんだろう。
本当は人類なんてどうでもいいのに。
俺が幸せなら、それでよかったのに。
もう十分か。
十分じゃないか?
頑張っただろう。俺は。
……じゃあ、もういいか。
「死ね」
俺の右半身が蝕まれるように溶けた。
「リセット」
俺が言葉を口にする。
目の前には、地面に突き刺さった黄金の剣。
そして、興味津々な目線を俺に向ける民衆。
勇者にしか引き抜けない、伝説の聖剣。
それを前にし、俺は後ろを向いた。
もう、あれは俺に必要ない。
「おぉ!勇者様の誕生だ!!!」
民衆が一気にざわめいた。
俺はバッと後ろを振り向く。
聖剣は、黄金の輝きを放ちながら高々と掲げられていた。
……あぁ。
心のどこかで、安心した。
やっぱり、俺じゃなかったんだな。
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