全部無駄になった
「どーも。俺が勇者だ。よろしく」
「我は剣士のドゥードゥと申す!よろしく頼むぞ!」
「そ、僧侶の……メリーって言います!よ、よろふぃ……すいません!よろしくお願いします!」
「……魔法使いの、エルファ。よろしく」
俺は弱い。
だから今まで魔族に敗北してきた。
俺がするべきことは道中を安全にすることじゃない。
俺が、どんな敵でも倒せるように強くなることだ。
「みんな。さっそくで悪いんだが、話がある」
俺は旅に出る前に全員の力量を測り、訓練をするべきだと力説した。
俺たちは国が選んだ”最強の人材”というだけで、お互いのことは何も知らない。
今この場で全員の実力が分かっているのは俺だけだ。
「良いわね。ちょうど私もあんたたちの実力を知りたいと思ってたところなのよ」
魔法使いが俺の意見に同意する。
「よし、決まりだな」
俺が死んだら俺が身に着けた実力は全部抜け落ち、知識しか残らない。
だから修練はあまり好きじゃなかったが……やるしかない。死なないために。
俺は、過去に一回だけ異常に強くなったことがある。
聖剣が黄金に光輝き、それに呼応するように体が熱くなった。
それでも死の王ドレィには敵わなかったが。
あの時の感覚を取り戻す。
どうにかして、確実に。
カンッ!カンッ!
「良いですぞぉ!良い動きです!」
あの後実力を見せあい、俺はなぜか剣士ではなく魔法使いから剣術の小言とアドバイスを受け、最低でも三か月は鍛えようということになっていた。
そして剣士からは剣術を習い、魔法使いからは突破魔法である”俊敏魔法”を習っている。
「ほぉれ!」
ビュンッ
カラン……
剣士の一撃で俺が木刀を落とす。
また負けか。
しかし、剣士はかなり機嫌がよさそうだ。いつものことだが。
「良いですなぁ!もうそろそろで我を越えれるのでは!?」
「おだてなくていーぜ剣士。まぁでも、”悪く”はねぇレベルにはなった気がする」
俺が水を飲みながら言う。
その時、僧侶が俺の方に駆け寄ってきた。
そして、俺の背中をさする。
「いつもあんがとな」
「えへへ。私の仕事ですので」
僧侶は回復魔法の使い手で、修行が終わると今のように俺の疲れを癒す魔法を使ってくれている。
僧侶一緒に様子を見ていた魔法使いも歩いてきて、
「私の教えた俊敏魔法ももう覚えたし……そろそろ出発することができるレベルじゃない?」
と言った。
「そうだな。そろそろ頃合いだし……行くか」
五度目の旅が始まった。
しかし、聖剣はいまだに輝いていない。
旅は順調だ。
魔族領に入ってからも、俺が今までの人生で魔族が居ないルートを知っているため安全な旅を送れている。
山まで来られた。
「来たな」
「ギェエエエ!!!」
山の主。
こいつを最速で倒す。
魔法使いの心が折られる前に。ドレィが来る前に。
「うおらあああ!!!」
俺が山の主の首を切り落とす。
何とか……何とか倒し終わった。
でも、前回よりもかなり順調だ。
「よし!ほかの魔族がやってくる前に逃げるぞ!」
俺は息を切らしながらも走る。
この戦闘の音を、あいつは絶対に聞いているはずだ。
逃げるべきだ。
なるべく遠くへ、遠くへ……
「よし、ここまでくれば大丈夫か……」
かなり走った。後半はもう歩いてるみたいな速さだったけど。
「とりあえずここで野営するぞ」
「ひぃ、ひぃ……もう無理ですぅ……」
僧侶が地面に倒れこむ。
僧侶は器用なやつだ。移動するときにこっそり自分に疲れをいやす魔法を使っている。
それでも今回は走りすぎたな。俺がビビりすぎた。
「体力が完全に復活するまで数日かかる。しばらくは慌てずゆっくり、少しづつ歩こう」
それから数日歩き……
「集落だ」
魔法使いが呟く。
「なんでこんな場所に……」
そして、足を一歩進めた。
「ダメだ」
俺が魔法使いの肩を掴む。
「なんで……」
「よく見ろ」
目を凝らし、村にいる人間をよく観察する。
「……角だ」
角。
それは魔族固有のものであり、魔族の誇りでもある。
「遠回りするぞ。なるべくバレないように」
「すごいね勇者。よく見ている」
魔法使いが感心したように言う。
「まぁな」
前回この集落のやつらに殺されてるし。
とりあえず、一度殺されたここは抜けた。
後は魔王と戦うだけだ。
「やぁ君たち。あの村に興味があるんだね」
その時、真後ろから少女の声がした。
俺がバッと後ろを振り向く。
そこには、角の生えた白シャツ一枚の少女が居た。
「警戒しないでよ。うちは強くない。言の角、ナキイラヅ。負王角で一、二を争う雑魚さ」
少女が言う。
負王角!!こいつもか!!
「もー警戒しないでよ。ところでなんだけど……」
「こいつ”も”ってどういうことかな?」
ナキイラヅが俺を睨む。
は?
「君たちは負王角の誰とも出会ってないはずだ。それなのに、なぜ”も”という表現が出てくる?」
こいつ、心が読めるのか?
まずい、考えるな。
「心は嘘を吐けないんだ」
俺のリセットのことは……
「リセット」
無理だ。考えようとしないと思うと余計考えてしまう。
リセットのことを口に出してはいけない。
誰かに知られると、リセットは……
「時間を、巻き戻どす……?」
俺が目を開く。
そこには、見知った宿の天井があった。
俺のリセットは、誰かに知られた瞬間、
強制的に、”リセット”される。
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