リセット
「ぉぉお!!」
俺がベッドから飛び起きる。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
首……頭……ある。
よかった、よかった……。
でも、まただ。
また、倒せなかった。
三度目の死だ。
まだ魔王にすら出会えてないぞ?俺。
ちくしょう。早く魔王を倒さないと。
早く、終わらせないと。
俺は勇者。
俺の魔法、”リセット”で何とか魔王を倒してやる。
「どーも。俺が勇者だ。よろしく」
「我は剣士のドゥードゥと申す!よろしく頼むぞ!」
「そ、僧侶の……メリーって言います!よ、よろふぃ……すいません!よろしくお願いします!」
「……魔法使いの、エルファ。よろしく」
今日はメンバーとの顔合わせの日だ。
ドゥードゥ、メリー、エルファ。
全員、旅の途中で死ぬ。
俺が未来を変えるんだ。
俺しか未来を変えることはできない。
俺ならできる。
「じゃあさっそく行くぜ」
俺は馬車に乗り込む。
この後に何が起こるかは覚えている。
初日の村に魔族が現れて撃退して、それから魔族領までは基本順調。
今は安心できる時期だ。
後は考えろ。どうやって魔王を倒すかを。
一回目は道中に居た強い魔族に俺だけ殺された。
二回目は魔王城の近くにある集落を人間のものと勘違いして近寄った結果、集団リンチにあった。
三回目は負王角の死の王に気付いた時には殺されていた。
魔王に会う以前に道中の敵が強すぎる。
幸いなことに、このメンバーは俺以外は強い。
剣士も魔法使いも火力がバケモンだし、僧侶だってちぎれた腕をくっつけられる。
このパーティーの足を引っ張っているのは、俺だ。
なんせ俺は聖剣を抜いただけで才能も何もない。ただ、”剣に選ばれただけ”の人間。
それでも、俺はやるしかねぇ。
俺は勇者だから。
どんなに弱くても、世界を救ってやる。
「剣士、暇だしなんか面白い話をしてくれよ」
馬車に揺られながら俺が剣士に話を振る。
こいつの話は面白くないが、話の設定だけは結構好きだ。
「む。勇者よ、我にその話を振るとは慧眼であるな」
剣士が少し困惑しながらも嬉しそうに笑う。
「はぁ……馴れ馴れしい。私、あんまりそういうの好きじゃないからやめてね」
あ。
そっか。
お前ら、俺と一緒に過ごした時間覚えてないもんな。
「……わりぃ」
…………。
少し、寂しいな。
二週間後。
やっと魔族領まで着いた。
問題なのはここからだ。
ここからはなるべく魔族が居ないルートを通る。
三回死んで強い魔族がいる場所は大体分かっている。まぁ、魔族領の奥にしか強い魔族はいないから、序盤はそこまで警戒しなくていいけどな。
「行くぜ」
俺は歩き始める。
初日は魔族の密度が低いのでルート次第じゃ魔族に出会わないことも可能だ。
三週間後。
山。
「剣士!」
「あいよ!!」
この山には山の主と思しき超巨大な魔族が存在している。
こいつを避けて山を抜けるのは多分不可能だ。山全体がこいつのテリトリーであり、多分だがなんかの魔法で侵入者が分かる仕組みになっている。
「うおおおお!!!」
こいつの倒し方は知っている。
魔法で口からビームを吐くとき、全身を覆う魔力が少し減るから、その時が攻撃チャンス。
木々が邪魔だからでかいこいつは自由に動けない。それ以外のタイミングは避けでいい。
「みんな!どいて!」
魔法使いが杖を魔族に向ける。
魔族も頭を魔法使いに向けた。
「風魔法ぉぉ!!」
ブォン!!
魔族の体が消しとぶ。
「ナイス!」
「ハァハァ……」
魔法使いが膝から崩れ落ちる。
俺たちの中でも魔法使いは別格だ。
後は俺さえ強くなれば……勝てるかもしれない。
次の日の朝。
「……ん?」
俺は目を覚まし、その瞬間に違和感に気付いた。
魔法使いが居ない。
「みんな!起きろ!」
どういうことだ?もしかしてさらわれた?いや、まさか……
俺は魔法使いが居たはずの場所を見る。
そこには、一枚のノートがあった。
ノートの内容は日記で、これまでの旅の記録が適当に書かれている。
そして、一番新しいページには……
「わたしはもうむりだ。こわい。かえる」
と書かれていた。
「魔法使い……」
昨日のあの魔族のせいだ。
あの戦いで魔法使いの心が折れてしまったのだ。
「おいおいマジかよ……」
冷や汗が流れる。
お前が居ないと魔王討伐なんて……
ゴロンッ
俺の目の前に、魔法使いの頭が落ちてきた。
「は?」
「ふむ。ソロの魔法使いは珍しいと思ったが……やはり仲間がいたか」
この声……
心臓がギュッと握りつぶされるような感覚になる。
首のあたりが、少し冷たくなる。
「リセット!!」
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「あっぶねぇ!!!」
顔合わせの日に泊まっていた宿。
良かった。死ぬ前に能力が発動できた。
死の王、ドレィ。
あいつをどうにかしないと、魔王を討伐するなんて夢のまた夢だ。
いや、違う。
あいつは山の主の魔族とは違い人間の形をしているし、テリトリーとか言う概念もないはずだ。
あいつは絶対に避けて通れるはず。
落ち着け、考えろ、俺。
時間は何週間かある。
考えるんだ。
魔王を、倒す方法を。
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