大ネズミの作戦
グラウンド10周追加となった結果、一番遅かったアランが一人で腕立て伏せをしていると、森田が隣にやってきた。
「アラン、体の針について医者には何か言われたか?」
突然やってきた森田に驚きつつ、アランは答えた。
「あ、はい。恐らく遺伝子の突然変異だろう、と言われました。世の中には、針金みたいに固い髪の毛が生える人もいるそうで、この針もそれに近い状態らしいです。まぁ、俺の場合は筋肉を意識することで体内に戻せるから、いいんですけど。でも、ミランが」
アランはミランの涙を思い出し、腕立て伏せを止めた。すると、森田がアランを叱りつけた。
「途中で止めるな!ミランがどうした?」
「すみません!ミランが、すごく落ち込んでいます。夜も眠れないからと勉強ばかりしていて、とても心配です」
アランは汗を流しながら、腕立て伏せを繰り返した。
「···その心配は、ミランのためになっているのか?お前が今腕立てをしているのも、遅い波多野を庇ったつもりか?」
本心を見抜かれていることに気付き、アランはハッと息を飲んだ。
(班長は、気が付いてるんだ―)
「班長、応援要請です!近くの村にネズミが出ました!」
森田の無線機から、応援要請の連絡が聞こえてきた。
「今すぐ行く。アラン、お前もついて来い」
校舎から飛び出してきた菅原、森田とともに、アランは自動運転トラックの荷台に飛び込んだ。
「アラン、ネズミの急所は脳と頸動脈だ。もしネズミが来たら、これを頭に刺すか首を切れ」
そう言って、森田がアランに剣を渡した。
「班長、訓練生に剣は早過ぎます!」
「問題ない。俺が戦場に立ったのも12の時だ。責任は俺がとる」
止めようとする菅原に森田が答えた。
村が近付くと、既に到着していた志穂が大ネズミと格闘していた。
森田はトラックの荷台から大ネズミの頭を狙い、銃を放った。
弾は大ネズミの頭に見事命中し、その場に倒れた。
「すごい!班長は銃も使えるんですね」
アランが感嘆の声を上げた。
「当たり前だ。班長は元傭兵だぞ」
「菅原、アラン。行くぞ」
森田はまだ動いているトラックの荷台から飛び降りた。菅原とアランもそれに続く。
村の側には、森田が倒した大ネズミ以外にも、複数の大ネズミがいた。
「村人は?」
「ここに残っている3人が最後です」
森田の問いに志穂が答えた。
「早く荷台へ!」
志穂が村人をトラックの荷台へ誘導した。
森田が、大ネズミに向けて数発の銃を放った。
(なぜだ、いつもより動きが鈍い)
銃を撃っていた森田が、大ネズミの動きがいつもと異なることに気が付いた。
大ネズミはこちらを襲おうとはせず、村から少し離れた場所で円を描くように止まっていた。
(これは···)
「ん!?」
大ネズミ達の隙間から、ラジコンカーのようなものが複数台こちらに向かってくるのが見えた。
「It's a trap!全員今すぐ荷台に乗り込め!」
大ネズミ達の作戦に気付いた森田が、その場にいた全員を急いでトラックに乗せ、走らせた。
「Go!強行突破するぞ!」
その場からトラックで逃げようとする森田達の前に立ちはだかる複数の大ネズミ。森田と志穂、菅原が銃で応戦するが、数が多すぎて村人が襲われそうになる。
「や、やめろー!」
アランがもらった剣を大ネズミの頭に刺した。倒れる大ネズミ。
(や、やった!)
喜ぶアランだが、直後に丸く太った大ネズミがアラン達に襲いかかった。
「俺が仕留める!お前達は逃げろ!」
そう言うと、森田はトラックから飛び降りて大ネズミと格闘を始めた。
ドドーン!!
トラックが森田がいた場所から離れたところで、村の中心部から大きな爆発が起きた。




