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獣乱のゲノム  作者: 大野 響


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6/10

八王子訓練場

 田舎道を走っていたバスが、フェンスに囲まれた敷地内に入って止まった。

 バスが入ると、扉は自動的に閉められた。


「みんな、着いたよー!はい、降りて降りて」

 バスの運転席そばにいた志穂が立ち上がり、声を出して生徒達の降車を促した。


「うおー!ひっれー!ここ、小学校の10倍以上あるぞ」

 一足早くバスから降り立った玄真が、広い敷地内を見渡して声をあげた。


 八王子訓練場と書いてある敷地内には、生徒達が暮らす寮やグラウンドの他に校舎やトレーニング施設が併設されていた。



 大学の講義室のような場所で、教壇に立って話をする志穂。

 その隣には、獣衛隊隊員の菅原咲也(スガワラサクヤ)もいる。


「これから、君達にはこの八王子訓練場で、中学生兼獣衛隊訓練生として、生活してもらいます。特にここにいる菅原教官には、君達の訓練全般を、統括してもらう予定です」

 まだ若いが目つきの鋭い菅原が、その場で敬礼した。


 志穂の言葉を聞きながら目を輝かせる瞬と、真面目な顔つきのミラン。

 どこかぼんやりした表情のアラン。

 

 アランとミラン、瞬の座る席の後ろには、小学校で同じクラスだった女子生徒二人と、男子生徒一人もいる。



 講義室内で、教壇に立って授業をする教師。

 訓練生達は座って授業を受けている。


 だるそうに肘をつき、眠そうな目の永田ユリカ(ナガタユリカ)

「獣衛隊に入れば、もう勉強しないでいいと思ったのに〜」

 ユリカはアイドルのようなかわいい顔で小さく舌打ちした。


 同意する吉井風人(ヨシイフウト)

「だよねー。俺やっぱ私立の中学行けば良かった」


「おい、先生の前で誓ったこと忘れたのか?大ネズミの餌になりたいなら俺が訓練場の外に放り投げてやるぞ」

 玄真が風人を睨みつける。


 慌てて取り繕う風人。

「やだなー、冗談だって!勉強も訓練もできて給料ももらえるって、獣衛隊最高じゃん」 

 

「はい、じゃあこの問題わかる人」 

 教師の呼びかけに、手を上げる瞬とミラン。

 どんな問題も、瞬とミランが即答していく。


 訓練生達の様子を後方で静かに観察している様子の菅原。



 訓練場のグラウンドにて、ジャージ姿で集められたアランと訓練生達。


「まだ中学生の君達には、基本的なトレーニングを中心にやってもらう。まずはこのグラウンドを10周、それから腕立てと腹筋、50回だ。行くぞ!」


 菅原が手に警棒のようなものを持ち、厳しい目つきで言い放った。

 青ざめるアランとユリカ、風人。 


 グラウンドを走る訓練生達を、遠くから眺める森田。


 グラウンド10周にて、始めにゴールしたのは、笑顔に汗が浮かぶ湊ガク(ミナトガク)だった。


 2位に玄真、3位に瞬、4位に風人、5位にアラン。6位にミラン、7位に小幡真歩(オバタマホ)、8位にユリカ、9位に波多野凛(ハタノリン)の順だった。


 走り終わり、汗を拭く訓練生達。

「ガク君、また足が速くなったんじゃない!?」

 真歩がガクに声をかけた。

「ハハ、そうかな。みんなも前より速くなったと思うよ」

 爽やかな笑顔で汗を拭くガク。


「ガクは両親が元オリンピック選手のサラブレッドだもん、俺達より速いに決まってるじゃん」

 風人が口を挟んだ。


「玄真も速いよね。僕がどんなに頑張っても、二人には敵わないもんなぁ」

 瞬が玄真に話しかけた。


「俺は毎日トレーニングしてるからな。パンチ力だったらガクにも負けないぜ」

 玄真がその場でボクシングの真似をした。


「おいアラン、お前ボケっと走ってんじゃねーよ!訓練だってわかってんのか!?」

 玄真が後ろからアランの背中にパンチした。


「いてっ!」

 アランが驚いて顔をしかめた。


「アランなんてどーせ遅いんだから、怒るだけムダだよ〜」

 軽口をたたく風人。


 しかめっ面の玄真。

(こいつは本当に足が遅いわけじゃねぇ。だから気に食わねぇんだよ)


―玄真の回想―

 俺はあの日、寝坊して学校まで急いで走っていた。そうしたら、後ろから来た足音があっという間に俺を追い越して行きやがった。

足を怪我したミランを背負った、アランがな!!

―――


「誰が休んでいいと言った!今喋った罰として、全員10週追加!一番遅い者はプラス腕立て100回追加だぁ!」

 厳しい声で訓練生達を追いかける菅原。

 青ざめて逃げるアラン達。


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