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獣乱のゲノム  作者: 大野 響


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24/24

それぞれの葛藤

 海岸から響くミサイル音と煙の合間から、多数の巨大ワニが基地内に向かって来る。

 防衛隊が車輌からミサイルを発射させたが、ワニの数が多すぎるがために、倒しきれなかったワニによって車輌がなぎ倒されていく。 


 そこへ集まった獣衛隊員達。一番最初に着いたガクが、ショットガンを構えた。


――ガクの回想――

 体操教室で、見事な鉄棒技を披露する、幼少期のガク。仲間が目を輝かせて手を叩き、ガクを応援している。

「ガク、お前は将来のオリンピック選手だな!」

 コーチが嬉しそうにガクに声をかけた。

 誇らしい顔をしたガク。


 7歳になったガクが、体操の床で素晴らしい回転技を決めたが、周りには誰もいない。

 そこへやって来たコーチが、大きなため息を着いて首を横に振った。

「ダメだ、ネズミのせいで来年以降のオリンピックは全て開催されないことが決まった」

 真っ青になるガク。


 たった一人で、涙目になりながら夜遅くまで体操の練習を続けるガク。

(ネズミさえいなければ、ネズミさえいなければ)

―――


 ガクはショットガンを撃ち、一頭の巨大ワニの動きを止めた。

(獣さえいなければ、今年だってオリンピックが開催されるはずだった。獣さえいなければ、多くのアスリートが世界中に夢や希望を届けられたはずなんだ!俺が獣を全部倒して、いつかまた、誰もがスポーツを楽しめる時代を取り戻すんだ!)


 しかし、まだ残る多数のワニが獣衛隊に向かって来る。

 次にやって来た風人がショットガンを構えた。


――風人の回想――

 タワマン最上階のリビングで大きなソファに座り、ホームシアターを見ている幼少期の風人とその両親。


 小さな部屋のちゃぶ台で、暗い顔をしている風人の両親。少し成長した風人が隣にいた。

「ネズミのせいで、会社がまた壊された。風人、私立の中学は諦めてくれ」

 苦い顔で話す父親。

 うつむく風人。

「わかってるよ···」

(ネズミが現れる前は、家族で毎年旅行に行けた。何でも好きなことをさせてもらえた。それなのに、こんなみじめな生活をすることになるなんて!)

――


 大きな口を開けたワニ目掛けて、風人がショットガンを撃った。弾が当たったワニは倒れて動きを止めた。


 そこへ、玄真が右足を引きずりながらやって来て、ショットガンを構えた。


――玄真の回想――

 警察官である玄真の父親が、容疑者に手錠をかける。それを見て、ガッツポーズをする子ども時代の玄真。


 玄真の父親が犯罪者に刺され、病院のベッドに運ばれた。その姿に、涙を流してベッドの縁を叩く玄真。

 

 懸命なリハビリに耐え、再び警察官として働き始めた父親を玄関で見送る玄真。


(親父は、いつだって市民の安全を守るために闘ってきた。どんなに苦しい思いをしても、諦めようとはしなかった。だから、俺も絶対に諦めない。みんなのことは、俺が絶対守るんだー!)

―――


 玄真のショットガンから放たれた弾が巨大ワニの脇腹に当たり、一頭が動きを止めた。

 だが、その他の多数のワニが獣衛隊員に向かってくる。


「全員、下がれー!!」

 獣衛隊員達の後ろにいた森田が、防衛隊員達と一緒に大きな車輌とミサイルを巨大ワニに向けた。

 獣衛隊員が脇に下がると、ミサイルが次々と発射されていく。ドドーン、と大きな音が響いた。

 数十発が発射されたところで、辺りは煙で見えなくなった。


 煙が薄まると、辺りに多数のワニが死んでいた。しかし、海岸からはまだ多くのワニが上がって来るのが見えた。



 匂いと音を頼りに、アランは防衛隊の兵舎内を走っていた。

(チーズとカビの匂いはあちこちから匂うな。そこら中に撒いた奴がいるってことか。でも、この音は向こうからだけ聞こえる。多分、この建物の最上階だ!)


 兵舎内の階段を上っていたアランの下に、ドローンが窓ガラスを割って入ってきて自爆した。

 思わず階段から滑り落ち、体を強く打ちつけるアラン。ドローンの破片が腹に刺さり、血が出ている。

 目を見開き、小さく笑うアラン。

「この腹はなぁ、もう鍛え済みなんだよ!」


――アランの回想――

 森田に指摘された腹の弱点を克服するため、腹筋を鍛えるアラン。


 アランのキレイに割れた腹筋に向け、ミランが皿を投げた。何枚もの皿が、アランの腹に当たって砕け落ちた。

―――


 アランはドローンの破片を腹から抜き取り、腹に力を込めて自力で止血した。

 息を切らしながら、真剣な目で再び階段を上るアラン。



 基地に向かってくる巨大ワニに向けて、再度発射されるミサイル。

 ミサイルの影響で、辺りの多くの施設や兵舎、住宅などが破壊された。

 多くの巨大ワニが死んだが、海岸からはまだワニが上がって来るのが見えた。

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