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獣乱のゲノム  作者: 大野 響


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再会

「止まれー!!」

 アランは大ネズミに向かって叫んだ。


 だが、大ネズミは当然止まらずにその場にいた少年に襲いかかった。

 その瞬間、少年は身をかがめてアランの視界から一瞬消えた。すると、次の瞬間なぜか大ネズミが動きを止めた。


 やっと追いついたアランがよく見ると、大ネズミは少年に狩猟用ナイフで心臓を一突きされ、その場で息絶えていた。

「嘘だろ?ネズミを倒したのか!?」

「心臓を狙ったからもう大丈夫だよ」

 少年はネズミからナイフを出すと慣れた手つきで血を拭って鞘にしまった。


 アランは驚いてポカンと口を開けた。

 (ネズミの心臓は意外と小さいから、普通は獣衛隊員でも頭を狙う。こいつ、向かってくるネズミの心臓の位置を正確に把握して一発で仕留めたってことか!?)


 そこへ、一緒にネズミを追っていた志穂がやって来た。

「ネズミは倒したのね!あれ?君ってたしか···」

「今日から獣衛隊でお世話になる予定の、大橋蒼太です。よろしく」

 蒼太はにっこりと笑った。



 アラン達が訓練場の休憩室に入ると、先にいた班長によって、大橋蒼太が獣衛隊3班の配属となったことが隊員に発表された。


 蒼太は北海道で農家兼猟師をしている両親の下で育ったため獣の扱いには慣れていること、学業と獣狩りの両立のために八王子訓練場に来たことを隊員達に話した。


「へぇー。地方じゃネズミの被害が多すぎて学校にも満足に通えないって話、本当なんだー」

 風人の言葉に蒼太が頷いた。

「最近はオンライン授業ばっかりだよ。たまに体育のために集まったりしても、クラスメイトの顔と名前が一致しなくて困るんだ」


「ネズミに噛まれても診てくれる病院がないんだろ?どうやって生活してたんだ?」

 玄真が興味深そうに尋ねた。

「大きな街まで行けばあるよ。でも骨折くらいなら、自分で包帯巻いて応急処置するって人は多かったね。向こうでもAI診療は普及してたけど、医療設備は20年以上前のものをメンテナンスして使ったりしてたな」

「大変ねー」

 ユリカの言葉に、隊員達も頷いた。


 (こいつ、紹介されて10分も経たないうちにみんなと打ち解けてやがる!コミュ力すげぇ)

 隊員達の前で物怖じせず話す蒼太に、アランは再び驚いた。


 蒼太は部屋の隅で絵本を読むミランとマモルを見つけると、そちらへ行って声をかけた。

「ねぇ、俺のこと覚えてる?この前は公園で友達を助けてくれてありがとう」

「覚えてるよ。どういたしまして」

「まさか再会できると思わなかったな。その羽根、キレイだね」

「どうも」

 ミランはそれだけ答えて再び絵本に目を落とした。 


「マモルのこと、班長から聞いたよ。その絵本、俺も好きだったなぁ。マモル、ここに座れよ。ミラン、俺にも聞かせて」

 蒼太はマモルを抱き上げて自分の膝の上に座らせると、ミランに触れそうな距離で絵本を覗き込んだ。

「ちょっと、近いんだけど」

「え?聞こえない」

 ますます顔を近付ける蒼太から少し顔を遠ざけると、ミランは戸惑いながらも絵本を読み始めた。

 ミランの横顔を見つめながら、蒼太はにっこりと笑った。


(鬼メンタル!!)

アランはムンクのように心の中で叫んだ。


「凛、もう行っちゃうの?」

 大きなスーツケースとリュックを持った凛が休憩室を出ようとしたところで、真歩が気付いて話しかけた。

「うん。研究所の車が来たから」

 凛の言葉を聞いて、隊員達は凛の側に集まった。


 元気でね、たまにはこっちに遊びに来いよ、などと、隊員達は口々に凛に声をかけた。

「今まで、色々ありがとう」

 ミランも凛に話しかけて最後の握手を交わした。

「それじゃあ、バイバイ」

 凛がドアを開けて出て行った。


 アランが何も言えないでいると、隊員達がアランをじっと見た。

 視線に気付いたアランは意を決して、廊下を一人歩く凛のところまで走った。

「凛、時々研究所に会いに言ってもいいかな?その、ほら、ネズミの情報とか色々聞きたいし」

 アランが顔を赤らめながら聞くと、凛は笑って頷いた。

「うん。いいよ」

「良かった!じゃあ、また連絡する!」

 パアッと笑顔になったアランは、凛に大きく手を振った。

 凛も振り返し、訓練場を後にした。


 

 訓練場の中で一番大きなホールへ集合がかかり、アラン達は列に並んだ。

 獣衛隊員が一堂に集まる中、前に立ったのはメガネをかけた新しい獣衛隊長だった。


 隊長はおもむろに一度咳払いをすると、手に持っていた資料を読み始めた。

「調査の結果、先日の港区獣テロ事件には、ナモスタンの武装組織が関わっていることが確認された。彼等は何らかの方法でネズミとワニを集め、ドローンを併用することで都市の混乱を画策していたものとみられる。都内にあった関連施設と思われるビルは既に特定済みで、幹部は今朝逮捕された。だがどこかに残党がいないとも限らない。油断しないように」


 隊長が読み上げると、隊員達が挙手をして質問を始めた。

「ナモスタンの目的は何だったのでしょうか」

「不明だ。だが世界中の傾向から見て、都市機能をマヒさせた上での集団強盗だろう」

 近年、海外では安価な値段で戦闘用ドローンが取引されている。それが犯罪組織に悪用され、ドローンによる爆破の混乱に乗じて強盗を働く犯罪が多発していた。

 

「それにしては、ドローンの数が多かったよな?それにどうやってネズミを集めたんだ?」

 隊員達がざわめいた。

「あー。ナモスタンについては獣衛隊の管轄外だ。防衛隊に任せておけ。ネズミをどうやって集めたかについては、今調査中だ。分かり次第周知する。今日はこれで解散!」


 ホールから出て隊員達の部屋に帰ろうとしたところで、アランの耳に低いうめき声が聞こえた。

 なんだろう、と思い声の聞こえた部屋を隙間から覗いてみたら、そこでは見知らぬ獣衛隊員の腹を蹴って暴行する森田の姿があった。


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