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獣乱のゲノム  作者: 大野 響


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20/25

防衛隊隊長

役職や階級がわかりにくかったので訂正しています。

榎本マリ→防衛隊副隊長

青木翔太郎→獣衛隊隊長

森田カイ→獣衛隊3班、班長

 ミアは、飛行機の座席に座って窓の外を見つめていた。窓からは、海と小さくなった街並みが見えた。


 八王子訓練場から、上空の飛行機を見上げるミランと獣衛隊員達。

「ミアさん、帰っちゃったね」

 残念そうに言う真歩。

「ミアさん、ありがとう」

 ミランは小声で呟いた。


「おい、タイプCはどこだ!?」

 背後から男の声が聞こえて振り返ると、防衛隊の隊服を着た男達が獣衛隊員達に向かって歩いてくる所だった。


 防衛隊員の一人が、ミランの羽根と抱っこ紐の中のマモルに気付くと、中年の角刈り男性に何かを囁いた。

 角刈りの防衛隊隊長、加治屋耕平(カジヤコウヘイ)がミランの前に来て立ち止まった。


「なんだ、噂の羽根つき隊員がタイプCといたのか。さぁ、Cはこっちで預かるぞ」

 抱っこ紐に手を伸ばした加治屋を、ミランは睨みつけた。

「何するんですか?やめて下さい」

 マモルも嫌そうにミランにしがみついた。


「上から聞いてないのか?タイプCは防衛隊のものだから返してもらわんとな」

 加治屋は再び手を伸ばし、マモルに触れた。

 ミランが眉をひそめると、その嫌悪感を感じとったかのように、マモルが顔をしかめて両手で加治屋を押した。

「ふんっ!」


 すると、加治屋が10m以上後方へ吹っ飛び、壁にぶつかって止まった。

 驚くミアと隊員達。

 更に、勢いよく振り下ろしたマモルの手から風が起き、近くにあった獣衛隊の車が加治屋の方まで飛んで行った。


 車が加治屋にぶつかる直前、アランが加治屋と車の間に入り、背中から出した針で車を止めた。

(マモルの奴、スゲー力だな)


「マモル、もうやめて!」

マモルが手を動かしてもう一度風を起こそうとするのを、ミランが止めた。


「針男ってのはお前だったのか。うちの隊員よりよっぽど使えるじゃねーか」

 加治屋はそう言って意味ありげに笑うと、服に付いた汚れを両手で払った。

 そこへ、走ってやってくる防衛隊員。


「隊長、大丈夫ですか!?」

「遅い!!防衛隊が獣衛隊に負けてどうする!後で根性叩き直してやる!!」

 加治屋が隊員を叱り飛ばした。


 加治屋は歩いて再びミランの前に立つと、マモルを見て諦めたように息を吐いた。

「これ以上ふっ飛ばされたらたまらんからなぁ。やはり、兵器はAIで作るべきだ。よし、タイプCは頼んだ!おい、帰るぞ」

 加治屋は隊員を連れ、訓練場から出て行った。

 入れ違いに、走ってやって来る菅原。

「あれ、防衛隊の隊長は!?」

「え!?今のが隊長だったんですか!」

 驚くアラン達。



 訓練場で、いつも通りの訓練をする獣衛隊員達。

 ミアは班長が即席で作ったジャングルジムでマモルと遊んでいた。すると、マモルが手を滑らせて落ちそうになる。さっと腕を伸ばし、落ちるマモルを受け止めたミラン。

「ミー、ミー」

(マモルが喋った!)


 マモルがミランを指差し、嬉しそうに笑った。

「ミーって、もしかして私のこと?」

 ミランが自分を指差すと、笑って頷くマモル。

「マモル!」

 マモルを抱きしめ、微笑むミラン。



 風呂場で湯船に浸かりながら、うとうとするミラン。


 夢の中で、笑う瞬の姿が見える。思わず走って瞬の方へ行こうとするが、いくら走っても追いつかないミラン。

「瞬、待ってー!」

 瞬は手を振り、走って行ってしまう。

 ミランは泣きながら追いかけようとするが、ふいにマモルの泣き声が聞こえて我に返った。


 目が覚めると湯の中で、慌てて顔を湯船から出し、むせながら泣くミラン。

(瞬、会いたいよ···)

 再びマモルの泣き声が聞こえ、ミランはハッとして風呂場から出て脱衣場に向かった。


 そこには、涙目のマモルと笑顔の真歩がいた。

 マモルはミランを見つけると、ミランの下へとよちよち歩いてその足にしがみついた。

「マモルがミランに会いたそうだったから、連れてきたよ」

「あり、がとう」

 ミランは泣きながらそう言うと、優しくマモルを抱き上げた。

「ミラン、どうしたの?」

「瞬がいなくなってから、ずっと···ずっと、もう死にたいって思ってた···でも、マモルの声が聞こえて、ダメだ、私がマモルを守らなきゃって、今、思って···」


 泣きながら話すミランの体を、真歩はぎゅっと抱きしめた。

「ミランのバカ!マモルだけじゃないよ!私だって、アランだって、隊員のみんなだって、ミランがいなきゃ嫌なんだよ!約束して。もう二度と変な気を起こさない、って」


「うん···」

 抱きしめあうミランと真歩に挟まれて、マモルが笑っていた。



 早朝、まだ眠っていたアランの部屋の扉が開いた。入ってきた私服の男が、瞬の机を漁り始めた。


 アランはゆっくりと目を開け、瞬の机を触る男の背中にナイフを近付けた。

「手を上げろ」

「さすが、森田が育てただけのことはあるな」

 振り向いたのは、青木隊長だった。


「隊長!すみません!」

 アランは慌ててナイフをしまった。

「この前は、銃を向けて悪かった。だがこれでおあいこだ。今日は息子の遺品を片付けにきた。それと、俺はもう隊長じゃない」

「え!?」


「この国の防衛力の要になるはずだったプロジェクトを壊された上に、防衛隊の副隊長まで殺された。となれば、誰かが責任をとらねばならない」

「そんな!班長から、隊長はあの施設の警備をしていただけと聞いています。それだけで!?」

「組織とは、そういうものだ。···息子が死んで、俺も少し疲れた。この辺りで、休みをとるのも悪くない」

「···」

 アランは何も言えずに唇を噛んだ。


「アラン、これはお前に渡しておく。瞬と友達になってくれて、ありがとう」

 青木は手に持っていた瞬の手帳を、アランに渡した。

 アランに笑いかけた青木は、いつもの厳しい表情ではなく、穏やかで少し淋しげな男の顔だった。


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