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獣乱のゲノム  作者: 大野 響


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嗚咽

 アランが振りかざした一撃を、森田はさっとよけてから間合いに入った。

 長い足が、アランの腹に命中して体が吹っ飛ぶ。壁にぶつかって倒れたアランは、よろけながらも立ち上がって森田に向かって行った。


 森田はアランと格闘訓練をしながら、その成長を内心喜んだ。

(随分強くなってきたじゃねーか。この剣の衝撃、超音波の波動を利用してるってのも嘘じゃないだろう)


 剣と剣がぶつかり、火花が飛び散る。周りで見ている獣衛隊員達も息を飲むほど激しい剣のぶつかり合いだった。


 アランの剣の威力に、森田がジリジリと押された。アランがこれはいける、と思ったのもつかの間、森田に脇腹を蹴られてまた吹っ飛んだ。

「隙を見せるな!」

 森田が声を強めてアランを叱った。


「アラン、お前の腹からは針がほとんど出ない。その上隙だらけだ。どんなに(パワー)があっても、敵は隙をついてくる!敵を喜ばせるな!」


 飛んで倒れたアランは、悔しさと痛みで顔をしかめた。もはや起き上がる体力がない。そんなアランの下に、玄真、ガク、風人が集まってきた。


「アラン、下がってろ。班長、俺達にもお願いします!」

 玄真はそう言うと、剣を森田に向けて戦いを挑んだ。


(この3年で、俺もかなり強くなった。今なら、班長にだって簡単には負けないはずだ!)

 玄真は心の中でそう言うと、ガクと風人の3人で森田に向かった。

 だが、森田の剣さばきですぐに3人まとめて吹っ飛んだ。


「菅原、準備は出来てるか?」

 剣を収めた森田が、菅原に声をかけた。

 はい、と答えた菅原が、志穂とともに大きな荷物を持って隊員達の前にやってきた。


 菅原と志穂が、荷物の中身を隊員達に配り始めた。

「これは獣衛隊の新しいスーツと武器だ。山城、着てみろ」

 森田に言われ、玄真は新しい戦闘用スーツに袖を通した。


「このスーツは獣の牙にも耐えられる耐衝撃性がある上に、着る者のパワーを10倍以上に高めると言われている」

 森田はそう言うと、玄真の腹をいきなり殴った。


 玄真は思わず腹に手を当てたが、痛みがないことに気付き驚いた顔で森田を見た。

「おお、痛くない!」

 森田がニヤリ、と笑う。


「こっちのショットガンなら、ワニの体でも貫通するはずだ。いいか、自分に合う武器を使え。これを使えば、お前達はもっと強くなる」

 森田の言葉に、玄真は嬉しそうに鼻息を荒くした。


「班長、俺のスーツはどこですか?」

キョロキョロと周りの荷物を見ていたアランが森田に質問した。

「あー。アランの分はない。このスーツは特殊な繊維で出来てるんだ、針で穴が空いたら困る。1着でいくらすると思ってるんだ」

 愚痴交じりの口調で森田が言った。


「班長は、ああ見えてドケチだぞ」

 菅原がアランに囁いた。

 青ざめるアラン。


 玄真がアランの肩を叩いて笑った。

「残念だったな。危ない時は助けてやるから安心しろ」


「班長、凛のスーツもないですよ?」

 凛もスーツを持っていないことに気付いた真歩が、森田に尋ねた。


「問題ない。波多野は今月で獣衛隊を除隊する」

 何でもないことのように、さらりと森田が言った。

 アラン達は、驚いてざわめいた。


「午後の訓練はここまでだ。そろそろ晩飯だぞ」

 そう言って、森田、菅原、志穂は先に歩き出した。


「凛、どうして辞めちゃうの?」

 真歩は近くにいた凛に尋ねた。

「ずっと考えてたんだけど、私はやっぱりネズミやワニを倒すのが向いてないと思って。それよりも、ネズミの生態について調べてみたいと思ったの。瞬君も、ネズミのこともっと知りたいって前に言ってたし」


 凛の口から瞬という言葉が出た途端、茫然自失状態だったミランの目の色が変わった。


「···何それ。ネズミのせいで毎日どれだけの人が死んでると思ってるの?私達獣衛隊の肩に、日本人の命がかかってるんだよ!?それなのに軽々しく辞めるって何!?しかもそれを瞬のせいみたいに言わないで!凛に瞬の何がわかるの!?」


 ミランは涙を浮かべた瞳で凛に詰め寄った。困惑した表情でミランから視線を逸らす凛。


「ミラン、ちょっと言い過ぎ」

 アランがミランと凛の間に割って入った。


「は?凛を守ろうとでもしてるわけ?何?私悪役?アランはいいよね、凛がいて。そうだよね、好きな女の子に危ない思いなんてさせたくないよね」


 ミランがそこまで言ったところで、ズンズンと歩いてきたユリカがパチン、とミランの頬を叩いた。


「瞬が死んで悲しいのはみんな一緒だっつーの。こんなことして瞬が喜ぶわけ?」

 ユリカの言葉にハッと我に返ったミランは、その場で嗚咽を上げて泣き始めた。

 真歩がミランの下に駆け寄って背中を擦る。


 突然のことに戸惑っていたアランに向かって、ユリカがため息を吐いた。

「ちょっとは強くなったと思ってたけど、まだまだねー。あんたの妹なんだから、アランがどうにかしなさいよ」

「あ、ああ」


 アランが弱々しく応えたその時、訓練場のすべての明かりが一気に消えた。


「停電だ!」

 咄嗟に風人が言った。

 訓練場に、非常時の警報が鳴り響く。


 菅原が走って隊員達の下へやってきた。

「霞が関周辺に大量のネズミが出たと報告があった!関東全域が停電しているとの情報もある!恐らく、ネズミを使ったテロだ!」


 フェーズチェンジ。いつかの森田の言葉が、アランの頭の中に蘇った。

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