ワニ
波打ち際で、波と戯れて遊ぶミランと瞬。
並んで座った二人の手がわずかに触れる。恥ずかしくなって引っ込めようとしたミランの手を、瞬が握った。
瞬はミランに優しく微笑みかけ、ミランも微笑み返した。
砂浜でキレイな貝がらを見つけ、ミランに渡す瞬。アリガトウ、とミランの口が動いた。
瞬は飲み物を買おうと、売店に走った。それをぼんやりと待っているミラン。
海辺には黒い影があった。
◆
自動運転車で海辺に向かいながら、アランはペットボトルの水を飲んでいた。
隣の森田が口を開いた。
「アラン、オーストラリアと中国の沿岸部で、船の遭難が増えているのは知っているか?」
「たしか、ニュースで見た気がします。でも、船の遭難なら海上保安庁の仕事ですよね?獣衛隊の出番はないんじゃ」
「船を襲ってるのが、恐竜だったら?」
森田は冷静な顔で言った。
アランは思わず飲んでいた水を噴き出した。
「恐竜!?いつの時代の話ですか!?」
森田は口角を上げた。
「冗談だ。だが、最近アフリカ大陸で恐竜を見たという情報が飛び交っている。ネズミが世界中で広まった時も同じだった。今のアフリカ大陸はパンデミック以降、まともに機能している政府が一つも存在しない。テロと内戦で荒れ果てた、まさに無法地帯だ。そんな所でネズミや恐竜が次々と発見されてるのはなぜだと思う?」
「さあ···。俺にはわかりません」
「もちろん俺にもわからん。だから調査する必要があると思ってる。だがその前に、国内の海岸線を調査したい。俺が神経質になってるだけかもしれないが」
自動運転車から海岸が見えてきた所で、悲鳴がアラン達の耳に聞こえた。
「班長!」
「行くぞ!」
◆
売店でジュースを買う瞬を待つミラン。嬉しそうに頬を赤らめながら、もらった貝を撫でた。すると、目の前に10mを超える巨大なワニが現れ、大きな口を開けていきなり襲ってきた。
驚いて固まったミランを助けようと、瞬が走ってミランを突き飛ばした。
ミランの代りにワニに噛まれる瞬。
ワニの存在に気付いた人々が悲鳴を上げた。
そこへ、走って来たアランの針と森田の銃弾が大型ワニの右目に当たった。
驚いて頭を振り、瞬を吐き出すワニ。
ワニはやってきた森田を食べようと大きな口を開けた。
剣で応戦する森田。
「アラン、このロープをワニの口に巻きつけろ!」
森田がそう言ってアランにロープを渡した。
ロープを受け取ったアランはワニの大きさに一瞬躊躇するが、意を決してワニの口に近付いた。
アランに気付いたワニが、今度はアランに向かって口を開いた。大きな牙に襲われ、アランは咄嗟に避けたが腕に傷を負った。
ワニがアランを攻撃している隙に、森田が剣をワニの左目に突き刺した。
両目を攻撃され、激しく首を振るワニ。
そのワニの口の周りに、ロープをかけるアラン。森田とアランの二人がロープの両端をそれぞれ持ち、素早くワニの口をぐるぐると巻いていく。
二人がかりでロープを結ぶと、アランはすぐに瞬の元へと駆け寄った。
瞬のそばには、震えながら止血を試みるミランがいた。
瞬の胸から流れ出る血を止めようと、両手で傷口に手を当てるミラン。
ミランの両手が血で染まっていた。
アランは携帯していた包帯を巻き付けるが、出血量が多すぎて役に立たない。
(だめだ、出血量が多すぎる)
「ミラ···ン。好き···だ」
瞬はそれだけ言うと、息絶えた。
「いやーーー!!!」
ミランは絶叫した。




