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獣乱のゲノム  作者: 大野 響


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12/14

三年後

 八王子訓練場に来て3年、15歳になったアラン達は、訓練生から正式に獣衛隊隊員となった。


 獣衛隊の仕事は多岐に渡る。襲来した大ネズミを掃討することはもちろん、多数の住民が住む都市部を守るために設置されている電気柵の点検、設置も大事な仕事である。


 特にここ数年で強化された防空システムは優秀で、都市部に侵入する大ネズミの数を瞬時に察知することができるようになった。おかげで、大ネズミ被害を1割減らすことができたと言われている。


 懸念されていた大ネズミと人間の共闘やテロもこの3年は特になく、日本は大ネズミによって荒れた都市の再興に力を入れていた。


 その日、瞬と二人で電気柵の設置を行っていたアランは、大ネズミが掘った大きな穴を見つけた。


「あ、また穴だ!この辺、ネズミが掘った穴が多いな」

 アランは電気柵の周囲を見回した。


「住宅街が近いからね。すぐ隣に山があるし、ネズミが潜むには絶好の環境だよ。日本はクマ被害対策のために電気柵の設置が他国よりも進んでいたとはいえ、この辺りはもっと柵の数を増やさないと危ないな。後で報告書に書いておこう」

 瞬は大きなシャベルを使って穴を塞ぎ始めた。


 アランもシャベルで穴を塞ぎながら、ふいに柵の側で盛り上がっている土に違和感を覚えた。土の下から、微かに鼻息が聞こえる。

「瞬、真下にネズミがいる!」


 アランが叫ぶと同時に、大きな口を開けた大ネズミが土の中から出て来て土ごと瞬を飲み込もうとした。


 瞬は咄嗟にシャベルを大ネズミの口に立て、噛まれるのを防いだ。


 アランは針で大ネズミの目を攻撃し、瞬を引っ張って助けてから剣を頭に突き刺した。


 倒れる大ネズミ。

 息を切らせ、笑う二人。


「ネズミが潜んでいるなんて気がつかなかったよ!アランのおかげで助かった。ありがとう」


 身体から針が生えるようになった頃から、アランの身体感覚は鋭くなった。まるで動物に近付くかのような自身の変化に最初は戸惑ったが、3年が過ぎた今ではもう慣れたといえる。


「ネズミは深い穴が掘れないんじゃなかったっけ?こんなことされたら、柵なんて意味ないじゃん」


「授業ではそう習ったね。でも最近は電気柵を破らずに街中に侵入してくる個体も増えていたはずだよ。ネズミだって、人間(エサ)を食べなきゃ生きていけないんだ。そのために知恵を絞ってるのさ」


「くぅーっ!賢いって厄介!俺より賢くなるなよネズミ!」


「···アランは前より素直になったよね。足も僕より速くなったし。僕も負けないように頑張るぞ!さ、早くネズミを片付けよう」


「おう!」

(素直になれたのは、班長のおかげだな)


 二人は倒した大ネズミの片付けを始めた。



 訓練場の食堂で、アランはミランがやけにソワソワとしていることに気が付いた。

「ミラン、どうした?腹でも下した顔して」


 ミランはアランの頬を思いっきりつねってから、手首をひっぱって人のいない場所まで連れて行った。


「ねぇ、スカートかワンピース、瞬はどっちが好きだと思う!?」

 ミランが頬を赤らめながらアランに聞いた。


「え?どっちかって言ったら、俺はミニスカートだなー」

 アランが妄想顔で答えた。

「アランの趣味は聞いてないの!でも、ミニスカートかぁ。うーん、かわいいの持ってないよ〜」


「は?瞬と出かけるのか!?」

 ミランが顔を真っ赤にした。

「明日、う、海に行くことになったの。羽根が生えてから、私があんまり外出してないことを心配してくれて」


 訓練場ではすっかり自由に空を飛ぶようになったミランだが、他人の目に羽根がどう映るかはやはり気になる年頃だった。


 獣衛隊の仕事とトレーニングが忙しいこともあって、羽根が生えてからはミランの外出の機会は限られていた。


(おいおい、それってデート!?俺は何にも聞いてないぞー!)

「良かったじゃん!瞬のやつ、隅に置けないなー」

(そっかー、デートかー)


 ちらりと凛の方を見るアラン。

(だめだ、俺にそんな勇気はない)

 首を横に振るアラン。



 翌日、久しぶりの休日を持て余していたアランが、宿舎の廊下を歩いていた。

(今日は何しよっかなー。瞬もミランもいないし)


 すると、がっちりと装備を固めた森田がアランの前を通り過ぎた。

「おはようございます、班長。出動要請ですか?」


「そうじゃないが、今朝沿岸部で漁師の遺体が見つかった。胴体が派手に食いちぎられていたそうだ。嫌な予感がするから、確認に行ってくる」


「沿岸部?今、瞬とミランも海に出かけてるんです」

 アランが言うと、森田の顔に影が差した。


「アラン、今すぐ装備を整えて来い!急ぐぞ!」

「はい!」

 森田の切迫した声が、廊下に響いた。

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