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第十一話 束の間
結は小説制作の日常に戻る。いつも通りキーボードをカタカタ鳴らせている。卒業まで,時間がない。今は1月中旬。色々なやるべきことがてんこ盛りになる。
(そういえばもうすぐだったな…)
何かといえば大地の入試である。
(…大地……大丈夫なんだろうか)
一見ただの暇人のようだが、一応あれでも塾漬けの受験生なのである。隈があることもしばしば。
(寝不足だと、怒りっぽくなるぞー)
何処かで聞いたことがある気がする。正しいのかは知らないが、大地はそうである。
(ま、今はどうでもいいか)
そう結論づける。結はコップに入った梅シロップを炭酸水で割ったものに口をつける。
(あー檸檬水が飲みたい)
今は檸檬の代わりに梅を楽しむことにする。酸っぱいものの欲を甘酸っぱいもので満たすのは、物足りない気がするけれど。