第十五話
《Side-M・P部隊》
「いやぁ~頑張っちゃってんね、B・V部隊の方々は」
黒霧にかすむB・V部隊とG・O・Cとの交戦を、他人事のように評していったのは、G・O・C本部棟の玄関前で待機中のギルガメシュネームド部隊、M・P部隊員の“ホンゴウ・マチコ”だった。
年齢は20代後半ほど。灰濃紺色のあご下で切りそろえたワンレングスボブに、濃い眉に橙茶の半眼の瞳、小麦色の肌にえらの張った角ばった顔立ちのマチコは、暗灰色のバトルスーツ姿で腰に手を当て冷めた態度で顔を傾げた。
「―――…エリハの奴、無様にタケシにやられてるわ。ざまあないわね」
真っ赤なルージュを引いた口に笑みを浮かべながらマチコの傍らで口を開いたのはーーーこちらも20代後半ほどの、ひざ下までの長い艶やかな濃灰色のストレートヘアに白い肌に薄い水色の瞳。完璧にメイクを施したきつい目鼻立ちの女―――“コグレ・ミチ”だった。
暗灰色のバトルスーツを着込んだミチは、腕を組んで強気にあごを上げながら交戦中の部隊を眺めて言った。
「けどやっぱり、コウキ隊長は良いわねぇ…あのポーカーフェイスで、自然に隊員をサポートしてるし―――…うちの“豚イ長”とは雲泥の差だわ」
マチコは強く同意した。
「本当に。戦ってる姿も絵になるし、何であたし等の隊長はあんなブタ野郎なのよ」
「…まさか、ランキング一位と三位の差って、隊長のルックスの差じゃないわよね」
「だったらうち等の隊なんて、圧倒的に三位以下でしょ」
「そうね、きっと部隊ネームすら与えられないわね」
そう言って深くうなずき合う2人を、他の男性隊員達は空恐ろしげに遠巻きにしていた。
「――…怖ぇなぁ、女って奴はこれだからよぉっ…」
赤味の強い茶髪に染め、根元は黒髪のソフトモヒカンという髪型の、黒ピアスをいくつも付けたいかにもヤンキー然とした20代半ばの男―――“トクナガ・ヤスシ”が、顔をしかめてマチコとミチを見ながらそう言い舌打ちをした。
濃く日に焼けた筋肉質な体に、全身暗い灰色のバトルスーツを着たヤスの傍らには、全身曲線で出来たような、大柄の太ったバトルスーツ姿の男がいた。
その30代前後の男―――“イチライ・トシオ”は、糸のような垂れ下がった目でおおらかに笑いながら答えた。
「そうかなぁ?二人とも人を良く見てるよねぇ」
天パのくしゃくしゃしたとび色の髪に、いつも笑みを浮かべた顔は福々しいその様は見ている者を癒すユルキャラを連想させる。
ヤスは不味いものでも食ったような表情になりながら、トシを見上げた。
「んでそんなポジティブ解釈なんだよ!男ってのぁ見た目じゃねぇだろがっ!結局女って奴ぁ、見た目が良けりゃあどんなクソ野郎でも…」
その途端マチ達が振り返ってヤスをジロリと睨み付けた。そのプレッシャーにヤスは、続けようとした言葉をグッと詰まらせてしまった。
『ヤス君は威勢は良いんだけどぉ、の割に絶対マチコさん達に逆らえないよねぇ~』
「あ゛?」
トシの肩口あたりから突然小さな声が響き、聞き逃したヤスは不機嫌に聞き返した。
『そんなんで不良って自分を位置付けてもいいのかな~?僕ぁ大いに異議有りだな~』
「…っ“カズトヨ”ぉお~~っ!てめぇもっとでっかいサイズになって喋れ!!いつも通り全っ然聞こえねぇんだよっ!!」
『ニっシャシャシャシャっ♪』
「…っていうか。マチコさん達に歯向かってるのって、実質ヤス先輩とアツロウさんだけですよね」
淡々とした声が割って入り、ヤスの背後にいた黒ぶちの大きなメガネをかけた、どこか学者めいた雰囲気の男がメガネを指で押し上げた。
年齢は20代前半。160㎝台の小柄な体格で、こげ茶の髪形は頭の形が分かるほど短い。ヤスと同様のバトルスーツを着込み、小銃を携帯した男ーーー“アユサワ・タツオ”はさらに続けた。
「負け戦ってわかってるのに…良くそんな熱くなれますね」
「タツオぉっ…お前らみてぇなタマ無し男ばっかの隊だから、俺やアツロウさんが孤軍奮闘してんだろぉがあ!!」
ヤスは強面な顔でヤスをがなった。
「いや…誰も頼んでなんていませんからね」
「んだとこらあっ!!ケンカ売ってんのかてめえっ…!」
『やっちゃえやっちゃえ~♪』
「やめなってヤス君。ほらほらタツオ君も火に油を注がない、ね?」
二人の間にトシの巨体が割って入った。
「クククッ…君は何も分かってなどいないのだ、ヤス君っ…」
「はぁ?」
3人が振り返ると、背後にいた目の下のクマが目立つギョロ目のやせぎすな男ーーー“シカマ・シンジロウ”が、不気味なオーラを放ちながら笑っていた。
年齢は20代後半。肩までのボリュームの無い黒髪は青白くやせぎすの顔を覆い、薄い灰水色のギョロ目に、針金のようにひょろりとした体格に暗灰色のバトルスーツを身に纏い、極端な猫背が男を更に不気味な存在に見せている。
シンジロウはカッと目を見開いて叫んだ。
「あの3人に冷たくされる喜びを、君は何も分かっていなぁあいっ!あのゴミでも見るような視線、ぞんざいな態度っ…こんな楽園を、君はなぜ地獄などと言えるのだぁあっ!」
ヤスはドン引きしながら、青白い顔を紅潮させて叫ぶ男と思わず距離を取って答えた。
「シンジロウ…――俺はてめぇみてぇな変態と違って、まともな人間としての意見を言ってんだよっ、話題に入ってくんなっ…!」
「あ、それ差別発言ですよヤス先輩。控えて下さい」
タツオが冷静に釘を刺した。
「だぁあ―――っ!!何っでこんな奴ばっかなんだようちの隊はよぉおっ!!男気のある奴はいねぇのか!任侠や仁義は一体どこ行ったぁあ―――っっ!!!」
「ヤクザ映画じゃないんだから」
「うっっせぇえ――ーっっ!!!」
タツオのツッコみにヤスは怒鳴り返した。
「ちょっと、さっきからあんたギャンギャンとうっさいのよ、ヤス」
「ふぐぉっ…!」
ミチの低い声と共にいつの間にかマチコ達がヤスの背後にそびえていて、動揺したヤスの口から思わず奇声がもれた。
「ねえあんた達、ちょっとこっち来て」
その時マチコ達より後方の、G・O・C本部入り口そばで集まっていた2人の中から、女が顔をマチ達に向けて呼び掛けた。
シンジロウが勢いよくグルンッ!と振り向くと、尾を振る犬の如くその女に向かって駆け寄っていった。
「“カンナ”さぁあんっ!僕をお呼びですかっ!?」
カンナと呼ばれた女は、シンジロウの方を見もせずにすげなく答えた。
「ううん、呼んでない。あんたはG・O・Cの奴等がこっち来ないか、見張ってなさい」
シンジロウは目を輝かせて敬礼した。
「はぃいっ!かしこまりましたあっ!」
シンジロウは忠実な犬の如く周囲を警戒し始めた。
「何~カンナ」
「隊長から連絡入った」
見た目は30前後。栗毛の耳下までのボブヘアに、普段からあまり表情を崩さない、切れ長の薄黄緑色の瞳に整った顔立ちーーー他のメンバーと同じ暗灰色のバトルスーツに身を包んだ“シオギ・カンナ”は、スピーカーモードにしたW・PCを見下ろしながら話を続けた。
「―――で、本当にもうサーバールームは制圧で来たんですね、隊長」
[おっ…おう。そんで隠し部屋にいるG・O・Cの奴等を、俺等M・P部隊で仕留めろって、ガイの旦那からの命令があっ…]
我等がM・P部隊隊長―――アツロウのだみ声が、W・PCから流れてきた。
[か、隠し部屋がよぉ、いくつかあって…俺様一人じゃ無理っぽいからよぉ、お前等にも手伝わしてやんよおっ!]
カンナの隣で共にアツロウからの連絡を聞いていた副隊長のオウミが、静かに口を開いた。
「G・O・C本部棟の、詳しい見取り図などはありましたか?隊長」
[うっおう!今からおめぇ等に、本部の見取り図のデータ送ったろうか?]
「あれば助かります。隠し部屋の位置をマークして、こちらに転送してもらえれば、玄関前の防御壁解除後、我々は速やかに隠し部屋を掃討します」
[…っ…ああ、わーった。見取り図そっちに送るわ、ちょっくら待ってろ]
通話がいったん終了し、その直後オウミのW・PCが振動してホログラムを開くと、アツロウからのデータが届いていた。
「―――来たようですね。今皆さんにも転送します」
オウミはデータを全部隊員に転送した。
「地上3階に、隠し地下の4階…。地下に4つ、この赤くマークされているのが隠し部屋ね」
カンナは真剣な表情でデータを見つめて言った。
「隠し部屋は地下2階と3階にそれぞれ2部屋ありますね…お互いに連絡を取れる状況にあるなら、どちらかが攻撃された時点で、こちらの動きを読まれるかもしれない」
アツロウから再び連絡が入った。
[ぐっ、うお~。どうだ、データは共有出来たかよ]
「来ました隊長。それで…各部屋の通信網は、まだ生きていますか?こちらの動きが相手にばれるのは避けたいのですが…」
[俺が侵入した時点で、何もアクション起こさねぇっつうことは、外部とのリンクが上手くいってねぇっつう事だと思うぜ。実際っ…こっちで隠し部屋の映像見てみたら、中の奴等はほぼ非戦闘員で、隠れるのがやっとって感じだったかし、何か行動しようって感じじゃなかったぜ]
「ガイさんの事前工作が効いた結果ですね。了解しました、隊長。防御壁を解除出来ますか?」
[お、おうっ。お、お前等が本部に侵入した後、エレベーターをこっちで一基稼働状態にさせとくからよぉ、それに乗って地下2階と3階に行ってくれや。オウミ、俺はお前等のアシストに回るから、こっち来て俺様と入れ替わってくれや]
「了解しました。チームを二つに分け、それぞれの階で隠し部屋を掃討します」
[じゃあ、防御壁開けっぞ!お前等すぐ来いよ!]
オウミは集まった隊員に目線で合図をし、M・P部隊員はG・O・C本部棟の玄関を塞いでいる分厚い防御壁シャッターの左右に展開すると、扉が開くのを待った。
やがて重い音が響くとシャッターが上へと開き始め、人が通り抜けられるほどの距離が開くとピタリと停止した。
小銃を構えたオウミは、その辺に転がったガレキを足で本部棟の中へと蹴り出し、セキュリティーがまだ生きているか確認した。何も作動しないことを確かめたオウミは隊員に合図をし、隊員は次々と建物の中へ侵入した。
小銃を天井や4隅に向け、隊侵入者用の銃火器に警戒しつつ銃口を移動させながら進むが、天井や部屋の隅に備わった銃火器は、先行したアツロウによって既に破壊されていた。
セキュリティゲートを過ぎて更に奥へ進むと広いロビーとなっていて、ソファセットや自動販売機が並んでいた。そしてその奥には2基のエレベーターがあり、左側の物の表示階が点滅し、電源が通っていることを知らせていた。
ロビーのセキュリティシステムが破壊されていることを確認し終えたM・P部隊は、エレベーターの前に集合した。
エレベーターの左右に展開してオウミが開閉ボタンを押すと、エレベーターの扉が開き、くと同時に小銃で素早く中を確認した隊員は、中に危険が無いことが分かると中へ入った。
オウミは、“B2”と表示されたボタンを押して話した。
「カンナ、カズトヨ、タツオ、ヤスはB2階の隠し部屋を制圧。その他の隊員は、B3階の隠し部屋を制圧してください」
全員が了解したその時、エレベーターが停止して扉が開いた。
「ストップザモーメント~。動きを止めなさぁ~い!」
「「「――ッ!!?」」」
扉の前に立つ人物に対し小銃を向けた瞬間、全員が金縛りにあった様に身動き出来なくなってしまった。
「な゛っ…何で、あんたがっ…」
「ハローカンナぁ、久しぶりねぇ~」
豊かに波打つ金髪に、けだるげな灰色の瞳の肉感的な美女――――G・O・C零番隊隊員アトリは、自身を誇示するように長い金髪をかき上げて、艶やかな唇で妖艶に笑った。
「どういう…事ですかっ…」
オウミは何とか体を動かそうと全身に力を込めるが、アトリの姿を見て命令を聞いた瞬間から体はピクリとも動かせない。アトリは小首を傾げてシニカルな笑みを浮かべた。
「そりゃあ…あんたんとこのさもしいブタさんが、サーバールーム制圧作戦失敗したからじゃな~い」
「あっー…の゛ブタ野郎お゛っ!!」
いつも冷静なカンナが、ドスの効いた表情で憎々しげに毒づいた。アトリは余裕の表情で一同を見渡すと、小首を傾げて笑みを深くしながら両手を軽く打ち合わせた。
「さぁて…一気に手駒が増えて、面白くなって来ちゃったなぁ~どうしよっかなぁ~」
笑いを含んだ声とは裏腹に、アトリは蛇が捕らえた獲物を飲み込むような温度の低い冷たい目を細めた。
《Side-アキト》
アキトは人ごみの中を何とかすり抜けながら、内心暴れる不安と戦っていた。
とにもかくにも――――訳が分からなかった。
照り付ける日差しは段々低くなっていたが、暑さは収まるどころかさらに酷くなっていた。アキトは走りづめでこめかみから流れ落ちる汗を、腕で乱暴に拭った。
普段の今頃なら、この広い大通りも暑さで建物に避難した人達のせいで閑散としていただろうが、通りの先から響く戦闘音のせいで人が集まっては心配そうに、あるいは興奮気味に、戦闘が展開している方向を遠巻きにうかがっている。
(何で―――…一体、何がどうなって…)
“アキト~G・O・Cの皆のこと、よろしくね~!”
自分にそう言い残し、なぜか慌ただしく去っていったハルとスイの姿が不意にアキトの脳裏に浮かんだ。
「…俺に、何が出来るっていうんだよ…」
アキトはうつむきながら弱気な口調で呟くと、その視界に片手で持った大きな紙袋が目に入った。
(…生活用品は一応手に入ったし、金もまだ残ってる――――…このまま逃げたって、きっと誰も気にはしない…)
何せ自分は、この街に来てまだ半日も経っていない身の上なのだ。
(スイやハルには悪いけど、G・O・Cにだって、そんなに思い入れはありはしないし…)
倒れていた河岸で、自分を取り囲んで心配げに見下ろす人達の顔が浮かぶ。車内でも親切にされ、G・O・C本部では副団長のソウジに会い、彼は温かい笑みを浮かべて自分の状況に同情してくれ、援助の手を惜しみなく差し伸べてくれた――――…。
アキトは奥歯を強くかみしめた。
『…醜く脆弱な、臆病者め』
「――ッ!!!」
すぐ耳元で囁かれたその声に、アキトは弾かれたように顔を上げ立ち止まった。
アキトの背後に落ちる影と同化するように―――赤黒い“異形”が、いつの間にか立っていた。
アキトの鼓動が跳ね上がり今まで感じていた暑さも忘れ、代わりに全身から血の気が引いて冷たい汗が滲み始める。
震えるアキトの背後から鮮血の如く眼を見開いて、異形は顔を更に近づけ嘲笑をにじませ囁いた。
『貴様はただ怯えるだけの卑怯者なのだ…―――我という存在が無ければ…貴様はただの“ゴミ”よ』
「…っ…やめろ…――」
『感じるだろう―――…貴様の肉体を蝕みつつある、我の脅威をっ…!!』
「違うっ!!俺は―…」
アキトは耳を塞いで、背後から聞こえる声を締め出そうとした。
『貴様の存在など、もはや風前の灯火よ――…』
異形が口を開いて笑い、その鋭い牙から透明な雫が糸を引いた。
『我が、貴様の全てを喰らい尽くし…』
「やめろぉおおおお―――――ーっっっ!!!」
瞬間アキトは自分が大声で叫び、周囲の人間から狂人を見るような視線で見られている事に気付いた。呆然とするアキトを、人々は腫れ物に触るように様に一様に目を逸らすと、距離を取って遠ざかっていく。
鼓動はまるで胸を打つように激しくなり、全身が小刻みに震えていた。
「…っ…嫌、だ…俺はっ、このままじゃ―――…」
全身の力が抜けるような絶望と恐怖に襲われ、アキトは両腕で自身の体を強く抱きながら、深くうなだれた。
光を――…誰か、誰でもいい、俺を助けて…。
闇の中で必死に腕を伸ばすようにそう思った時、河岸で初めてまともに目が合った時のスイの顔が、アキトの脳裏に鮮やかに浮かんだ。
“綺麗だ――…”
スイと目が合ったあの瞬間、胸を突くような衝動がアキトを貫いた。
つり目がちのまるで宝石のような鮮やかな翠の瞳が印象的で、小さな卵型の輪郭の意志の強そうな顔立ちに、乱れた短な黒髪―――女性にありがちな余計な飾り気など一切無い、スイの持つ刀の様に何かを斬るという、ただ一つの役割しか持たないものが持つシンプルで強靭な美しさを持った目の前の少女に、アキトは一瞬で強く惹き付けられ、束の間息をするのも忘れながら呆けた様にスイに見惚れてしまった。
それからG・O・C本部で自己紹介し、昼食を取って逃げるようにして別れるまでの間―――アキトはすぐにスイへと吸い寄せられそうな自分の視線を苦労して逸らしつつ、内心ずっとどぎまぎして平静を装いながら彼女と会話をしていた。
「―――ー…っ…」
慌ただしく去ってしまったスイの背中を見た時、アキトはなぜか母親に置き去りにされた幼子の様な、酷く寂しい気持ちに襲われたのを思い出した。
(…今日初めて会った人間に、俺は何すがろうとしてんだ…っ!!)
アキトは歯を食いしばると、怒ったような表情でギッと顔を上げた。
こんなに良くしてくれた人達が、窮地に陥っている。それを知っていながら尻尾を巻いて逃げるなんて――…そんなことをするような奴に自分の居場所なんて、永遠に見つかるわけがない。
しかし―――そうやって自分を奮い立たせるように覚悟を決めながらも、アキトの中には自分自身への拭い切れない“恐怖”が、まだ沼底の泥のように重く沈殿していた。
アキトは右手で、自身の左腕を強く握りしめた。
「―――…行かなきゃ…」
アキトは密度を上げる人ごみの先へ向かい、急ぎ足で歩き出した。