51.依頼
51.依頼
2日間の間にBランク試験の結果が来ていた、結果はまぁ合格だった。
合格した割にはテンション低くない?って思うかもしれないがだってねぇ、合格通知がさメールの一番最初の目につくところに書いてあったんだもん。
「Bランク試験合格通知」って題名でメールが来たときは何て言うか先にネタバレされてから映画を見たような感じと言えばいいのかとにかくがっくりだった。
けどまぁ合格した事は素直に嬉しかったのでそこには喜んでいる。
後、郵送を頼んでおいた〝龍鉱石〟も届いたけど470キロって思ったより多かった。
何台も何台もドローンが飛んできては荷物を置いてまた飛んで行く光景はなかなか壮観だった。
空間拡張された荷箱なら1箱で済んだんだろうけど空間拡張箱は買取になっちゃうし結構なお値段するからさすがに頼めなかった。
そんなわけでドローン配達が帰った後には〝龍鉱石〟470キロ分の沢山の箱が残った。
そのまま【空間庫】内へと全てしまったが、これ持ち運ぶ手段がなかったらやばかったな。
「ようこそいらっしゃいませ、神薙さん」
「お邪魔します」
予定通り朝の10時にお迎えがきて神宮寺家へと向かい、今着いたところだ。
出迎えてくれた立花さんについていき屋敷内へと入りそのまま応接間へと通された、中には既に神宮寺さんがいて何やら調べものをしながらゆっくりとしていた。
「来たか!久しぶりだな!」
「お久しぶり、元気だった?」
「あぁ、元気だぞ!昨日から作っている両手剣がなかなかいい感じでな、まだ製作途中なんだが楽しみなんだ」
相変わらずの筋肉むちっとお嬢様だ、今日は可愛らしいワンピースを着ている。
「ほへー。あ、お土産があるんだけど置く場所どうしようか?」
「お土産?なんだなんだ!?」
「あー、結構重くて場所取るから広い所がいいかも」
「それでしたら倉庫の方へ案内しましょうか?」
倉庫か、確かにその方がいいかも?
「それじゃぁ、倉庫までお願いしていいですか?」
「はい、こちらです」
「私も一緒にいくぞ!!」
立花さんに連れられて倉庫へと向かう、ついて早々にまた移動するのもどうかなとおもったけど折角のお土産だし先に渡しておきたかった。
屋敷内を歩いていきそのまま外へ、ここは以前もきた神宮寺さんの工房があるあたりだが。
「ここです」
案内されて倉庫と呼ばれる場所へと来たがかなり大きい、この屋敷にある全ての備品が置いてあるんじゃないかと思うほどの大きさだ。もしかしたら予備の家具とかも入っているのかも?それぐらいでかい。
中へ入ると予想通りかなりの広さだ、棚が所狭しとあるが入口は物を運ぶからか広めに場所を取ってある。
「ここに出してもいいのかな?」
「はい、ここで大丈夫です。因みにお土産ってなんなんですか?」
「私も気になってた!なんなんだ!?」
「珍しい鉱石だよ、神宮寺さんの【魔鍛冶師】スキルなら有効活用してくれるかなと思って持ってきたんだ」
そう言いつつ〝龍鉱石〟が入った箱を【空間庫】から取り出し並べていく。
「おぉ!何だこれはって〝龍鉱石〟じゃないか!そうか、『踏み均す者』から出てきたんだな!」
【空間庫】から取り出した箱へと神宮寺さんが飛びつき大雑把に箱を開けて中を確かめていく。
木箱の破壊される音が聞こえてくる。
「お嬢様!もっと丁寧にあけてください!」
「ははは、ってあれ?そういえばどうして『踏み均す者』の事をしってるの?」
たまに連絡をとるとはいえネームドである『踏み均す者』を倒したことは言ってなかったはずだが。
「神薙さん、あなたが思っているよりもソロでネームド討伐というのはそこそこの出来事なんですよ?情報を日頃からちゃんと集めている人からすればすでに知っている話しです」
「えぇ………そうなんだ」
「はい、これからはあなた自身の事を調べてくるはずです。なので知られたくない事があるなら気を付けたほうがいいかもしれません」
スキルの事とかか………、それにしてもそうかぁ。でもまぁちょっと考えれば当然の事だったのかな?優秀なクランほど色んな事に気を付けているはずだしそういった情報もちゃんと集めているんだろう。
『踏み均す者』についても素材として売却したしダンジョン協会から素材の情報が流れてくるんだろう、そこからじゃぁ誰が討伐したんだ?って事になったのかな。
それで俺という人物の情報に行きあたって次は俺自身の情報か………
調べられるってなんだか嫌な感じだが、うーんどうしようもないか。
「あ、お嬢様待ってください!」
「あ………」
立花さんと話し込んでいる間に神宮寺さんは取り出した〝龍鉱石〟を両手いっぱいに抱えてどこかへと行ってしまった、まぁ多分工房へ行ったんだろう。
お土産は帰る前とかに渡すべきだったかな?それにしてもあれだけ大量に一度に運べるとはあの筋肉は伊達じゃなかったな………
そう考えつつも神宮寺さんを追いかけていった立花さんをさらに追いかける形でついていく、向かった先は想像通りの工房だ。
「お嬢様!お客様が来ているんですから後にしてください!」
「ちょっとだけ!ちょっとだけだから!な………?」
「ダメです!せめて話しが終わってからにしてください!」
工房内から2人の言い合う声が聞こえてくるが険悪な感じでは無く何て言うかいつもの日常って感じがしてくる。
「ほら、それはこっちにおいてください!もうっ」
工房内へと入っていくと立花さんが神宮寺さんから〝龍鉱石〟を取り上げて備え付けてある棚へと仕舞っている所だったのでそれを眺めつつ工房内に置いてある椅子へと座る。
「神薙さんも忙しい中来てくださっているんですからね!」
「ぐっ、わかったよ」
いや、別に忙しくはないんだけれど………まぁいいか。
「それで、話しって何なんだ?」
「ふぅ、実は響に依頼したい事があるんだ」
「依頼?」
「あぁ、Bランクダンジョン【アルミーシュ】で【ラドナクリスタル】を取ってきて欲しいんだ」
「【アルミーシュ】で【ラドナクリスタル】とな、ってあれ?Bランク試験受かったって知ってたんだ?」
Bランクダンジョンへ入るには試験に合格して資格を得ないと無理だ、なのに行ってほしいって事は俺がBランクである事を知ってないと無理だよな?
「おう、探索者の詳しい情報とかは書いてないけどランクは指名依頼する関係上データベースに載ってるぞ?」
「えっ?ランク情報とかって見れるんだ………?」
「あぁ、いや。もちろん一般には公開されてないぞ?指名依頼する側にも条件があるからな」
依頼主にも最低条件があってそれをクリアしても見れるのはランク情報ぐらいって事か、まぁ確かに誰にでも見れたらおかしい………か?いや、ランクぐらいなら別に問題ないとは思うんだけどどうなんだろ?何か不都合があるんだろうか?俺には想像できない事か。
「うん、まぁいいや。それで【ラドナクリスタル】って言うのはどういう物なんだ?」
「それは、見せたほうが早いな。え~っとあぁカレンありがとう。これだ」
神宮寺さんがポケットをまさぐり何かを探そうとして立花さんが横からスッとデバイスを取り出して渡してた。
「それってこの間発売したやつ?」
「そうそう、買ったんだー」
立花さんが取り出して渡したのは空中投影デバイスでつい先日に発売されたやつだ。裏面にはいつものリンゴが少し欠けたあのマークが入っている。
手のひらに収まるサイズの丸いフォルムにそこから花が咲くように部品が展開してブワッと光が溢れ机の上に空中投影された映像が出てくる。
「え~っと【ラドナクリスタル】の映像は、あったこれだ」
神宮寺さんが机の上に表示されている投影物を直接手で触り操作していく、映像フォルダを開きいくつもある写真の中から【ラドナクリスタル】であろう映像を選択し表示させる。
「これが【ラドナクリスタル】?」
見た目は完全にファンタジー物とかで出てくるクリスタルその物だ。細長い六角柱で色がゆっくりとだが絶え間なく変化している、全体的に水色になった場合はクリスタルの中心に他の色が渦巻いていてそれが上へと昇っていき次の色になり、また次の色になりと綺麗だ。
クリスタルの中心でぐるぐると渦巻いて線になっていた他の色が上へと昇り頂点へとたどり着いた瞬間クリスタルの色が頂点からふわ~っと変わっていく様が不思議な感じ。
「これがBランクダンジョンの【アルミーシュ】って所にあるの?」
「あぁ、そしてこれが【アルミーシュ】の内部映像だ」
そう言いつつ神宮寺さんが映像を切り替える。
「おぉ~凄い所だなこれ」
映し出された映像は凄かった、ファンタジー的な荒廃した都市と言えばいいのか?都市のあちこちに草や木などが生えていて、ビルは所々が崩れビル自身にも草が茂っている。
空中にはビルが横向きに生えていたりと明らかに現代的ではない物語や絵などで表現されることがありそうな荒廃した都市、ディストピアって感じだ。
正直、依頼とか関係無しにここに行ってみたいと思うほど面白そうな場所だ。
「【アルミーシュ】は常に変動が起きていてこれといった地図もなく探索が困難な場所だ、そんなダンジョン内にいる魔物『機械種マギア』のリーダー格のやつを倒すと入手できるんだ」
「『機械種マギア』?」
「そう、これだ」
流れていた【アルミーシュ】の映像が切り替わり今度は魔物が表示される。
見た目は完全にロボット、メタリックな肌に体のあちこちから見えるケーブル、しかも色んな種類がいる。四つ足型や逆足関節の二足歩行型に普通の人間みたいな二足歩行型、これらは全て上半身が人間を模したロボットとなっている。
他にも動物を模したものや虫っぽいのもまで沢山の種類がいる。
次に表示されたのはさっきの奴たちのリーダー格版なのだろう、ロボットの装備が豪華になり大きさもでかくなっている。
「このリーダー格のコアになっているのが【ラドナクリスタル】だ」
「ふむ、つまりコアを壊さず倒さないといけないって事か」
「そうなる」
「なるほどねぇ、わかったよ。その依頼受けよう」
「そうか!ありがとう、それじゃぁこれが依頼書だ」
もう用意してあったのか依頼書。何々?
Bランク指名依頼:《【ラドナクリスタル】の納品》
『機械種マギア』のリーダー格の素材である【ラドナクリスタル】の納品。
納品数:最低でも1つ、最大3つ 報酬:納品数×2000万
「はぁ………はっ!?報酬たっか!!」
「そうか?Bランクダンジョンの依頼だしそんなもんだと思うぞ?」
2000万てやばくね?しかも最大である3つ持ち帰れば6000万。Bランクになるだけでこんなに稼げるの?
「あぁ一応言っておくと、これはちゃんとダンジョン協会を通しての依頼だからな?個人的な依頼じゃないし、響が所属しているクランにもちゃんと話を通すから」
「はぁ………まぁわかった。取り合えず頑張ってとってくるよ」
「おう、頼んだ!」
何だか報酬がこれだけ凄いと『機械種マギア』のリーダー格って途轍もなく強いとかなのかね?
っていうかひとつ2000万で売れる【ラドナクリスタル】をGPにするとどうなるのか気になってきた。
楽しみになってきたな。




