49.【フィルテイシア】リザルト #試験の終わり
49.【フィルテイシア】リザルト #試験の終わり
『続いて、ネームド『踏み均す者』の討伐を確認、称号【龍殺し】を獲得。称号の効果により討伐者のスキルを参考に報酬を授与します………………ユニークスキル【GunSHOP】を確認、新商品を追加しました』
何度見ても新商品追加と書いてある、まさかネームドを倒す事でこんなことが起きるなんて思ってもいなかった。
新商品が何か凄く気になるし今すぐ見たいが、とりあえず一つずつ確認していこう。
まずは『踏み均す者』の死骸をどうするか考えないと。
「駿河さん、ちょっとお聞きしたい事が」
「はい、なんでしょう?」
「この死骸ってどうすればいいんでしょうか?明らかに持って帰れるサイズじゃないですよね」
そう言って俺は『踏み均す者』の死体を指さす、頭と胴体がわかれたと言っても頭だけで家一軒分ぐらいの大きさはあるし胴体だってそれ以上にでかい。
【空間庫】には勿論、収納袋にも入りきらないだろう。
「それならダンジョン協会にこういった場合の回収作業を行ってくれる制度があるからそれを利用しましょう」
「そんなのがあるんですか?」
「えぇ、本当だったらこの試験に合格してBランクになってから使える制度とかの説明があるのだけれど。ちょっと早いけど使ってみましょうか」
駿河さんはそう言うとライセンスから画面を開きどこかへと連絡している。
っていうかBランクになると特典みたいなのが付いてくるのか?
「よし、これでいいわ。後は数時間もすれば回収しに来るはずよ」
「ほへぇ、便利なやつがあるんですね」
「高ランクの魔物はどうしても大きくなる傾向があるからね、たまに収納袋とかじゃ仕舞い切れない魔物も出てくるの、そういった時に利用するのよ」
アイテムボックス系のスキルでも最終的には上限がかかる、そう考えてみればむしろあって当然の制度か。
多分持って帰らずにGPへと換えればいいんだろうけど、流石にこれは換えれない。
まず今回『踏み均す者』を倒したという事はどうやってもダンジョン協会へと伝わるだろう、駿河さんがいるし。
そうなったときに死体がないとどこへやった?となる。
答えようがない。
なので『踏み均す者』がどれだけのGPになるか気になるがしょうがない。今回はダンジョン協会へと任せよう、GPも気になるけどお金も気になる。
「あれ?それは何やってるんですか?」
『踏み均す者』を眺めていると駿河さんが何かしているのが見えた、小石のような物を地面に置いていってる。
「これは魔物に襲われないために使う、簡易結界を発生させる魔道具よ。おもに野営の際などに使うのだけれど今回は出番がなかったわね。最後にこのビーコンを置いてっと完成よ、後は待つだけよ」
野営の時に使う魔道具か………本来ならこういった道具を使うような物なんだろうけど俺はそういった部分が全部スキルでどうにかなっているからなぁ。
考えている間にも駿河さんは収納袋から椅子や机を取り出しゆっくりできるように準備しはじめた。
【野営地】内にも道具が置いてあるはずだが予備かな?
まぁ後は待つだけならステータスの確認でもしておこうかな。
名前:神薙 響 年齢:15
レベル:53 → 62
STR:83 → 98
VIT:45 → 56
AGI:88 → 97
DEX:573 → 662
INT:8
MND:7
≪スキル≫
<ユニーク>【GunSHOP】Lv:5 → 6
<上級>【空間庫】Lv:4 → 5
<スキルリンク>【野営地】Lv:1 → 2
<上級>【射撃】Lv:8 → 10
<中級>【銃術】Lv:2 → 4
<上級>【堅忍不抜】Lv:─
<中級>【気配感知】Lv:9 → 10
<中級>【遠目】Lv:─
<スキルリンク>【イーグルアイ】Lv:6 → 7
<ユニーク>【風読み】Lv:─
取り合えず言える事はステータスがめっちゃ伸びた、そりゃ一気に9もレベルが上がればこれだけ伸びるかって感じだ。
スキルについては全体的にレベルが上がった、またゆっくり確認していかないといけなくなったな………
【射撃】と【気配感知】がレベル10になり今後使い続けるとスキルランクが上がるか気になる。
さて、本命の【GunSHOP】スキルを見て行こう。
<ユニーク>【GunSHOP】Lv:6 ▼
LV:1 <GunSHOPを開いて売買が出来る> ▼
武器:▽
外装:▼
〝サイト〟5GP~▽
〝スコープ〟10GP~▽
〝サイレンサー〟10GP~▽
〝ライト〟5GP~▽
〝ストック〟5GP~▽
〝グリップ〟5GP~▽
<New>〝マズル〟10GP~▽
<New>〝ウェポンライト〟500GP~▽
<New>〝ハンドガード〟30GP~▽
<New>〝グレネードランチャー〟300GP~▽
<New>〝拡張マガジン〟500GP~▽
・
・
・
防具:▽
消耗品:▽
<New>特殊:▼
<New>〝龍殺しの一撃〟100万GP
まず、レベルが上がった事で武器にFoxtrotシリーズが増えた。発音はフォックストロットだ、かっこいい。
GPに余裕が出来たら武器とか更新したいと思う。
次に外装に種類がめっちゃ増えた。
何だかそろそろ銃についてもわかってきただろ?自分好みにカスタムしてみなよ、と言われているみたいだ。
確かにこれまで扱ってきて色々調べたしこういった外装パーツの存在は知っていた、なので一度試してみるのもありかもしれない。
ひとつずつ見ていったが気になったのは拡張マガジンだ。普通の現実的な拡張マガジンもあったのだが他にも変わったのがあった。
それが〝空間拡張型マガジン〟だ、通常のマガジンが数十発なのに対してこの〝空間拡張型マガジン〟は1つで100発の弾を込めることが出来るみたいだ。
ハンドガンのマガジン一つに100発入る事になる、その代わり一つ10万GPとめちゃくちゃ高いがそのうち買いたいと思う。
そして最後に気になっているであろう項目、特殊にある〝龍殺しの一撃〟について。
正直さっぱりわからない説明文もないし、わかるのは恐らくこれが『踏み均す者』を倒した時に手に入れた称号報酬ってやつということぐらい。
その値段なんと100万GP、ちょっと意味が分からない。
買えない値段ではないとは思う、『ワイバーン』1匹3万GPだし『グランドドラゴン』とかも同じぐらいある。
頑張ってここで狩りまくればすぐに貯まりそうな値段ではある。
だけどインフレがすごいな………いきなり100万GPか、それだけ強い装備って事なのかな?気になる。
ちょっと頑張ってみようかな?
あれ?そういえば今更だけど『踏み均す者』を倒したことで宝箱とかでないのかな?ボス部屋じゃないし流石に無いのかな。
チラッと『踏み均す者』を見てみるが特にこれといったことはなさそう。っていうか首元の切断面がグロすぎる、自分でやっておいてなんだが血がドバドバ出ているしお肉がぐろいし。
『踏み均す者』の血って赤色なんだなぁ………
「ん?」
「お、やって来たみたいね」
【気配探知】に人を捉えると駿河さんも気づいたのか椅子から立ち上がった。
彼女の言い方からすると回収班がきたのかな?
「お疲れ様です、ってあなたが来たんですか」
「おう、『踏み均す者』がついに倒されたんだ俺がくるしかねぇだろう」
現れたのは10人ほどの集団、先頭に立ってた人物が駿河さんと話しているがすごく特徴的な人物だ。
がっしりとした体格に肉屋みたいなエプロンをしている、血とかいっぱいついていそうなものだが意外と清潔にしてあるのか綺麗なものだ。
「おまえさんが討伐者か、ひょろっちいのにやるじゃねえか!」
「ありがとうございます?」
肉屋みたいなおっさんが近づいてきてそう言ってくるが何て返せばいいのかわからない、おっさんはぱっつんぱっつんの服を着ていて胸元から胸毛がむわっとしていてここまで何か匂ってきそうな感じの見た目をしている。
「彼は藤宮 仁さん、ダンジョン協会に所属している解体屋の中でも腕のいい職人よ。こちらは今回の討伐者である神薙響さん」
「おう!よろしくな!それじゃぁ早速だが解体にうつるぞ!」
お互いの紹介がおわると藤宮さんは早速とばかりに『踏み均す者』の解体にうつっていった。
「変わった人だけど腕は確かよ、立場的には所長とかになってもおかしくないだけれど現場がいいって今もこうやってくることがあるのよ」
「へぇ………」
確かにベテランって雰囲気が出てたしな、相当な経験を積んでいるんだろう。
今も解体作業を見ているだけでその手際の良さがわかる。
あんなにきれいに皮って剝げるんだ………
やることないし眺めていよう。
◇ ◇ ◇ ◇
「よし!終わったぞ、これが目録だ。素材はそっちで運ぶこともできるがどうする?このまま俺達が運ぼうか?」
ものの数時間であれだけ大きかった『踏み均す者』が綺麗に解体されてしまった。
綺麗に皮がはぎ取られ、血を回収されて、部位ごとにパックされて、その全てが今回の為に持ってきたといっていた収納袋に入れられていった。
藤宮さんが特別優秀なのかと思っていたがそういうわけでもなく今回やってきた10人全員が解体職人で、その全員が優秀だったみたいだ。
「任せてもいいですか?」
「おう、まかせろ!」
職人だけでここまでこれるってことはそれぞれ解体の他にも普通に戦う事も出来るんだろうな。
いや、むしろ解体職人としての知識があれば魔物相手に強いかもしれないな………
藤宮さんに『踏み均す者』の解体した素材としての目録が書かれた紙とデータを貰う。
「まだ試験中なんだよな?俺達はもう戻るが頑張ってな!」
「はい、ありがとうございました」
「おう!」
藤宮さん達はそう言うと駿河さんにも別れの挨拶をして、ササっと帰っていった。
「何だか凄い人達でしたね」
「現場まできて解体する職人っていうのはそこにたどり着けるだけの実力も必要になるからね、ただでさえ解体職人として実力が必要なのにさらに探索者としても実力が必要になる。ああ見えて彼らは意外と凄いのよ?」
「確かに………考えてみれば凄いのも当然だったか……」
そしてそんな変態的な人達だから他の人もあれだけ濃いキャラだったのか。
実は藤宮さん以外にも見た目に印象的な人が何人かいた、明らかに解体職人のような力仕事に向いていなさそうなひょろひょろの体のお兄さんとか。
常にほほ笑んでいてぱっと見は優しそうなお姉さんとか。
眼の部分を隠していた人とか。
他の人もそれぞれ結構印象的だった。
「そういえば後3日あるんですよね?試験」
「えぇ、そうね。予定ではそうなってはいるけれど正直もうあなたは合格でしょうね、ネームドを倒せるんですもの」
「おー」
試験が終わる前に合格だと知れるのはでかいな、この後安心して過ごせる。
「それでも、一応はちゃんと予定日まで試験をしましょう。合格は確実だとはおもうけれど合否を出すのは私じゃないから絶対ではないわよ」
「はい」
それじゃぁ気を引き締めて残りの3日は使いすぎてしまったGPを戻すために行動しようかな、この先は狩りつくしだ。
◇ ◇ ◇ ◇
「こいつで40匹めぇ!っしゃー!」
GP変換率の高い『ワイバーン』か『グランドドラゴン』を毎日最低13匹、たまに1日で15匹とか倒す事3日、今は予定していたBランク試験最終日の昼過ぎだ。
ちょうど1匹3万GPになる魔物を40匹目倒し終わったところだ、途中で数匹ダメにしちゃうこともあったがこれで目標であったGPを稼ぎ終わった。
GP変換率の高い魔物以外にもこまごまとした雑魚を倒して、なんと今では135万GPもある。はい、頑張りました。
頑張りすぎて途中で駿河さんが俺の事一瞬見失う事件もあったがそれも今ではいい思い出だ。
何でこんなに頑張ったのか、もちろん理由は1つだ。100万GPもするアレが気になってしょうがないからだ。
「というわけで早速買ってみよう」
【GunSHOP】スキルを開き特殊の欄から〝龍殺しの一撃〟を選択して買っていく、どうやら見た目を変えたりは出来ないようでただ買う事しかできない。
「ぽちっとな」
購入ボタンを押すといつものように光が収束していき商品が現れる。
「何だこれ?」
見た目で言えば〝ハンドガン〟だろう、ただ、かなり異質だ。
色は真っ黒、そして普通のよりもかなり大型なのかでかい。上から見ると長方形の積み木みたいだ、そして銃口のある部分からみると4つの線が十字に走っている。
しかもその線が白く光っている、眩しくはない優しく光っている感じ。
トリガーの上の部分には桜の花びらが6つ刻まれていてそれも光っている。
「なんかすごいのが来たな」
マガジンを入れる部分も無く、撃鉄も無く、スライドしそうな機構も無い。これはどうやって扱うんだ?
取り合えず手に取ってみて眺めてみる。
「ふむ」
手に持ってみたがちょっと重いぐらいで持てない事は無い、ただこれを持って振り回すとかは難しそう、遠心力とかで流されそう。
「お、おぉ!?」
いつものように撃つ体勢になり構えると突然ギミックが作動した。
十字に走った線に合わせて銃身部分が4つに分かれ展開される、そしてゆっくりと回り始める。
「んー、嫌な予感がする。これは撃っても大丈夫そうな所にいこう」
嫌な予感がしたので慌てて海の方へと向かい砂浜を目指す。
「この辺ならいいか」
砂浜へと到着するとすぐに〝龍殺しの一撃〟を海へとむけて構える、するとさっきと同じ様に銃身の部分が十字にはいった線にあわせて4つに分かれて展開され、それからゆっくりと回転を始める。
「ふぅ、よし!」
満を持して、トリガーをカチッと引く。
「お、おぉぉぉぉぉぉ。やべぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
まず、キュィィィンと音がなり次に銃身部分に謎のエネルギーの弾が出来始める。そこから展開された4つの物体がどんどん加速して回転しはじめ時間にして数秒後エネルギーが発射された。
「これはヤバイ」
大きな音を立てて放たれたエネルギー砲は直径2~3メートルはあるだろう、海を蒸発させ、はるか遠くにあるダンジョンの壁を破壊してエネルギー砲はその軌跡を残した。
その恐ろしい破壊力とは裏腹に反動が全くなかったのがさらに恐ろしい。撃とうと思えばこれを連射できる。
リアルに破壊光線撃ったらこんな感じなのかな?っていう感じでえげつなかった。
「こんなの魔物相手に使えないよ………」
せっかく大火力を手に入れたが使う場面は無さそうである。そして撃った後に〝龍殺しの一撃〟を眺めていて気付いた、6つあった花びらの光がひとつ消えている。これが残弾数かな?もしかしてこれ100万GPで6回しか撃てないとかないよな?
そうだったらまずいなと思ったがどうやら時間で回復するっぽいのか消えた花びらの部分が軽く点滅して、今溜めてますよ~って感じになっている。
「神薙さん………それは使う場所を考えて下さいね?」
後ろを振り向くと駿河さんが戦々恐々とした様子でこちらを伺っていた。
俺も正直これだけ威力があるとは予想していなかったので、もちろんこんなもの気軽には使えないとは思う。
でも正直思うんだ、これ『踏み均す者』相手に撃ってみたいなって………
そんな風にして、俺のBランク試験は終わりを迎えた。