122.新しいドローン
122.新しいドローン
【カストラ】ダンジョンの調査が始まってそろそろ2ヵ月ぐらいが経つ、依頼の方は順調であと1週間かそれぐらいあれば終わるだろうという見込みだ。
もちろんずっとダンジョンに潜っていたわけじゃない、週に1回はダンジョン外へと出て買い物に行ったり休みにしたりと適度に息抜きはしていた。
ゆっくりペースで、かと言って遅すぎない程度のスピードで調査を行っていた。
「でかいなぁ」
森の奥からのっそりと現れたのは剣闘士ゴーレムなのだがその大きさが1階層のやつとは違い、遥かに大きい。
ダンジョンの奥へと進むたびに少しずつ大きくはなっていっていたのだがあまり気にしていなかった、たが10メートルを超える剣闘士ゴーレムが出てきてしまっては流石に気になる。
しかもそれが5人でパーティを組んで出てきた。
ひとつ前の階層の時は5メートルぐらいだったのにいきなり倍の大きさか。
まぁ相手が大きくなったところで戦い方は変わらないんだけれどね。
10メートル級の剣闘士ゴーレムは大きくなった弊害か足元が見えずらいのだろう、そんなに離れていないのにこちらに気づきもしない。
【空間庫】から〝対物ライフル〟を取り出し剣闘士ゴーレムの足を狙い撃つ。
俺が撃つのと同時にヘレナも同じ様に〝対物ライフル〟を撃っている。
撃つとすぐに【格納庫】から【不壊】を呼び出し剣闘士ゴーレムのパーティへと突っ込ませる。
【格納庫】から飛び出すように出てきた【不壊】は出てきた勢いのまま剣闘士ゴーレムへとパイルバンカーを撃ち込んでいった。
【不壊】が前衛をしてくれている間に俺とヘレナは【赤雷】シリーズの陰から〝対物ライフル〟で狙撃だ。
執拗に剣闘士ゴーレムの足を撃ち抜いていき機動力を奪って【不壊】に倒してもらう。
「この感じなら攻略スピードを落とさずに済みそうだ」
調査依頼が始まって2ヵ月。
いい加減飽きてきた、早く終わらせて違う所へ行きたい。
◇ ◇ ◇ ◇
「う~ん、もっふもふ」
夕方までダンジョンを攻略したら【野営地】へと戻ってきてのんびりタイムだ。
突然現れた動物たちだが時間が経って慣れたのか、餌をくれる存在だから懐いてくれたのか分からないが今では膝の上に乗せてその毛並みを堪能できるぐらいには仲良くなった。
今乗せているのはメインクーンの猫なのだが………でかい猫って結構いいね、程よい重さがあってもちもちとした体にもふもふの長毛がいい感じだ。
猫を撫でながら考えるのは、名づけをどうするかだ。
【野営地】の拠点にいつくようになった動物たちだがまたいつ突然いなくなるか分からない、その為軽率に名づけをおこなったりできなかった。
これが【テイム】スキルとかで関係値があるとかなら安心して名前を付けれるんだけれどなぁ。
まだ動物たちが現れてからそんなに時間も経っていないしもうちょっと気長に考えるべきか。
それよりもだ。
「ヘレナ」
「はい」
横を見るとヘレナがコーギーの腹をもふもふしていた、撫でられているコーギーはへそ天していて気持ちよさそうに目を閉じている。
「考えていたんだけれど、今使っているドローンって羽根付きの古いタイプの物だよね?」
「そうですね」
ヘレナが作ってくれたドローンは羽根が4か所についていてそれで飛んでいる形なのだが、これは昔からある古いタイプの物だ。
古いからといって問題があるかというとそうでもなくて、現代でもよく使われるのはこの羽根が付いているタイプのドローンが多い。
だが進化しないわけじゃない、技術の進歩によってドローンも進化している。
よくある技術系の企業がデモンストレーションというか何か大きな発表をするときとかによく使われるのは羽根の無い最新の技術で飛んでいるドローンだ。
わかりやすく言うならばヘレナ専用人型機が使う武装の中にある【飛翔機】がそれに近いと思う。
羽根では無く何やら不思議な技術により飛んでいるドローンのような物。
「音があまりしないと言ってもやっぱり羽根がある以上多少は音が出ているわけじゃない?」
「はい」
「耳がいいタイプの敵もいるだろうしもうちょっと高性能なドローンを作ってみたいんだ」
「はい」
「ヘレナの【飛翔機】のようなタイプのドローンを作るとして何か問題になりそうなことはある?」
「そうですね、まずは素材の問題が出てくると思います。私が使用している【飛翔機】は買った素材で作ったので、新しく作る場合はもう一度購入するか素材をとりに行く必要があります」
「素材か、購入した場合はどれぐらいの金額になるか見積もりを出せる?」
「はい、今あるドローンと同じ数を揃えるとした場合。およそ32億8000万ほどかかります」
「た、高いな………」
ほぼ33億か、どんな素材使うかしらないけれどそりゃそうだよな今あるドローンだけでも数百機になるわけだしそれぐらいかかってもおかしくないか。
「なので私のおすすめは素材をとりに行くことです、購入した場合は購入した分しか製作できませんが取りに行けば実質無限です。好きなだけ作ることが出来ます」
「なるほど………まぁそうするか。で、素材が取れるダンジョンってどこなんだ?」
「【ラピトリア】、楽園都市と呼ばれるAランクダンジョンです」
そういってヘレナは一枚の画像を空中投影で見せてくる。
「これが【ラピトリア】?」
「はい」
「綺麗な所だな」
中心に大きな柱のような建物があり、それが画像の上下の端まで伸びていてこの感じだとさらにまだ建物が伸びているように見える。
SFアニメで出てきそうな都市の外観をしておりかなり綺麗な街並みに見える。
「それじゃぁここを早く終わらせて【ラピトリア】へ行こうか」
「はい」
そうと決まればちょっとスピードアップだな、調査依頼を早く終わらせよう。
かと言って雑な仕事にはならないように気を付けなければ。
◇ ◇ ◇ ◇
と、言うわけで。
あの後ちょっと頑張って1週間ほどかかりそうなところを3日で終わらせた。
その後2日休みをとって今日は決めていた【ラピトリア】ダンジョンだ。
「こういう所に住んでみたいな」
画像で見た通り、中心に大きな円柱状の建物が立っておりそれが雲を越えてさらに見えないレベルで伸びている。
蟻みたいに小さいが何か飛んでいるがここからでも見える。
今いる場所は小高い丘の上でこの辺は普通の自然あふれる所で近代的な都市となっているのは中心部分だけみたいだ。
「素材となる敵はどの辺で出てくるんだ?」
「あそこの都市部ですね、そこに出てくる敵であれば全て素材となります」
ここへ来ると決めてから少し調べたのだが【ラピトリア】ダンジョンは観光名所としての側面が強く狩場としてはあまり人気がないようだ。
理由としては出てくる敵からとれる素材が現代だとあまり必要とされていないと言う事と敵があまり強くなく戦いがいが無いと言う感じだ。
ただダンジョンとしては見た目がいいので観光として来る人がいるらしいがAランクダンジョンなので来れる人は限られている。
そんな理由から人が来るとしても年に数回程度におさまっているらしい。
取り合えずバイクを【格納庫】から取り出し乗り込むとヘレナも後ろへと乗ってくる、周りも気になるけれど目的である都市部へと行こう。
「やべぇ全然近づかない、距離感がおかしくなる」
数分ほどバイクで飛んでいたが全然都市部へと近づく気配がない、あの中心にある建物が大きすぎて距離感が狂っている。
結局2時間ぐらい経ってからやっと都市部外縁までやってこれた。
「何か飛んでるけどあれはドローンか?」
「そうですね、これから作ろうとしている物に近い形のやつです」
見上げると羽根のない小さな何かが飛んでいるのが見える、デザインはともかく羽根がないから俺が作ろうとしているのもああいう感じのドローンなんだよな。
「あのドローンは敵なんだろうか?」
「明らかにこちらへと気づいているのに攻撃が無いと言う事は監視するだけの敵なのでしょうか」
監視するだけのね、つまりこのままここにいると───
「やっぱりきたか」
都市部外壁の上から敵と思わしき塊が降ってきた。
地面を陥没させなが現れたのは4つ足の機械だ、その姿は【赤雷】シリーズに似ている。
ただ機械生物なのか目と思わしき部分にモノアイが赤く光っている。
敵が現れたのでこちらも応戦する、【格納庫】から【赤雷】シリーズを呼び出し俺とヘレナは少し後ろへと下がる。
一応〝対物ライフル〟を取り出し構えて狙うが呼び出した【赤雷】が敵へと突っ込みそのまま背中についている機関銃で倒してしまった。
「なるほど、敵はそんなに強くないと言うのはこういうことか」
まだはっきりとは分からないがこの感じが続くなら【カストラ】ダンジョンの剣闘士ゴーレムの方がはるかに強かったな。
「んじゃ素材をとろうか、必要なのはどの部分なのかな?」
動かなくなった敵へと近づき素材となる部分を調べる。
「必要な素材はコアとその周りの高品質な部分です」
「コアね」
【格納庫】から作業員ロボットを呼び出し解体してもらう、皮むきをするように装甲がどんどんと剥がされていきすぐにコアとなる部分が見えてきた。
「これがコア?液体なんだな」
「はい、これを加工する事で反重力を生み出すエネルギーへと変換することが出来るんです」
コアと思わしき部分は350mlの水筒ほどの大きさの筒に入った紫色の液体だ。
「反重力エネルギーってなんだか名前は凄いよな」
反重力エネルギー、今では色んな場所で活躍しているエネルギーだが実際に使用するには莫大なお金がかかるとかでほんの一部でしか使われていないとかなんとか。
「つまりこれを売ればお金になる?」
「いえ、あまりお金になりません」
「そうなの?」
「はい」
貴重なエネルギーならお金になりそうだけれど。
「ごく一部で使われているエネルギーですからこれはあまり一般的な物ではありません、そして使うであろう人達もいつだれが納品してくれるかわからない供給に頼るよりかは自分達でどうにかしているのです。なので売れはしますがお金を儲けられるほど売れるかと言われればそうでもないという感じです」
はーん、貴重が故にってやつか。
もしかしたらそういう伝手があればお金持ちになれるんだろうけれど。
「それで、この反重力エネルギーはどれぐらい必要なの?」
「この大きさなら後2000個ほどでしょうか」
「………………最低でも2000体の敵を倒さないといけないのか」
「はい、ですがもっと奥へ行けば大量にとれる敵が出てくるので実際にはそこまで倒さなくて平気のはずです」
「じゃぁ様子をみつつ楽に狩れる場所で集めるか」
「了解」