058 文明の未来と、ハリボテの月の正体
数日後。
「それにしてもつくづく、陛下のお気持ちが前を向いてくださって、本当によかったですねー」
「そうだね。ヒルメ様のことだから、そこまで考えてたんだろうね。「いつまでも自分を責めてたらアカンよ」ってさ」
早朝のデイリーである。すずりちゃんと二人。霊客の皆様は、今日は空気を読んでか? 意識の奥の方に引っ込んでいらっしゃって、浮かび上がってくる気配がない。
今日はすずりちゃんの話し相手になってあげてねって、ことかな。
「うーむ、しかし、日本の霊態系の一番上が、最終的には「サザ○さん」的な「家族が一番!」主義が来るって、言われると納得しますけど……やっぱりどうにも、面白くないですねぇ」
すずりちゃんも、あまり家庭に恵まれた方じゃないからな。
「ま、いまいち格好良くはないかな。お隣中国は、一番上は「天帝」だし、ユダヤキリストイスラムは、唯一神に近い何かだし。一方で日本は、一番上に「天皇」も「天照大神」もこないわけだからね」
「八百万の神々も皇室も、あくまでも分解者ってことですもんね。うーむぅ。「とりあえず親の生き方なぞります」っていう人達が、常に優位。やっぱりちょっと、面白くないですねぇ」
「たまたま産まれがよかっただけの人達の、結婚自慢出産自慢幸せ自慢は、聞いてて面白くないもんね」
「聞いてて面白くないっていうことがつまり、霊態系で優位に立たれているからって、ことなんでしょうけどね」
「そうだね」
「銀さん、今後のアニメは、どうするんですか? 「サザ○さん」的なもの、やるんですか?」
「うーん、一応そのつもり」
学者肌の伏羲陛下が、今度は中国史を勉強したいとご所望されるものだから、読書漬けの日々から、なかなか抜け出すことができないのだが、いい加減アニメも再開しないと。
「銀さんの気持ちは、大丈夫ですか?」
「俺のこと心配してくれてるんだね。もちろん、俺にホームドラマなんて、やれない。俺は「家族」の表現ができない。……なんだけど、いや、だからこそ、やれる表現あるかな?って思ってる」
「と、いいますと?」
「「安心できる棲家」っていうのは、動物たちだって、必要なわけだ。むしろ、常に食うか食われるかの日々な訳だから、人間よりも切実かもしれない。人間は、家庭を持って家族と生活してるけど、それは霊長類は未熟な状態で産まれてくるしかない、産まれてきてすぐに立つことができないっていう、動物としての弱点が理由なワケだよ。哺乳類、鳥類、あとは蟻と蜂。それぐらいかな? それ以外はさ、産まれてきたときから、一人ぼっち。むしろ、卵のときからサバイバル。つまり、全ての生物が「家族」を必要としているわけじゃない。
一人ぼっちでも穏やかで安心して眠れる場所。それが「棲家」。そういう表現だって、共感してもらえると思うんだ」
「なるほど。「家族が一番!」の他に「我が家が一番!」がありますよってことですね」
「うん」
「そうか……よかった。私と翠菜じゃダメなのかなって、ちょっと思ってたんですよ」
「いや、そういう訳じゃないよ。それ以前に、「家族以外の幸せ」を考えてみたいっていう、気持ちがあるんだ」
すずりちゃんと翠菜は、俺にこう伝えたいわけだ。「私達、家族ですよね?」って。「私達とこれから幸せになりましょうよ?」って。
勿論そうだ。そうなのだが、俺自身がいまいちそういう心になりきれないところがあって、二人をやきもきさせている訳だ。
申し訳ない。別に二人に不満や問題があるわけでは、ないんだ。
「俺、清掃会社で仕事してたじゃない。年配の女性……つまり、おばあちゃんね。大勢相手してきたんだ。いろんな人いたんだ。結婚しそびれた人。結婚してたけど旦那と別れた人。旦那さんに先立たれた人……国民年金だけじゃ生活できない人も少なくなかったし。「おひとりさま」が大勢いた。うん。家族と一緒に暮らしてる人の方が少なかったかな。家族に恵まれなかったのは、俺だけじゃなかったんだ。むしろさ、「最後はみんな、おひとりさま」。そっちの方が、今の時代多いんじゃないのかなって、そう思ってる」
「今現在家族に恵まれてる人達も、いつかは「おひとりさま」になりますよって、言われてみれば、そうですね」
「そんなおばあちゃん達もさ、みんな若い頃があった訳じゃない。みんな「かわいい女の子」だった訳じゃない。そんな女の子たちがさ、「最後は不幸なおばあちゃん」っていうのは、寂しいことだと思うんだよ」
「銀さんは、「かわいい女の子」達の未来を見て、案じてくれているんですね」
「マンガ家めざしてた頃に、かわいい女の子描くために、女性の内面について、いろいろ考えてたからね。んでさ。「かわいいは正義」の日本に産まれて、若い頃ちやほやされて、結婚出産はどっちでもいいんだ。どっちにしろみんな歳をとるよね。歳を取ってさ、「バァさんは用済みだ」はさ。ちょっと酷だと思うんだ」
「ええ」
「清掃会社でもさ、おばあさん方がさ、ケンカばっかりするんだ。俺なりに、できるだけ丁寧に、一人ひとりの人格、尊重して接するようにしてたんだけど、みんな、俺相手に長話するの。ずっと誰かの悪口。みんな辛いんだ。「年老いた自分と一緒に生きていく」ことが、辛い。かといって、自殺もできない。そんな辛さを、肌で感じる毎日でさ」
「なるほど……銀さんは、向き合ってくれてたんですね」
「あくまでも俺なりに、だよ?……迷惑かけっぱなしの、どうしようもない人も、いっぱいいたけど。俺の人生は、こんなだったからさ、「一人ぼっちも、悪いもんじゃないよ?」って表現をやるのも、悪くないかなって、思ってて。「みんなで幸せになりました!」って表現をやれる人は、俺の他にたくさんいるだろうから」
「銀さんは、銀さんにしかやれない表現で、勝負しようと」
「そういう、言い方は良くないけど……人生の「寄り道」「脇道」「逃げ道」が、いろいろ許されている社会が、「豊かな社会」なんじゃないか。そうであればいいなって、清掃会社で働いてるときに、考えてた」
「そうですね」
「この間、慎神氏のところ言ったときに、彼が話してたんだけど、「野生動物に怯える日々を、火のなかった頃の夜の怖さを覚えている」って事を言ってたんだ。「文明」がなかったころの毎日だよね。とても怖かっただろう。……つまり文明っていうのは、「脅威に対する備え」なんだ。火に武器に住居に稲作にって。それでさ、中国大陸での脅威は、大型の野生動物達だった。そして日本では、自然災害。その土地その土地で、「一番の脅威」が違うから、「文明の在り方」が違ってくるのも、当然なんだ」
「日本が中国文明にとりこまれずに、独立した文明になったのは、虎の代わりに台風があったから、ってことですね」
「うん。……それでさ、そこからもうちょっと考えて、現代の、この時代の「大きな脅威」ってなんだろう? って考えたんだ……それは「老い」なんじゃないか。そう思ったんだよね」
「誰からも必要とされない。そして、「かわいい」の真逆……辛いですよね」
「「かわいいおばあちゃん」って雰囲気の人も、いたけどね。だけど、若い子からは、そうは見られない。「必要とされない」点は、変わらない……「老いに対する備え」を作り上げることができれば、日本文明を「もっとよい文明」に出来るんじゃないか。……最近、そう考えるようになった」
「10年間清掃の仕事を続けた、銀さんならではの視点ですね」
「中国だってインドだって、将来は日本よりも深刻な高齢化社会になる。そのときどうやって社会全体を支えるのか。人類は世界経済を1つにして回すことを覚えてしまった。世界のごく一部での局地的な戦闘が、世界中での食料不足に結びつく。遠い将来の中国インドの高齢化だって、日本にとって最早他人事ではないんだ……まだまだ先の話だけど」
「少子高齢化は、世界の中で、日本が先行してますよね。今先行しているうちに、「高齢化社会ならではの良識」を育てることができれば、それは世界全体にとって、大きなプラスになります……いやぁ、さ・す・が。 さすが銀さん。実に大局的な視点、戦略的思考じゃないですか」
「んまぁ、だけど……オオヒルメ様あたりに言わせたら、「そんなもんいらん。そもそも、長生きしすぎなのが、いかんの」ってなりそう」
「ん゛ん゛〜、それはねぇ……ほんの100年と少し前まで、確かに「人生50年」でしたけど……」
「真光アニキがやってる、尊厳殺人じゃないけどさ。自分の意志で、スパッと人生終わらせる。そういう時代になればね、また違うだろうけど。長生きは不要って言いながらも、人生早仕舞いの手段を提供してくれてるわけじゃないしなぁ、どの宗教も」
「タバコ、アルコール、薬物だって、世界から一掃されてしまったら、きっともっと苦しくなりますよね、社会全体が」
すずりちゃんと雑談しながら、久方ぶりに、彼女……影森 暦さんの言葉を、思い出す。
− どうして人は、自殺をしてしまうのでしょう? −
だったかな?
2度の世界大戦や世界各地のユースバルジが、結局のところ「ストレス溜めたネズミの共喰い」に過ぎないのだとしたら、自殺という選択も、人間の数を調整するための、「何者かによる意志」なのかもしれない。
「何者か」とは、一体誰なんだろう。……少なくとも、八百万の神々ではない。おそらくは、唯一神でも天帝でもないだろう。
集合無意識でも……なさそうなんだよな。集合無意識が自殺を促すのなら、もっと大規模な集団自殺など、起こっているはずだ。
以前の俺は、「人間らしい生命の終わらせ方」を考えてみればいいんじゃないかって、そう噛み砕いてみたけど、今のところ、とてもそんなもの考えつかない。
「そもそもさ、人間が簡単に死ななくなったっていうのが、この100年の、人類の歴史の中でのごく最近の話なんだよね」
「家族や仲間が簡単に死んでしまうのが辛くて、悲しくて、人々は神々に祈るようになって、宗教が生まれた。簡単に殺されないように、様々な脅威から身を護るために、文明を興した。……しかし、宗教も文明も、「人間が余る」事態を、考えてこなかった……現代は、そんな過渡期なのかもしれないですね」
「隠神道と八百万の神々……つまり、花都香先生やオオヒルメ様達は、長期的には、「人間は自然減に任せる。少数の高い唯存律を持った優秀な人材だけで、日本文明をまわす。ロボットやAIが発達するまで、海外との連携強化でもって凌ぐ」って、そういうスタンスだよね?」
「そうです。そして、世界の各文明……特に中華文明との、宗教的・文化的格差を埋めて、若くて優秀な人材を、日本に連れてこようとしています」
つまり隠神道・彩命術師としても、高齢者は放ったらかしだと、そういうことだ。
「「人間が簡単に死ななくなって、そのために人間が余ってる」って状況が、最近だけに限られたトレンドなのか、それともこの先ずっと続くのか。それが分からないね」
「「人類が宗教を必要としなくなる。神に祈らなくなる」のは、20世紀だけのトレンドでしたね。中国の神さまですら、戻ってこようとしてるんですから」
「そうだね。ちょうど、抗生物質を過信してた時代だけだったね。……やっぱり、神さま=腸内細菌なのかな?」
「結局のところ、「そんなもん」かもしれないですよね。日本の霊態系の最上位が、「サザ○さん的ななにか」だったくらいですし」
「信心深い人と、無宗教でいられる人がいるのも、それで説明できちゃうもんね。ヤク○ト飲んでる人と、ペニシリン打ってる人。……微生物学の発展に期待だな」
「この間、翠菜に教えてもらったんですけど、最近の研究で、植物だって互いにコミュニケーションとってるらしいってことが分かってきたそうですね。預言者もシャーマンも、お腹の中の菌たちが人間の脳に干渉してトランスを起こして、「天の声」を届けているだけなのかもしれないですよね」
「だとするとさ、神さま=腸内細菌だったら、その神さま方だって、自分の宿主がいきなり自殺するのは、困るよね?想定してないよね?」
「腸内環境が健康な人は、自殺したがらないと思いますけど……いや、そうじゃなくて……神さま方としても、「自殺はNG」にしておきたいと」
「そうそう」
「つまり、どの宗教も、自殺を促す方向への働きかけはしない。それはつまり、「年老いてから苦しい」状況は、この先も当分続く。そういうことですよ、銀さん」
「「老いの良識」を考えておくのは、無駄ではないかな?」
「はい。ヒルメ様が無関心だからって……いえ、無関心だからこそ、だれかが年配の方々のこころのケアを考えていくのも、間違いではないですよ」
ふむふむ、なるほど……。方向性は間違ってなさそうかな……さてそれでは、次のアニメは、どうするか……。
あ、そうだ。
「そうそう、すずりちゃん、クリスマスカードと、年賀状の進み具合は、いかがですか? 俺、全然、お手伝いできてなくて、申し訳ない」
「いえいえ。「昭和の精算」っていう大仕事があったんですから、そっちが優先ですよ。えっと、クリスマスも年賀状も、イラスト+定型文のプリセット物を、3種類ずつ制作しました。5枚で1000円、10枚で1500円。送料考えると、ちょっとお高いですかね」
「手書きなし?」
「手書きなしです。もちろん、今まで通り、手書きのオーダーも受け付けますけど、手書きは今回少し、価格を上げさせてもらいました」
「あれかな……手書きオーダーの値上げをしつつ、プリセット印刷のセカンドラインを用意して、2ラインの展開にしたと」
「はい。恵史郎君や翠菜とも相談したんですけど、クリスマスやお正月は毎年来るじゃないですか。恒例行事はプリセットにして、手書きのメッセージは、結婚のような「人生一度きり」のイベントに特化する方向に、持っていったらいいんじゃないかって」
「手書きメッセージのレアリティを高めるってことだね」
「クリスマスも新年の挨拶も、イン○タで十分じゃないですか。「あえて葉書」にするんだったら、ボールペン字でいいから、ご自分で一言書いてあげるほうが、送る人も貰う人も、心に残ると思うんですよ」
「結婚の挨拶だったら、折り目を正して誠意を込めて、きちんとしたものをって気持ちがあるだろうけど、年賀状はね。下手くそだからどうってないもんね」
「はい」
「うんうん。大変よろしいかと思います……そもそも恵史郎や翠菜と相談しながらやれるんだもんね。心配いらないよね」
「いえ、銀さんに絵心の伸ばし方を教わったからこそ、こういう展開ができるんですよ。それに、若冲先生もついてくださってますし。そもそもは、銀さんのおかげです」
「いえいえ、とんでもございません……水墨画イラストは、どう?」
「来年は、うさぎ年。それで、鳥獣戯画のウサギさんに、昨今の世相を反映させた小芝居をさせて、イラストにしました……あんまり水墨画水墨画してないんですけどね。若冲先生によると、「どうせ葉書もちっちゃいんやし、ウケを狙ったほうがええと思う」ってことで。水墨画要素は、ほんのりでいいでしょって。なので、イラストとしては、大したことないんですよね」
「小芝居というと?」
「「節電」の張り紙した部屋のなかで、ものすごく厚着してスマホ見てる、ウサギさんとか」
「干支の動物を使ってホームドラマを展開するのか。いいね」
「水墨画の技法を使った和風のタッチと、現代を風刺したシュールさが合わさって、ウケるんじゃない?って、希姫さんや繭さんからの評価もよかったです……結構、手応えはあります……私、こんなことできたんだーって、自分でもびっくりしてます」
「いいと思ういいと思う。ちょっぴり一滴だけ毒を垂らしてね、基本は健やかに穏やかに。さすがだね」
「サザ○さん路線こそ、日本の人々が一番に求める「文明の恩恵」なんですもんね。銀さんたちが考えてる「昭和の精算」に、タダ乗りさせてもらってる訳です」
「うんうん。いいよいいよ。どんどんその方向性でやってよ。俺のアニメチャンネルは、ウケ狙いできないからさ。その分すずりちゃん達で、おいしいところ持ってちゃって」
「ありがたく、頂きます……翠菜も翠菜で、最近アイデアが深まったそうで」
「そうなの?」
「中国の神々が、東京に侵略してくるくらいが、面白い。「100年前の報復だ!」って感じで、攻めてくる。 なんだけど、向こうは信仰細ってるから、大したことやってこれなくて、しょーもないイタズラレベルのことしかできない。向こうの神様たちが投げつけてくるいたずら心の塊を、穏やかな心で中和してあげると、ガチャのアイテムに育つ。……そんなことを考えてるそうです」
「うん。俺が中国神話の勉強に使った本、翠菜にも貸したんだ。なんか、気に入ったらしくてね。……てかさ、「山海経」って古い時代の中国の、トンデモ妖怪図鑑なんだけど、図画が豊富でね。チョコチョコ、現代にも通用するデザインがあったりするんだ」
「私も翠菜から聞きました。翠菜がこう言うんですよ。「刑天先生いいよね! まーくん様にぴったりだよね!」って」
「あぁ。刑天先生は、ヤバい。あのシュールさは、ヤバい。あの身体に、将門様の首が乗ったらって思うとね。なんかこう、神保町がすごく賑やかになる気がする」
「私は古代中国と言えば「王羲之」で、「山海経」は名前しか知らなかったんですけど。翠菜には刺さったみたいなんですよね。神々でありながら、ちょっとだらしないところがあって、洗練されてなくて、だけど悪意が宿ってなくて、敵役として最適って、ことらしいんですけど」
「いいんじゃない? 共産党政権の宗教弾圧に嫌気が差した中国の神々が、御茶ノ水の神農様のツテを頼って、神保町に押し寄せてくるって、そんな世界観」
「う〜……それでですねぇ、翠菜は、「お姉ちゃんが水墨画調で、モンスターデザインやって!」などと言ってくるんですよぉ。どう思います?」
「うん、いいんじゃない? コンシューマーでも、メインのキャラデザと、モンスターデザインって、担当別だったりするし」
「銀さんは、賛成なんですか?」
「賛成」
「嫌ですよ! ゲームのキャラデザなんて、私には無理です! そこは銀さんがやってくださいっていうか、翠菜がやるんじゃないんですか!?」
「ああでも、中国の神々を古代のデザインで出すんなら、やっぱり水墨画調のほうが、面白いよ。神保町舞台にしたら、なおのこと」
「い〜や〜あぁ〜! 無理です〜! 娯楽コンテンツでウケを狙いに行くとか、私の性格じゃぁ無理ですよぉ。もう銀さんだけが頼りなんです! 翠菜は、美羽さん希姫さん繭さんを味方につけて、恵史郎君までそそのかして、外堀を埋めて、私に圧をかけてくるんです。助けてくださいよぉ、銀さぁん!」
「う〜ん、でもさぁ、面白いと思うよ? 中国大陸が霊的に荒廃しきって、神々が暮らしていけなくなって、仕方なく東京に「難民」としてやってきたけど、東京は東京で霊的な汚染が進んでて、そのままじゃ暮らせなくて、日本の神々も困ってて、肝心のアマテラス様は、「かわいい」にしか興味がなくなってて仕事しない。こりゃダメだ。なんとかしないとって、神農様が主人公になって始まる物語。少しずつ、霊的な汚染を改善して、霊力を取り戻して、仲間を増やしていくんだ」
「あ〜確かに、そういう物語なら、日中の相互理解が進むかもしれませんねって……ですから! 私じゃ無理ですって!」
「あはは。まぁ、ちょっとずつね、考えていこうね」
「い゛〜 や゛〜 で 〜 すぅ 〜 よぉ!」
とまぁ、こんな感じで、平成生まれの若者たちは、概ね順調なようだ。大変に結構なことである。
すずりちゃんとのやりとりを続けながらも、頭の奥で考える。「穏やかに人生を終わらせる可能性は、本当にないのか?」
つらいだけ苦しいだけの老年生活を、本当に心臓が止まるまで、つづけないといけないのか?
神々はそれでもいいよな。お腹の中に棲み着いて、運ばれてきた食べ物の消化を手伝ってればいいんだから。
しかし、外側の人間は、つらい。終りが見えない。年金だけでは暮らしていけず、貯金はすり減って、身体は動かなくなって。
そして、若い世代からどんどん疎まれていくのだ。「早く○ねよ」って、どこからか声が聞こえてくる。そんな毎日。
少し前に、陛下はこうおっしゃった。
「どんなにささやかであっても、日本人として生きている以上、お国のためになってくれている。お国にとってはありがたい存在なんだ」って。
納税や社会保険料に限った話ではなくて、もっと精神的に霊的に、生命の循環、精神の循環に、貢献してくれているってことだろう。
あるいは、意識していないながらも、平和な日本で暮らしてくれることで、平和を享受してくれることで、大戦を生ききった方々の大変なご苦労が、報われていくのだろう。
それなのに、邪魔者扱い。だけどそれも、仕方ない。ぶっ壊れた母親と暮らしてたから分かるけど、「介護」の問題は、綺麗事では語れない。
排泄まで一人でできなくなると、本当に大変。言葉で言っても伝わらないし。
人間としての思考ができなくなってしまっていて、まるで動物なのだ。
?
いや待て……そうか。
動物でいいのだ。知能や身体能力が限界なのに、最後の最後まで「人間として扱う」から、無理が出る。
中国社会を見習って、「ホモ・サピエンスという動物」として、扱えばいいのだ。
さすがに野生動物としては無理だろうけど、ペットというより、高級ブランド鶏の飼育のイメージ。
「一人の市民」としてバラバラに生活させるより、一箇所に集めた方が手間もコストもかからない。排泄だけ衛生的に処理できるよう配慮して、あとは一人ひとりがストレス溜めないように工夫して。
動物としての高齢者・要介護者の「安心安全な棲家」。それを考えてやればいい。
どどん!って、一箇所の開けた場所に、一定の人数入ってもらって、最低限のプライバシーを保証しながら、エリア内の好きな場所で寝起きしていい。
実際、荒川土手のホームレスは、ダンボールとブルーシートで、そういう生活してるしな。
排泄や入浴が大変なので、もう服も着なくていい。一人で脱ぎ着したい人だけ、着衣してもらって。エアコン完備で、寒くないように。尊厳面と衛生面に、十分に配慮して。
もちろんもちろん、現代の倫理で考えれば「論外」だ。人の尊厳をなんだと思ってるんですか!?って、大炎上だ。
宗教やモラルウェアをどう展開しても、今の時代では、全然無理だな。
だけど、遠い将来を視野に入れて、頭の片隅に入れておけば、なにかの拍子に、話が進むかもしれない。
「アダムとイブが知恵の実を食べる以前の日々に、戻ってみませんか」って、そんな物語をそえて。
中国大陸で大規模な社会変動が起きて、数千万人の難民が日本に押し寄せてくるとかな。
絶対に起こらないとは、誰にも言えまい。
よかった。頭の中がスッキリした。
どうして人は自殺をするのか?
答えは、「現代社会のホモ・サピエンスには、動物として生きるという選択肢がないから」だ。
様々な事情(経済的なものだったり病気だったり、あるいは精神のトラブルだったり)により、「一人の個人」を続けられなくなった人間に、「動物に降りる」という選択肢がない。
「一人の個人」を続けられなくなって以降の生命維持が過酷なため、生存を諦めてしまうのだ。
ホームレスやってる人は、いるところにはいるけど、野生動物やってる訳じゃない。ハトやネズミを捕まえて食べてるわけじゃない。
空き缶集めてお金に変えて、食べ物を買ってる。炊き出しボランティアの支援を受けてる。
つまり、「人間として生きている」。
そんなホームレスの方々を、現代人は、少々の後ろめたさを感じつつ、見て見ぬふりを決め込んでいる。「お可哀想に」っていう想いを押し殺している。
(あるいは、一部の団体で、支援したりしてる。)
野生のカラスやハトを見て、「可哀想に」なんて、誰も思わないのに、である。
本当に、人間が動物になることは「可哀想」なのか? 単に、動物としてのホモ・サピエンスに適した生活環境を、用意できていないだけでは、ないのか?
もちろん、一通り社会生活を送ることの出来る個人を、すぐに動物扱いしろ、ということではない。
そうではなくて、一人の人間が生命活動を終了させるプロセスに、もう1ステップ、段階を用意しましょうってことだ。
あるいはもっと、2段でも3段でも、ステップを用意してもいい。
「少しずつ動物に戻りながら、みんなで一緒に暮らしましょう」
そう言ってあげるのだ。
一人の人間が個人としての社会性を維持するには、多くの手間やコストがかかる。
食事、歯磨き、入浴、洗濯、ゴミ出し、排泄(重要!)、生活用品の買い出し、掃除、そして仕事。
製造業が海外に持っていかれて、外国人労働者もやってきて、「誰にでも出来る仕事」はどんどん減っている状況で、「個人としての社会性」を維持するハードルは、実に高くなってしまった。
ほんの僅かなアクシデントで社会性を維持する条件を欠いてしまった個人に対して、社会が用意している選択肢が、少ない。
暗に、早期退場を促してるフシまである。まるで、少し壊れただけなのに買い替えを強いられる、家電製品みたいだ。……それもきっと、「一億総消費者」化の影響の一つなんだろう。
一方で日本では、「生きて捕虜の辱めを受けず」って美意識もあるからな。
「動物として生きられる環境」が用意されたところで、それでも自殺を選ぶ人は、いなくならないだろうな。まぁそれはいいや。
とにかく、現代社会の苦しさの理由の一つは、コレだ。
「個人としての社会能力」の維持が難しくなる時期と、「肉体の生命活動が終了する」時期とが、遠く離れてしまった。
「社会による残酷な飼い殺し」の期間が、長く続く。 さらに「一億の消費者」が、絶えず憎悪を向けてくる。
誰にでも出来る仕事が少なくなっているのは国際社会の変化によるものなのに、「ニートでいるのはソイツが悪い」と全部その人のせいにする。
消費者として会社に居座り、マウントとっては難しい仕事は他人に押し付け、「鬱は甘え」と大口を叩く。
やってらんないですよね。死にたくもなりますよね。
それでは、なにができるだろう?
2つの選択肢があがってくる。
1つめ。「個人としての社会能力」の喪失が認められた時点で、死を選ぶ。自殺か、第三者による尊厳殺人。自殺も尊厳殺人も、現代では犯罪だ。これを合法化してしまえばいいのではないか。
2つめ。さっき考えたように、社会能力喪失後は「動物として生きられる環境に移って生活する」。仕事ができなくなっても、一人で排泄できなくなっても、衣食住に困らない。生命の心配をしなくていい。犬やポニーやヤギ・ヒツジ? 年配の方々と仲良く暮らせる動物たちも、一緒に生活してもらって。
その代わり、人間らしさは諦めてもらう。生存権を除いて、人権の類は、没収。……仮に名前をつけておこう。「サピエンス動物園」。
そしてこの2つのシステムは、両立させることが出来る。両方を用意して、好きな方を選んでもらうことが出来る。
しかし当然ながら、この2つの選択肢は、今後当面、日本社会では採用されないだろう。「一人一票」の民主主義国家では、無理だ。何も考えられなくなってる高齢者が大勢いたほうが、政権運営は楽なのだから。国際社会からの反発も、強いだろうし。
しかし世界には、「非民主主義国家」が、あるわけだ。
中国やイスラム国家がこんなシステムを採用したら? そして「反アメリカ」で結束したら?
中国に覇権を握らせるのは絶対阻止したいだろうから、欧米諸国も、そして日本も、追従せざるを得なくなるだろう。
果たして、そうなるだろうか。
俺は、そうなると思う。
なぜなら、世界の歴史を動かしてきたのは、いつだって偉人や天才たち、つまり「みんなと同じ」であることをヨシとしない何者かであったからだ。名もなき凡人は、国を興したり戦争始めたりしない。既得権益にしがみついて、社会を消耗させて、反発を買って地位を奪われ、処刑される。
たまたま恵まれた家に生まれただけの名もなき凡人どもに、いつまでもいいように利用され続けるほど、人間は愚かではないのだ。
昭和の中国人民が、関東軍に敗けなかったように。
それにしても……どうして、俺はこんなことを考えてるんだっけ? 別に自殺をなくそうなどと考えていたわけではなかったはずだが……。
そうそう。影森さんからの宿題だったのだ。どうして人の人生に自殺という終わらせ方があるのか、考えなさいってことだったのだ。
よーし、考えたぞー。影森さーん、いかがですかー?
「……どうかしましたか? 銀さん?」
「ううん、なんでもない。ごめんね、すずりちゃん。黙り込んじゃって」
俺の頭の中だけで、影森さんに語りかけてみたが、返事はなかった。
当然といえば当然か。だけど、最近俺の頭の中、いろんな御方が出入りしてるからな。影森さんも呼べば出てくるかな位に考えていたのだが。
ええと、最後に会ったのは、俺がすずりちゃんと出会って、神保町に暮らし始めた頃だったよな。
夢の中だったけど。
影森さん……何者だったのかな。今思い返せば、普通の人間、普通の女子高生ではなかったように思う。
この間見た夢も、すごくリアルだったし……そう。そもそも当時からなにかおかしかったのだ。
文化祭の後、影森さんと二人きりの教室でダラダラと雑談して、その後彼女は飛び降りてしまった。
慌ててベランダから校庭を見下ろすと、仰向けに倒れた影森さんから、ゆっくりと血が広がっていく……そんな景色をはっきり覚えてはいるのだが。
彼女に関する、その後の記憶がない。
クラスの全員でお通夜に参列したとか、彼女が座っていた机に置かれた花とか、泣きじゃくる同級生とか、そのような記憶が一切ない。
同級生が一人自殺したら、普通大騒ぎだろうに。
今になってみると、本当に現実だったのかどうか。
俺が通っていた高校は、台東区の東上野。当該エリアは江戸の吉原界隈とも近く、心霊な噂がポツポツ残る、昔から不幸な人死が多かった地域。
氏神神社は、すぐ近くにある歴史の長い稲荷神社(のはず。多分)。
高校そのものも戦前から続く都内でも古い学校で、震災も空襲も直撃だった。
高校に残っていた地縛霊か御霊映といった霊的存在と、氏神のお稲荷様が力を合わせ、当時から周囲とズレていた俺に、何かを伝えようとしていた。
きっと、そんなところではないだろうか。
少なくとも、ヨモコ様ヒルメ様伏羲陛下以上に、ブッ飛んだ存在「ではない」ことだけは、間違いないだろうから。
あの方々以上の存在など、いてたまるか。
影森さんは……俺に何を伝えたかったのだろう? あるいは、俺に何かやらせたかったのか?
……「この時代を撃ち落とす」。そんな事を言っていたような。
つまり、「この時代を終わらせて、新しい時代を迎えたいよね?」……そのような想いだったのだろうか。
俺としても、「今の時代」は、大嫌いだけども。
えぇっと、影森さんは確か……「温泉連れてけ」とも、言っていたような。
温泉行けば、答え合わせに彼女出てきてくれるかな。夢の中でもいいから。
「すずりちゃん」
「はい?」
「寒くなってきたからさ、近いうちにどこか、温泉行かない? デイリーがあるから、もちろん日帰りで」
「そうですねー。うん。今年は盛りだくさんでしたもんね。私も一旦リラックスしたいですねぇ」
「でもやっぱり、筆書きの仕事が忙しいかな?」
「もちろん、仕事はありますよ。ですが今回はプリセットのオーダーが大半になると思うんで、そんな大変にはならないはず。日帰りだったら、大丈夫そう」
「翠菜は入試のないヒマヒマJKだから、いや、いろいろ頑張ってるのは勿論知ってるけど、問題ないよね? 予定組んでみてもいいかな?」
「ええ是非! よろしくお願いします!」
よし。そろそろ紅葉シーズンも終了だからな。観光客も一段落するだろう。クリスマス前の平日に、日帰りで、秩父にでも行こう。
影森さんに会えても会えなくても、俺の見つけた答えと、俺の想いを伝えよう。
想いって、別に変なものじゃなくて、「俺だってこの時代は嫌いだ」って、そういう想い。
……あれから、そろそろ30年か。ルーズソックス履いてオラついていた同級生たちも、みんな今年で43歳。全員もれなくオバサンだ。
誰かと連絡とり合ったりSNSで繋がっていたりなど、もちろん一切ない。ちょうど携帯が普及するギリギリ手前でもあって。
俺以外の陽キャの皆さんも、同窓会などやらないだろうな。もれなくみんな、「こんなはずじゃなかった」って思ってるだろうから。
みんな、結婚できたのかな。子供は、授かったのかな。
子供授かってたとしたら、丁度ウチの翠菜ぐらいだな。これから大学生。これから就職。
自分のこれからより、お子さんの将来の方が気がかりだろうな。……大学進学のお金を用意できなかったりすると、辛いだろうな。
大学行けたって、その先安泰というわけではないんだけどな。
「一億総消費者」社会にあって、将来安泰の日本企業なんて、一切ないんだぞって言ってもいいくらいだ。
委託委託委託委託委託で、社内でマウント取り合うだけの先輩上司から、得られる学びなど一つもない。
「価値を産み出すとはどういうことか」考えることなく齢だけとって。
自分の市場価値を疑い始めた頃に、子会社出向やらグループ再編やらで、体よく会社追い出されてな。
そこでようやく、本当の「社会の荒波」にさらされて、気がつくわけだ。「20年のキャリアが何の役にも立たない。これじゃ使い捨てじゃないか」って。
そうなのだ。マクロな視点で見てみれば、陽キャも陰キャも、誰だって同じなんだ。「生命が終わるより早く、誰からも必要とされなくなる」。
いやいやいやいや、そうじゃなくて。
「死は誰にでも平等に訪れる」的な話は、別にどうでもいい。
そうではなく、数多くの落とし穴やハンデのある人生というゲームを、「満足してやり終える」には、どうすればいいだろう?
「生まれてきてよかった」「生きててよかった」。そのようなこころ。
うーむ。
「……すずりちゃん」
「はい?」
「ごめんね、ちょっと、心地のよろしくない質問、いいかな?」
「ええ、いいですよ。今日の銀さん、ずっと考え事、してますもんね。なんでもどうぞ」
「すずりちゃんのお母様。どうして自決なさったの?」
……本来ならこんなセンシティブな質問、するべきではないのだが、今の俺達の間柄なら、許してくれるかなと。
「?」
「うん、ごめん。急にこんな質問してしまって」
「さては銀さん……なにか、難しいこと考えてるんですね……えっと、とりあえずですね、私も母も、今は穏やかな気持ちでいます」
「はい」
「だから、深刻にならずに、聞いてください」
「はい。お気遣い、ありがとう」
「結論から言うと、極めて彩命術師的な理由からだったんです。苦しかったとか不幸とか、そういうことではなく。そして今になってみれば、必ずしも必要な自死ではなかった。……何を考えていたかと言うと、私の……「文代すずり」の唯存律を、高めようと考えてたんです」
「親子二人で仲良く神保町で暮らすより、すずりちゃん一人放り出す方が、術師としての己を高められると?」
「はい……母が亡くなってから、まだ10年経ってないですか……当時はまだ「夢の産屋」と「La Marie du Ciel」やっていた頃ですね……恵史郎くん、七瀬さん、美羽さん、希姫さん、繭さん、真光さん、凛音さん……彼らが中心になって、ホテルとパティスリーを運営していたんです」
「お母様は関わってなかったの?」
「母の性格的に、接客業向かなかったのと、美羽さん希姫さん繭さんが、彩命術師の一員に加わることが、かなりイレギュラーで。お三方は、先祖代々神社の家系では、なかったんですけど」
「三人とも、「デキる」もんね。唯存律高いのかな? 表立って仲悪いまでいかなくても、暗黙の力関係と距離感が、あったってイメージかな」
「私もはっきりそういう話を誰かから聞かされた訳じゃないんですけど……ただ、隠神道の流れとして、美羽希姫繭のお三方の加入は大きくて。……はっきり「以前/以後」ができるんですね」
「ふんふん」
「母は、神保町の霊的環境を保つ……神保町の良識を守る。……それだけで精一杯だったんです。……私と翠菜の二人でやっているデイリー……霊想結界ですね。これは、神宮林の代わりなんです」
「デイリーのルートに、都内の有力神社、だいたい収まるもんね。神農様のお社まで入ってるし」
「はい。ですが、お伊勢や代々木のように、広大な森に囲まれてないじゃないですか。境内狭くて、木も少なくて。霊的に細いよね、心配だよねってことで、母と椿姫さまで考えて始めたことで。それは間違いでないと、思うんですけど」
「エリア内の神社に勤める神職の方々や、参拝客の皆さんのこころが、穏やかになるようにっていう、配慮だよね」
「はい。間違ってない。そう思うんですけど……問題があって。「お金にならない」。隠神道は、文字通り社会の表舞台には立てないので、宗教活動とは別に、生計を立てないといけません。今でも、ユメツナギノオホミタマの経営以外にも、別に不動産収入もあるそうで、すぐに困りはしないんですけど、だけどないよりは、あったほうがずっといい。そして「夢の産屋」と「マリエデュ」は、すごく上手く行ったんですね」
「あの三人がいい結果を出して、相対的に、お母様の立場が弱くなってしまった」
「椿姫様も七瀬さんも、「神保町は先々絶対に重要な地域になるから、神保町に専念してくれてて、構わない」って、ずっとおっしゃっててくれてたんですけど、母としては、不本意だったんでしょうね。……それに、美羽さんにはヒルメ様が、繋がってるじゃないですか」
「そうだね……すずりちゃんのお父様は、ヒルメ様と会わせてもらえないのを無理にお会いして、激ギレさせたんだよね。一方鈴懸さんとはツーカーだったと」
「母の家系は「月護」や「花都香」ほど古くはないんですけど、それでもここ何代かはずっと隠神道だったんです。なのに、美羽さん達に、全然敵わない。その上さらに、霊錠結界の構想もスタートして。あれは術自体は椿姫様ですけど、構想は美羽さん達なんですよ。山手線の内側まるごと、鎮めちゃえ!ってことで」
「先祖代々務めあげてきたのに、ポッと出のねーちゃんに、あっさり追い抜かれてしまった」
「もちろん誰も、母のことを責めません。ですけどね。真面目な人ってやっぱり「自分で自分を責める」ものじゃないですか」
「そうだね」
「神保町は神保町で、東西冷戦が終わって、右と左の思想対立がなくなり、さらにはネットの普及も進んできて、アナログ書籍の必要性も、古書店街の存在意義も、低下してしまいました」
「だけど今回、助かったよ? 中国神話の研究書も溥儀氏の自伝も、もう古書しか出回ってなかったし。やっぱり神保町は、必要だよ」
「はい。ありがとうございます……今回、ちゃんとお役に立てましたね……ですが当時がもう、私と母にとってはどん底で。まだハンドメイドマーケットでグリーティングカードをオンライン販売するってこともしてませんでしたし、ネットではSNSも動画サイトもまだまだで、ブログと匿名掲示板。無責任で乱暴で汚い言葉だけが飛び交う世界でしたよね?」
「そうだね。今はどんなに強い言葉を並べたって、動画や写真には敵わないからね。ネット上の「汚い言葉」は、すっかり勢力弱くなったよね。だけど当時は確かに、言葉を大切にする人にとっては、厳しかった」
「母のなかで、「このままじゃいけない」という危機感ばかり、大きくなっていったんです。そして母は考えました。「なぜ、私はあの三人のようになれないのか?」と」
「考えた結果、出た答えが、唯存律?」
「はい。美羽さん希姫さん繭さんのお三方は、なんの運命のいたずらなのか、三人とも子供の頃から波乱万丈の人生で、唯存律高いんですよ。重たいものを掘り返しちゃうので、ここではお話しできませんけど」
「うん。俺の見た感じ、繭繭さんが、一番ヤベー感じする。まだ20代で、あの母性は、普通ありえないでしょ」
「ですよね。まぁその話はまたいずれ……で、母はあの三人のなかに、自分に足りないものを見出したんですね。それで、どうやったら私達の唯存律が高くなるのか、考えて、試行錯誤して」
「その結果って事?」
「そうです。仏教系でやっているような修行してみたところで、効果少ない。もっと本質的に。ソシャゲで言うなら、レベルアップではなく、限界突破。そのために、こう考えたんです。「すずりのために、私がここでいなくなった方がいい」」
「……気位の高い、お方だったんだね」
「母にとっては、「彩命術師として、神保町、そして日本国へ貢献すること」こそが、己の生命よりも大切なものだったんです。己の生命は、そのための手段に過ぎない。……母は、そういう人だったんです。コトが終わって、私達にとっていい意味で想定外だったことは、母の御霊が、私の中に残った事。結果として、2つの身体が1つに減った。それだけで済んだんです。……やっぱり、私達からすればですね。いくら気位高くいてみせたって、世の中やっぱり「結果」ですよ」
「んまー確かに、そうだけれども……七瀬さんや花都香女史からしたら、「そんな頑張んなくても、よかったのに」ってところでしょ?」
「そうですね。結果としては、みんなにかえって迷惑かけちゃった感はありますかね。言葉にはなってませんけど、母の死の責任が、間接的にはお三方に行ってしまうので」
「お互いに思いやることの良し悪しだよね。みんなよかれと思ってやってるのに、全体の幸せが大きくならないという」
「まぁウチの会社の人達はみんな、その辺割り切ってるので、銀さんが思うほど、気にはしてないですよ? みんな葦舟やってきてるので。「結局私は地獄に落ちる」ってこころでいるので」
「いい子ぶっても、もう遅いと」
「はい」
「そうだったんだね……どうもありがとう……なんかね。「どうして人は自殺するんだろう?」って最近なんか気になっちゃって。俺なりに考えてて、それとさ、「生きててよかった」って自分の人生に満足するには、どうすればいいんだろう?って、ちょっと考えがまとまらなくて」
「そんなこと考えてたんですね……ちなみに、母は、満足してます。自己満足ですけど、満足してます」
「そうなんだ」
「中華三皇神道の話、あったじゃないですか。中国の神々が帰ってくる。神保町を拠点にする。神保町が1000年前の平安京のように、魑魅魍魎で賑やかになる……それが、母の願う、神保町の姿なので」
「妖怪への恐れと、神々への畏れで、たっぷたっぷの、妖しい街だね」
「はい。……なので、「自分の人生に満足するにはどうすればいいか?」 私達ならこう答えられるんです。 自分の想いを、生きた証を、「誰かに託すことができればいい」」
「託す……」
「自分の子供でなくてもいいんです。あるいは、人間でなくてもいい。街でもいい。書物でも絵画でもいい。モノを通じて、遠い未来の誰かでもいい。自分の「唯」に繋がる想いを出力して、それが誰かに届けばいい。……神保町が霊的に潤ってくれる。そして神保町以上に、母が一番想いを込めたのは、翠菜の部屋に飾ってある「女の修行」です。私はもちろんなんですけど、翠菜は母の想いを、正面から受け止めてくれました。母の想いは、託された。だから、母は自分の人生に、満足しているんです」
「うん……うん……ミームだとか模倣子って言葉では表しきれない、もっと深いもの。その継承が叶ったんだね」
「私は……母から託された想いを、私の中で大事に守って、育んで、次の誰かに託したい……そう想って、毎日を生きています……だから、ですから……」
「うん」
「ゲームのキャラデザとかぁ! やりたくないんですよぉ! 銀さん! お願いですからぁ! 銀さんも止めるの手伝ってくださいよぉ!」
ムキーって、顔の真ん中に大きなバッテンを作り、両腕をブンブンまわして、俺をポカポカ叩いてくるすずりちゃん。
「いや、大変に素敵な尊いお話を聞かせていただいて、感謝してるよ? 本当にありがとうすずりちゃん! だけど、それはそれ! これはこれだから! 「想い」だけでは、お腹いっぱいにならないんだよ!」
「い゛〜 や゛〜 で 〜 すぅ 〜 !!」
「翠菜だって、「女の修行」のこころを、後世に残そうと、ソシャゲを考えてるんだよ? そのためには、中国の神々や妖怪たちが、妖しくうさんくさく蠢いていないとダメなんだ! そのために、神田川のドロドロした流れをずっと見て育ってきた、すずりちゃんの感性が欠かせないんだよ!」
「嫌です! どんなにまごころ込めても秒で消費されてくソシャゲなんか無理! 私はやっぱり「言葉」をやります! アナログがいい!」
「すずりちゃん、そこをなんとか! 俺も手伝うから!」
「そもそも! ゲーム内コンテンツは翠菜の担当でしょう! 翠菜がやりゃーいいんですよ! どうせすぐに消費されるんだから! 誰がやってもおんなじ! だから私はやらない!」
「でもさでもさ、グリーティングカードの表現のための引き出しが増えるかもしれないし、「あやしろビル」のための蓄えも、一気に増えるかもしれないし。ね!」
「いやぁあ!!」
そんなこんなであった。
ついうっかり、すずりちゃんに重い話をさせてしまったけれど、よかった。すずりちゃん元気。お母様も満足しておられるとのことで。
すずりちゃんのお母様のお心を伺って、改めて考え見直してみると、影森さんは、当時の俺に、こう伝えたかったのかもしれない。
「貴方の生命は、貴方のもの。好きに使って構わない。好きに生きて構わない。いつ終わらせたって構わない。自分の生命よりも、目先の幸せよりも大切な「なにか」のために生きたっていい。……どうか自由な、悔いのない人生を」
みたいな。
なお補足ながら。
単に唯存律を上げるためなら、親族の自死に遭遇するなんて大変な事、経験する必要はない。
創作をやればいいんだ。イラストでも、アニメでも。
世界でたった一つの表現を意識して、これまでだれもやらなかった手法で、自分の中の想いを形にする。それを誰かに見てもらう。それでいいのだ。
表現を繰り返すうちに、自分の意識が軽くなっていくのを感じる。ネットに飛び交う様々な敵対心が気にならなくなる。
なにより、精神の自由が手に入る。
大きなリスクを抱えて、クリエイターという職業につかなくてもいい。今の時代ならタブレット1枚あれば始められる。
音楽でもいいかもしれない。ただしなるべくなら、できることなら、一度「言葉」とは距離を置いてみるのも、有効かもしれない。
資源に乏しく、自然災害を克服しきれない日本にあっては、「先祖代々の蓄え、親の代までの貯金」だけで、生涯安泰な人生という訳にはいかない。
現在の優良企業でも、10年後20年後、どうなっているかは、分からない。
どんな時代に生まれたって、必ずや時代の変化に翻弄される。
「親ガチャ」は確かにあるけれど、どれだけ恵まれた家庭に生まれても、優位はいつまでも続かない。
日本人の大半が人生のどこかで「こんなはずじゃなかった」という虚無に飲み込まれる。
気がついたら無力な年寄り。それはみんな同じだ。
尊厳殺人なりサピエンス動物園なりの、苦しまない人生の終わらせ方を社会が用意してくれるのは、まだまだ遠い未来の話。
中華神道なり赤道・太平洋教会なりが本当に実現して、世界の生きがいがスムーズに循環するのも、ずっと先の話。
だけれども、今の時点で明らかなのは、皆様にお伝えしたいのは、
時代は変わっていく。これからも、どんどん変わっていく。
唯を持った心の強い人々が、自分たちの望む方向に、世界を創り変えていく。
夜空に浮かぶ綺麗な月は、いつの時代もハリボテだ。
みんなで一緒に学校通って。通った先で素敵な恋を見つけて。幸せな結婚をして、仕事と育児を両立させて。
「愛をお金で買う幸せ」は、「愛を消費して終わる幸せ」は、遠くにあるから綺麗に見える、ただそれだけの、ハリボテの月。
誰かが必ず、その月を撃ち落とす。
唯を高めた何者かが、「愛よりも尊い何か」をもって、撃ち落とす。
そういう事だ。
いつまでも幸せでいることなんてできない。人生のどこかのタイミングで、ほとんどの人が「目の前が真っ暗になる」。
かといって、単に神々に祈り続けていればよいかというと、そうでもなさそうだ。
我が国の最高意思決定主体であらせられる、某なんだなお姉さんは、本心からこのように考えている。
『日本に産まれて日本に死ぬ。日本の土に還る。これ以上の幸せ誉れ、一切なし! なんだな!』
あの御方にとって日本人とは、日本国を健やかな状態に保つための手段の一つであって、目的ではないのだ。
ニワトリのためを想って、養鶏場を経営しているのではない。
日本人もなー。なーんかイマイチなの増えてきたな。そろそろ入れ替えんといかんね。
ヤベェダリィウゼェだけほざいてりゃカッコエエと勘違いしてる子らよりもな、チャイナの若い子らの方が素直で勤勉みたいやし。
そのような御心である。
なので、あまり信仰・宗教をアテにするのも良くない。
あんまり熱心に信仰しすぎると、あちらの皆様はどんどん調子に乗って、あれやこれやと無茶振りばかりしてくるから。
さてここで。
一般の方よりも高い霊感を備え、八百万の神々のお声を聞き、国際社会の先々を見通すことのできる我々から、恐れ多くも少々のご提案を。
「生きるのがつらい、苦しい」ことがもしあったら、その時はなにかある。第三者視点で順調に見える人生でも、精神的に苦しい時は、何者かがあなたのこころを侵蝕している。
古くから付き合いのある、友人かもしれない。
会社の上司・同僚・部下のなかの誰かかもしれない。
あるいは、家族かもしれない。
一度立ち止まって、そんな何者かからは、「逃げる」ことを考えたほうがいい。
あなたのすぐ近くにいる、「こうするのが当然だろ?」「今までこれで上手くいってたでしょ?」ばかり押し付けてくる誰かは、あなたの人生の結果になんの責任も負ってくれない。時代の変化からあなたを守ってくれたりは、しない。
どれほど近しい関係の相手でも、「あなたの味方」では、ない。
唯存律を持たない霊的に貧弱な人間は、自分の責任で意思決定したり、何かを成したりすることができない。
「既成概念」「過去の成功体験」をトレスすることしかできない。
そして常に時代は変化し続けているわけだから、既成概念も過去の成功体験も、気づかぬうちに時代遅れになって、通用しなくなる。
そうなってからも、すがる何かを探して、大きな声のする方に流されて、体よく利用されて、捨てられる。そんな輩だ。
やつらに利用されるだけの人生であってはいけない。
あなたのこころを守れるのは、やはりあなただけなのだ。
とはいえ、現代社会はとても厳しい。人間が余っていて、少しずつ、減らしていこうとしている時代だもの。
人間を減らしながら、経済活動は拡大させよう。そんなできっこないことをやろうとしている時代だもの。
どこへ逃げても、変わらない。
逃げた先にも、味方がいない。何者かが寄生してくる。
また逃げる。次の場所にも味方がいない。何者かが寄生してくる。
また逃げる。次の場所にも味方がいない。何者かが寄生してくる。
また逃げる。次の場所にも味方がいない。何者かが寄生してくる。
また逃げる。次の場所にも味方がいない。何者かが寄生してくる。
そしていよいよ、逃げる場所がなくなってしまう。履歴書の職歴欄を埋められない。採用面接が通らない。
社会の荒波のなか、一人ぼっち。
俺はそれでいいと思う。それもやむなしと思う。
現代の企業活動は、遠くから眺めたら無駄と無理ばっかりだ。
「いらない人間」相手にモノを作って、過剰に娯楽を用意して、たっぷり広告見せて、とにかく金を消費させる。
その人が今後どうなるか、知ったことじゃない。
毎日3食ファーストフードで過ごしたら、毎日2Lコーラを飲んでたら、必ず健康を害することは、誰もが知っているけれど。
SNSや商業コンテンツがそのようなものではないと、1日10時間スマホをいじって、サブスク垂れ流しの映画を1日3本倍速で見て、精神の健康を害することはないと、誰が断言できるだろう?
案外存外、昭和の満州で阿片売るのと、やってることは大差ないんじゃないか。
「みんなやってることじゃないか! 日本人だけじゃないんだ! やらないと生きていけないんだよ!」
当時の関東軍の兵隊も、このように思っていたのかもしれない。
中国大陸の様々な利権を奪い合うババ抜きを欧米列強とやっていて、日本がババを引いたところで、他国が一斉に降りた。ババを持ってた日本だけに人道的責任が押し付けられた。
そんな側面もあったんだろう。
つまりすなわち、現代の「社会参加」(つまり仕事)は、いつ降りてしまってもいいのだ。
定年まで働こうとか、考えなくていいんだ。
社会を維持するためのエッセンシャルワークもあるけれど、席は少ない。働きたい金稼ぎたい外国人労働者に譲るので、構わないと思う。
ちなみに、そういう会社の現場責任者は、バブル育ちの無能経営者と、ルーズな外国人労働者に挟まれて、今すごくしんどいです。
そうやって、いよいよ定職にもつけなくなり、収入がなくなる。
自分の最期が、見えてくる。
ゴールではない、強制リタイア。
俺はそれでも、構わないと思う。
侵略先の中国で、現地住民に憎まれながら、阿片を売りさばく。やりますか?
そんなことに手を染めるくらいなら死んだほうがマシだって、そう思いませんか?
人間が余って余ってどうしようもない。そんな状況を、これまでの人類は経験してこなかった。
少なくとも日本では、そんな経験まったくなかった。
だから、現代社会でどう生きるか、歴史から答えを見つけることは、難しい。
ならば、自然界ではどうだろう?
一時的な環境変化で、特定の種が激増する。数年前ありましたね、イナゴの大発生。
ああいう事象は結局、自然減で落ち着く。多少生態系のバランスを崩しても、最終的には元にもどる。
大発生したイナゴ達は、冬を越せなかったりして、いつの間にかいなくなってしまう。
自然界をお手本にするなら、我々は野垂れ死にで、間違ってないのだ。
そう、間違っていない。自殺するので、間違ってない。
理屈で考えれば、自殺するので間違ってない。
残念だった。最早ここまで。
さぁあなたは、自ら生命を絶つことが、できるだろうか。
勿論、ここまで追い込まれてないなら、そのほうが素敵だ。
ブラックでない職についてます。誰かに寄生されてメンタル削られることもないです。
家族が支えてくれてます。必要としてくれます。とにかく子供の学費は稼がないとです。
親の介護があるんです。ボケてないし、まだ一人でお手洗いいけるから、そこまで辛くないし。
よかったです。
是非引き続き、支え合って暮らしていっていただければ。
そうではない方、いらっしゃいますか?
「おひとりさま」ですか?
どうしましょう? こころは決まりましたか?
首吊りにしますか? それとも、飛び込みにしますか?
さぁ、どうでしょう?
思い残すことは、ありませんか?
やり残したことは、ありませんか?
ここまで読んできて頂いて、リタイアを実行に移しておられない方。
心残りがある方。
やり残したことがある方。
その「心残り」こそが、「あなたがこれから成すべきこと」の、重要なヒント。
つまりは、その「心残り」こそ、あなた様の唯存律。
あなた様は、情報の塊ではないのです。複製品ではないのです。
魂を持った、万物の霊長の一員なのです。
その「心残り」は、複製された情報ではない、世界であなただけの、「唯一」のもの。
是非、その「心残り」と向き合ってみて、仲良くなってあげてください。
「具体的にやりたいこと」や「誰かに託したい想い」に、育つかもしれません。
「自分の人生に満足する」チャンスに、出会えるかもしれません。
『日本国民として産まれたからには、どれほどささやかな生涯であっても、日本の役に立ててくれている。日本にとって価値のある生涯なのです』
陛下は、このようにおっしゃってくださいました。
リタイアという終わらせ方でも(よほど悪質な犯罪など起こさない限りは)、日本国にとってはプラスなのです。
あとは、あなた様の御心次第。
あなた様が「ご自分の人生に満足する」ことができれば、あなた様の生涯は、あなた様にとっても日本国にとっても、お互いに成功なのです。
結果の良し悪しにこだわらず、誰とも比べず、御自身のお心を一番に、「人生の満足」を見つけてあげてください。
@@@@@
こらこらこらこら。私ら悪者にしたまま、まとめんといて! 違うでしょ! ちゃんとこまめに参拝してくれて、神棚飾ってくれる皆さんのことはね、ヒルメさん達、ちゃんと考えとるんよ?
いいかな? サピエンス動物園はね。チャイナさんたちが、一番相性いい。きっと世界で最初にたどり着く。私らもちょこちょこ手伝ってあげれば、いい感じの場所になる。
それでね、サピエンス動物園は、アダムとイブが追い出された、聖書で言う「地上の楽園」そのものやからね? 人間を引退して、たどり着ける桃源郷。
これや! 共産主義やなかった! これこそ、人類が理想とする世界なんや! って、世界中でみんな喜んでくれるの。
きちんとしっかり、作ることができればね。
もちろんいろいろ、大変だけども。
日本だけじゃぁ、たどりつけんの。民主主義やっとるし、欧米の皆さんにも配慮せんといかんし。せやから、チャイナさんと仲良くして、チャイナさんから、始めてもらうの。
知っとるよね? 日本人が外圧に弱いの。 他所の国で流行っとるもんは、取り入れないと気がすまない。
せやから、今ウチらが進めてるので、最短なの!
なのでね〜、今しばらくは、待っててほしいかなぁ〜。
分かった? 分からん?
やったらもっと、そもそもの話をしてあげる。
いいかな? 祈りとは、捧げること。自分の生命を「少しだけ」差し出すこと。
祈りの時間は、生き物にとって、一番無防備な状態を晒す時間。拍手して音を立てて、眼をつむって頭を下げて、考えを止めて、周りを気にしない。
目の前にヒグマが出ても、じっとして動かない。
動物としての生存本能の、危険回避本能の、一時停止。それが祈り。
きちんと祈ることのできる人は、目の前の相手の「警戒心」を解くことが出来る。人の話を誠実に、聞くことができる。相手の心を、正面から受け止めることが出来る。
それができる人は、世の中で孤立しないの。自分から一人になろうとしないかぎり、「おひとりさま」には、ならないの。
どこかで誰かが、必ず必要としてくれる。
「教義」や「お布施」が宗教やない。大事なのは、「祈り」。
だけど一つだけ、問題があって。
卑しい輩、悪いやつらに利用されちゃうことだけはね、防ぐことできない。無防備になって、疑う心が弱っちゃう。
そういう意味では、「困ったときの神頼み」だけだと、やっぱちょっと危ないよね。騙されちゃう。
それなので、「逃げる」って選択肢は、残しておかんとあかんね。今の世の中。
はい。そんな訳で、立場上、あんまり無責任に「このように生きて」とは人様に向かって言えんのですよー。
せやけどですねー。
これからの5年、いや3年のうちに、世界の流れは、大きく変わります。これまでの20年より、大きく変わります。
私達は、そう見てます。それに向けて、準備してます。
もし興味があったら、それまでは長生きしていただけると、面白い「歴史の転換点」を見ることが、出来るかもしれません。
なんだな〜でした!
@@@@@
……よろしいですかね?
ここまでお付き合いくださりまして、まことにありがとうございました。
最後に、我々ユメツナギノオホミタマ一同、謹んでお祈りいたします。
時代の変化に翻弄されませぬように
日本というお国と、仲良しでいてくださいますように
穏やかで恵まれた、満足のいく生涯を送られますように
産まれてきてよかった。そのような想いが、永く寄り添ってくれますように
(※GIFアニメです。画像をクリック/タップして「みてみん」に移動後、画像最大化などしていただくと、少しだけ動きます)