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後日譚133.事なかれ主義者は諦めて席に着いた

 セシリアさんは妊娠したけど、まだ目立った身体的変化はない。だからいつも通りセシリアさんはメイド服に袖を通して、レヴィさんの後をついて回っている。

 レヴィさんはそんなセシリアさんが心配なのか、あまり走り回らなくなった。動き回りはするけど、それもゆったりとした歩調で、セシリアさんの様子を見ながらだった。


「あんなにお転婆になってしまっていたレヴィア様がこんなに大人しく……ずっと妊娠していたいくらいです」

「そんな動機で子どもを増やそうと思わないでね?」

「じゃあどんな理由だったらいいのですわ?」

「え? ……兄弟がいた方が良いんじゃないか、とか? ああ、でも異母兄弟がたくさんいるから必要ないかな」

「そんな事ないのですわ! 必要だと思うのですわ!」

「そうかなぁ」


 こればっかりは子どもたちが大きくならない限りはよく分からないよな。ああ、でもお姉ちゃんには困る事はないのかもしれない。

 周りで忙しなく動き回っているドライアドは赤ちゃんたちに興味津々だし、だいぶ歳は離れているけど遠くでパメラの相手をしてあげているピンク色の髪の毛がトレードマークの人族の女の子アンジェラもいる。

 ますます兄弟がいた方が良い、と思う事はないかもしれない。

 そんな事を思いながらせっせと自分の畑に魔道具を使って水をあげていると、ドライアドたちが何かに反応した様子で転移陣の方に向かって行った。


「ガレオールの所からなのですわ」

「んー、あんまりいい予感しない。ランチェッタさんは?」

「子どもたちと一緒にお昼寝をするって言っていたのですわ」

「おそらく和室にいるかと」

「なるほど……」


 どうしたものか、と思いつつも転移陣の方へ行けと主張してくるレモンちゃんを宥めながらドライアドたちが集まっている所へ向かった。

 僕たちがぞろぞろと移動する間にも転移陣の光が強くなり、向こう側から誰かが転移してきた。


「あ、やっぱり面倒事な気がする。見なかった事にする?」

「気持ちは分からんでもないけどよ、人の顔見て言う事じゃねぇんじゃねぇか?」


 ドライアドたちに囲まれてジロジロと見られている褐色肌の男性、キャプテン・バーナンドさんが眉を下げながら僕を見ていた。

 とりあえずドライアドたちに問題ないから解散するように伝えて話を聞く事にする。


「それで? 今回はどんな問題があったの? またサンレーヌ国がなんかちょっかいかけてきた?」

「いや、サンレーヌは特に何もしてきてねぇよ。内輪揉めをしている最中だからこっちにちょっかいを出す暇はないんだろうさ」


 あ、なんか余計な事を聞いた気がする。聞かなかった事にしよう。


「じゃあ何があったの? わざわざこっちに来たって事は結構重要な事なんだよね? ランチェッタさんは今お昼寝している頃だと思うからとりあえず用件だけ聞かせてもらえる?」

「いや、どっちかって言うと坊主に直接相談したかったから女王陛下はいなくても問題ねぇよ」

「僕に? 航海中の『天気祈願』はまだ先だったと思うけど……」

「どうやら坊主の加護の話がサンレーヌを経由してアドヴァン大陸とタルガリア大陸に広まったみてぇでよ、交易船が停泊している港に面会希望者が集まってきてんだわ」


 サンレーヌとのトラブルが起きてからもう半年くらい経つ。それまでの間に何度か魔動船はアドヴァン大陸にあるサンレーヌ国とガレオールの間を行き来していると報告で聞いていた。

 海の中の護衛である魚人たちが、全力の魔動船についていくだけで精いっぱいだという事や、アドヴァン大陸では世界樹の素材が出回っていなくて高値で取引されている事などは聞いていた

 ランチェッタさんには魚人の国アトランティアから相談されているとの事だったけど、それ以外は双方の大陸の珍しいものを取引できていて順調だって聞いていたけど…………どれの事だろうか? 考えられる厄介事が多すぎて予想できない。


「その中には厄介な奴もいてよ。護衛のエルフたちが対応してくれてはいるんだが、坊主に関係ある事だから一応耳に入れておいた方が良いんじゃねぇかって思ってきたんだ」

「そっか。子育てで忙しいから聞きたくない気持ちが強いんだけど聞いた方が良いかな?」

「聞いた方が良いのですわ」


 僕の横で黙って話を聞いていたレヴィさんは、魔道具『加護無しの指輪』を外していて、難しい顔をしていた。だいたいバーナンドさんが言いたい事は心を読んで理解しているようだ。

 だったらバーナンドさん本人から聞かないようにして、後からレヴィさんから聞けば都合がいいのでは?  と思ったけれどレヴィさんに「自分で判断する練習はしなくていいのですわ?」と聞かれると何も言い返せない。

 とりあえず話が長くなるとアレだから、といつの間にか近くにいたジュリウスにお願いして机と椅子を用意してもらい、固辞するセシリアさんを無理矢理座らせて僕も席に着いた。

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