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後日譚132.事なかれ主義者はほどほどにしたい

 ドワーフたちの国ウェルズブラの街と街の間は『天気祈願』の恩恵を受けていない所も多々あった。そのため、魔動車で雪道を進む事になったんだけど、魔道具『除雪雪だるま』で除雪をしておいてくれたおかげで何事もなく進めた。

 夕方前には主要な街を回る事ができたのは除雪してもらっていたおかげもあるけど、魔動車の影響も大きいだろう。だいぶ速度が出ていたので誰か轢いてしまわないか心配していたけれど、除雪した道はドワーフの兵士たちが監視をしてくれているおかげで今の所事故は起きていない。

 いちいち降りるのが面倒だったので、運転手のエルフさんに任せてそのまま転移門を通ってファマリアに戻ってきた。


「除雪雪だるまもその内使われなくなるのかなぁ」

「国境付近には『天気祈願』の依頼は来ておりませんし、今日のように街と街を行き交うためには除雪が必要な所もあります。しばらくは使われるんじゃないでしょうか?」

「そっか。使わなくなったら貰おうかなって思ってたけど、しばらくは無理そうだね」


 除雪雪だるまは集めた雪で大量の雪だるまを作ってくれる魔道具だったはずだ。

 これから子どもたちが大きくなって、雪遊びをする時には重宝しそうだと思っていたけれど、作ったらそのまま売っていたので手元に一つも残っていない。

 一個くらい残しておくべきだったかなぁ、なんて思いながら世界樹ファマリーを囲う結界と街との境界付近で止まった魔動車から降りた。

 出迎えてくれたのは大興奮しているレヴィさんと、その興奮状態が伝播しているドライアドたちだ。


「シズト! セシリアが妊娠したのですわ!」

「ですわですわ~」

「おめでただねー」

「そうだね~」

「今は部屋で大人しくしておくように言っているのですわ! 早くセシリアの元へ行くのですわ~」

「行くぞ~」

「お~~~」

「いや、君たちは入れないからね」

「え~~~」

「ケチ~~」


 ドライアドたちからブーイングを受けながら、レヴィさんに手を引かれるがまま走っていると、小柄なドライアドたちが僕に飛びついてきた。


「これでよーし」

「たのしみだねー」

「いや、走っている時は危ないから飛びつかないで欲しいな」

「れーもれーも!」

「レモンちゃんも止めて欲しいなぁ」

「れもん?」

「人間さんの言う事難しいねぇ」

「ねー」


 何も難しい事言ってないんだけどなぁ。

 そんな事を思いつつも、近衛兵の方々が開けてくれた扉をくぐって二階に駆け上がり、廊下を走っていると扉から出てきたメイドさんに「廊下は走らないでください!」と注意されてしまった。


「セシリアは部屋から出ちゃダメなのですわ~」

「大げさすぎです。まだ命が宿っただけでしょう」

「お腹の中にいるねー」

「感じるねー」

「れもーん」

「どういう風に感じるの?」

「新しい魔力を感じるのー」

「すぐに分かるよ? 人間さんは分からないんだっけ?」

「レモン!」

「そーだね、私たちが代わりに見つけてあげればいいもんねー」

「そのために引っ付いてないとだめか~」

「いや、そんな事はないよ」

「レモン!?」

「シズト、ドライアドたちと遊んでないでセシリアに注意して欲しいのですわ~」

「いや、遊んでるわけじゃないよ?」

「そうですね。戯れているだけですね。そんな事をしていないでレヴィア様に走らないように言い聞かせてください」

「僕から言っても走ると思うよ?」


 レヴィさんを止められる人なんてこの世にいないんじゃないだろうか? と思ったけど、実際僕が本気でやめてと言えばやめてくれる……と思う。たぶん。

 ……僕も時々走ってしまうので人の事は言えないな。


「シズト様も走るのをやめていただければ注意出来ますよ」

「あれ、声に漏れてた?」

「顔から漏れてました」


 相変わらず僕のお嫁さんたちは表情から僕の考えを読むのが上手いようだ。


「子どもたちの教育によくないから少しずつやめて行こうか」

「分かったのですわ」

「あと、レヴィさんが妊娠した時も好き勝手してたでしょ? セシリアさんだけ行動を制限するのはどうかと思うなぁ」

「仰る通りです」

「でも心配なのですわ!」


 レヴィさんにとってセシリアさんはお姉さんみたいなものなんだろう。

 心配しても当然だけど、その気持ちは僕たちもレヴィさんが妊娠した時に味わっているので甘んじて受け入れてもらうしかない。


「そういう訳だからセシリアさんはお腹に気を付けつつストレスをためないようにだけ意識して好きな事してていいよ」

「ありがとうございます」


 深々とお辞儀をしたセシリアさんを見て思う。

 ジューンさんとディアーヌさんもその内妊娠するような気がする、と。




 ただ、その予想は数日たっても当たる事はなく、オクタビア様がやってくる日を迎えた。


「回数を増やした方が良いかしら?」

「私はそれほど気にしてませんがぁ、お薬を使いますかぁ?」

「神様からの授かり物って言うからのんびりいこ! ね?」


 じゃないと僕が干からびるって。

 え、そうならないために薬があるって?

 いや、オクタビア様がいる間に昼も夜もずっと部屋に籠っていたら意味ないじゃん。


「オクタビア様も既成事実を作った方が手っ取り早いかもしれないのですわ」

「婚前交渉はダメだから! っていう未成年だし」

「こっちの世界じゃ成人なのですわ~」

「それでもダメなものはダメ!」


 いざ白紙にしたい、ってオクタビア様が思ったとしてもできなくなってしまうのは避けたい。

 そういう訳だから僕は今まで通り夜の営みを続ける事だけでまとまった。

 …………夜に向けて一服盛られたりしてないかちょっとチェックしておいた方が良いかもしれない。

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