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後日譚127.事なかれ主義者は集める事にした

 一通りパメラの部屋を片付けたら部屋を後にして、左に進むとモニカの部屋の隣の扉にはオクタビア様のネームプレートが掛けられていた。中は当然空っぽなので特に見る必要もない。

 その正面にある両開きの扉を開けると、他の人たちの部屋の数倍ある広さの部屋が広がっていた。僕の部屋を模して作られた部屋だ。

 パーテーションがないとこんなにも広いんだなぁ、なんて事を思いながら飛び回るパメラを放っておいて、正面にある両開きの扉を目指す。


「シズト様、この部屋は何にするデスか?」

「なんにしようねぇ」

「畳を敷いたらみんなで寝泊まり出来るデス!」

「あー、まあ確かに広さは申し分ないね」

「そしたら枕投げっていう奴をやるデスよ!」


 そういえば前枕投げをした時は、パメラたちはいなかったな、なんて事を考えながら扉を開くと再び廊下に出た。

 出てすぐの部屋はランチェッタさんの部屋だ。左に行けばレヴィさんの部屋があるので、反対方向に進む。

 こっちはシンシーラ、エミリー、セシリアさんの部屋が続いていた。専属侍女であるセシリアさんやディアーヌさんの部屋を彼女たちの主の部屋と離しているのは何かしら意図があるのだろうか?

 パメラに聞いてみたけど「忘れたデス!」と元気よく返事されるだけで何もわからなかった。


「シズト様、それよりもそろそろおやつの時間だと思うデスよ?」

「やっぱりそれが狙いか。……まあ、一階に行くついでに何か見繕って食べようか」

「エミリーがきっと用意してくれてるはずデース」

「エミリーは皆と一緒に栄人の様子を見ていたから厨房にはいないんじゃない? 適当に余っている何か貰えばいいよ」

「れもん!」

「そうだね、レモンちゃんのレモンもあるね」


 丸かじりは無理だけど。

 そんな事を思っていたけど、パメラは普通に丸かじりをしていてレモンちゃんと一緒に口をすぼめていた。

 ……こっちの世界ではレモンの丸かじりは一般的なのだろうか? いや、そんなわけないか。

 そんなどうでもいい事を自問自答しながら階段を下りる。階段の手すりなどもドワーフたちが協力して装飾してくれたおかげで渾身の出来栄えとなっていて、ちょっと触り辛い。

 一階に降りて、新しい部屋は素通りして厨房に向かうと、狐人族のエミリーが普通にいた。チャームポイントであるモフモフの白い尻尾はゆっくりと振られていて、触り心地の言い狐耳は僕たちが扉を開けた時にピクッと反応した。


「おやつですね、少々お待ちください」

「いや、自分たちでやるから大丈夫だよ」

「いえ、これは私の仕事ですから。座ってお待ちください」

「早くするデスよ!」

「シズト様より先に座るんじゃないわよ!」


 パメラは設けられていた椅子に座って、小さな丸テーブルをバンバンと叩く。

 エミリーはパメラに仕事を与えつつも有無を言わさない感じで僕に「どうぞ、お座りください」と言ってきた。

 主人を台所に立たせたくないタイプだろうか? そういえば夜遅くにつまみ食いをしようとした時もだいたいエミリーがいるんだよな。

 僕は助かるけど、そのせいで睡眠時間が削れるといけないからと最近はアイテムバッグの中に入っている焼き菓子などの非常食を食べるようにしているけど……それもいつの間にか補充されているからきっとエミリーがこまめにチェックしてくれているんだろう。

 パメラが用意してくれた紅茶を飲みながら、エミリーが作ってくれた軽食を食べた後は気を取り直して増築された一階の探検を再開した。

 厨房を出て左に進むとパメラが突然走り出して右手側の扉を開けた。


「お風呂の隣はお風呂……じゃ、ないデスね?」

「そんなにお風呂があっても結局使えないだろうからね」


 子どもたちが大きくなったら分からないけど、たぶんお風呂はあそこだけで十分だろう。

 しばらくの間はお嫁さんたちと一緒にお風呂に入るのは続くだろうけど、子どもたちの物心が着く頃には教育上よろしくないから別々で入ろうと主張する予定だ。


「じゃあこの部屋はなにに使うデスか?」

「レヴィさんはダンスホールですわって言ってて、ラオさんたちは訓練場って言ってたかな」


 天井が無駄に高い上に、脱衣所と浴室を隔てていた壁を取っ払った関係で、この建物の中で一番大きくて広い部屋となった。

 天井付近にはドワーフたちが作り上げるシャンデリアが設置される予定らしい。まだ納得できるものができていないという事で設置されていない。

 新しい中庭と接している面はそのほとんどが大きなガラスで占められていて、話し合いをしていたドライアドたちが僕かレモンちゃんかどっちに向けてかは分からないけど手を振っている。

 床はカーペットが敷かれていて、土足で行っていいのか躊躇してしまうけど、パメラは気にした様子もなく部屋に入って行って飛び回り始めた。


「雨の日でも飛ぶ練習できるのは良いデスね! ウタハが飛べるようになったらここで練習するデスよ」

「……確かに飛び回れるくらい広いけど、外の方が安全じゃない?」

「堕ちた時の危なさはどっちも変わらないデス」

「そうかなぁ」


 パメラの言う事を信じていないわけじゃないけど、ちょっと心配だから部屋にあふれかえるほどのクッションを集めておこう。

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