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後日譚119.事なかれ主義者も共同作業をする

 オクタビア様とお嫁さんたちはある程度打ち解けたようだ。

 割と細かいところまで作り込まれた泡の像のおかげなのだろうか? いや、あれが無くても仲良くはなってたんじゃないかな?


「という事で、一週間お菓子抜きは変わりません」

「ごめんなさいデース! 反省してるデース!」

「ダメなものはダメだよ」


 エミリー発案のパメラへの罰はそこそこの効力を発揮しているようだ。

 僕にしがみ付いて抗議しているパメラを、窓の向こう側からドライアドたちが「お~~~」と見ている。

 これはそのうち真似されそうな予感がするな、なんて事を考えながら屋敷から出て、家庭菜園の所へと向かうと、既に皆作業をしていた。


「何を植えるのですわ?」

「トマトとキュウリです。書庫の本に育てやすい作物だと載ってました」

「あー……そういえばそういう本があったような気がするのですわ」

「書庫って……昨日あれを作り終えたの結構遅くなかった? ちゃんと寝てるの?」


 少し離れた所にいたエミリーが心配そうにオクタビアに問いかけた。狐人族の耳であればそこそこ離れていても聞こえるんだろうけど、話す時に大声になるのはしょうがない。だってこっちは人間なんだもの。

 ただ、オクタビア様の声量が変わる事はない。だってエミリーには小声で話してもこの距離だったら普通に聞こえてるだろうから。それをオクタビア様も理解しているのだろう。


「なかなか寝付けなかったので……。おかげでちょっと眠たいです」

「一緒に日向ぼっこでもするのですわ?」

「いえ、休んでいる暇はありませんから」


 何をそんなにする事があるんだろうか? と疑問に思いながら近くを素通りしようとしたところで、ガシッとレヴィさんに腕を掴まれた。


「シズト。今日も日向ぼっこをするのですわ?」

「え?」

「日向ぼっこ、するのですわ?」

「あー……たぶんするんじゃない?」


 したいって思わなくてもいつの間にか集まってきたドライアドたちが日光浴に誘ってくるだろうし。

 僕の返答に満足したのか、レヴィさんは頷くと共に腕を離してくれた。


「婚約者のシズトと一緒に過ごすのも大切な仕事なのですわ。作業が一段落したら一緒に日向ぼっこをしてのんびり過ごすのですわ~」

「…………そうですね、分かりました」

「そうと決まればサクッと終わらせるのですわ!」


 レヴィさんの号令の下、ドライアドたちがわらわらと動き出した。

 僕に引っ付く事を優先する事が多いドライアドたちだけど、流石に植物のお世話の方が優先度は高いようだ。今のところパメラ以外に僕の体に纏わりついてくる子はいない。


「植えるぞ~」

「水もあげよー」

「たい肥も~」

「ねぇねぇ、こっそり他の物を植えても大丈夫かな」

「駄目って言われてる所じゃないからいいんじゃない?」

「れもーん」

「駄目ですわ。そこはオクタビアの場所なのですわ」

「ざんね~ん」

「とりあえず種植えよー」

「れも~ん」

「あ、あの……別に植えていただいても良いですよ?」

「レモン!?」

「ほんと?」

「人間さんがいいって言った~」

「植えるぞ~」

「何植える~?」

「悩むねー」


 わちゃわちゃとドライアドたちが集まって相談を始めた。レモンちゃんも頑張ってレモンを植えようと主張しているようだ。

 オクタビア様はその様子を微笑ましそうに見ていたが、まずは自分が植えたい物を植えなければいけない事を思い出したのか、畑の方へと向かって行く。


「……それにしても、オクタビア様もオーバーオールってどうなんだろうね」

「流石にドレスでさせる訳にはいかないのですわ」

「どこぞの王女殿下は土いじりをドレスのままされる事が多々ありますけどね」


 レヴィさんの背後に控えていたメイドさんが何やらボソッと言ったけれど、レヴィさんは聞こえないふりをするようだ。

 その事は予想の範囲内であろうセシリアさんは、僕を見た後オクタビア様に視線を向けた。


「私はレヴィ様を見張らなければいけませんし、専属の侍女であるセレスティナ様はこの領域には入る事を許されておりません。ラオ様やルウ様も見ていただけているようですが、婚約者であるシズト様が責任をもってオクタビア様のサポートをしていただけますか?」

「んー……そうだね。ねぇ、僕の所の畑の世話をお願いしてもいい?」

「わかったー」


 近くでウロウロしていたドライアドにお願いをすると、頼まれたドライアドとは別のドライアドも僕の畑へと向かって行く。

 その背中に「余計なモノを植えちゃだめだよ」と声掛けをするのを忘れない。


「駄目って言ってるから大丈夫だと思うのですわ」

「だとしても一応、ね」


 ドライアドたちとはそこそこ長い付き合いとなってきたような気がするけど、まだまだ分からない事が多い。念のため釘刺しをしておくに越した事はないだろう。

 そんな事を思いながら、僕はオクタビア様の畑の方へと向かった。

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