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後日譚108.事なかれ主義者はタイミングを逃した

 チャム様から授かった加護『天気祈願』を求めた国々には、加護を使う代わりに教会を設置してもらう事になっている。

 シグニール大陸だけでもガレオールを筆頭に、アクスファースや常冬の国ウェルズブラなどから依頼が来ている。

 こっちの大陸ではガレオールが転移門の中継地点となっているので、一度転移陣を使ってガレオールの首都ルズウィックに移動した後、大勢の人に注目されながら馬車で移動した。

 ルズウィックでは経済の中心地という事で、教会が集めて建てられている区画では多種多様な神を信仰している人々がいた。

 僕が進行しているファマ様、プロス様、エント様の教会は元々あったけど、その近くにチャム様の教会も新しく建てられていた。


「たくさん人がいるのですわ!」


 順調なのですわ~、と普段着ないドレスを着て喜んでいるのはレヴィさんだ。ガレオールの人々の目があるからかだいぶ大人しい。

 チャム様の教会はどこもこれといって特殊な事はしてもらってない。

 礼拝堂にあるステンドグラスや像は腕のいい職人に依頼したので満足のいく出来になっている。

 礼拝堂は、レヴィさんの言う通り朝の忙しい時間帯なのに結構な数の人がいた。どうやら一仕事終えた漁師さんや、交易船に乗っている人たちのご家族が祈りに来ている様だった。


「問題なさそうなのですわ?」

「そうだね。ちゃんと司教さんもいるみたいだし、大丈夫でしょきっと」


 インスタントホムンクルスを起動して布教活動を任せても良かったけれど、都市国家出身のエルフたち熱心に活動してくれる人がたくさんいるという事だったので彼らに任せた。

 妙にやる気満々でちょっと不安になるけれど、強引な勧誘とかはチャム様のイメージダウンになる事はしっかりと伝えてもらったのできっと大丈夫だろう。…………たぶん。

 司教さんに見送られながら馬車に乗り込んで、そのまま転移門を通過すると外の景色が一変した。

 通りを行き交うのは褐色肌の人族ではなく、多種多様な獣人族が殆どだった。

 馬車は止まる事なく進み、それほどかからずにある建物の前に着いた。

 馬車から降りると出迎えてくれたのはホムンクルスの内の一人であるライデンだ。

 縦にも横にも大きくて力士みたいな印象を受ける彼は、その見た目以上の強さだそうだ。高ランクの魔石を使った甲斐があった。

 ライデンには三柱の教会の管理と布教活動、それから魔道具店『サイレンス』の営業を任せていたけれどうまくこなしてくれている様だった。

 今回、ライデンから相談があって『天気祈願』をこの国でも使う事になったけど、そのために教会をもう一軒作ってもらった。


「全く同じ感じで作ってもらったが、こんな感じでよかったか?」

「うん、いいよ。……ただ、この場所って前建物なかったっけ?」

「魔法で移動させたから気にしなくていいぞ」

「…………魔法って、便利なんだね」


 熟練の魔法使いがいれば、家ごと引っ越す事もできるとかできないとか……。

 やっぱり魔法って便利だし使えたらいいのにな、なんて事を思いながら教会の中を見て回った。

 中は所々違ったけれど、やっぱりまじないの神様っぽさはまだ出せてないな。今後の課題として覚えておこう。

 一通り教会を見て回った後は再び馬車に乗り込んで移動する。

 今度は高山地帯で常に雪が降っているドワーフたちの国という事もありレモンちゃんたちには馬車の中でお留守番をしておいてもらった。


「天候を激変させたら生態系とかに影響出るよなぁ……」

「そこら辺はシズトが悩む事ではない気がするのですわ」


 ドワーフたちが作ってくれたチャム様の教会はどこも問題はなさそうだった。

 そうなるとこの国にも加護を使う事になるけど、ドワーフたちが求めているのは『雪が降らない日を作って欲しい』という事だった。

 ずっと降らないようにするのは僕が分裂するか魔力が増えない限りはローテーションで回っていくので難しいかもしれないけど、それでも影響は何かしら出るだろう。必要な所だけ雪が降らないようにする、なんて事をしてもいいかもしれないけど……レヴィさんが言う通り僕が心配しても仕方がない事な気もする。何かしら相談されたら考えよう。


「今日はこれで終わりですわ?」

「そうだね。クレストラ大陸の方まで回っていると時間がかかり過ぎちゃうかもしれないし、エンジェリアに向かってもらえる?」

「かしこまりました」


 御者をしていたジュリウスにお願いをしてから僕たちは馬車に乗り込んだ。

 馬車の中は魔道具によって一定の温度に保たれていたが、なぜかレモンちゃんたちは元気がなかった。

 横長の椅子の片方はレモンちゃんたちに占領されていたのでレヴィさんと仲良く並んで座っていると転移門を通過してしばらくすると元気を取り戻したドライアドたちが引っ付いてきた。


「レモーン!」

「眠かったね~」

「そうだねー」

「エンジェリアでは流石に降りてもらうからね?」

「レモン?」

「降りるの~?」

「降りるのかなー?」

「これは降りない気がするのですわ」

「…………そっか」


 元気がない内に置いてくればよかったかなぁ。

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