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後日譚102.事なかれ主義者は女性について話し合った

 クレストラ大陸にあるアルソットという国は、ダークエルフたちの国だ。

 その国土の大部分が砂漠に覆われているが、所々にオアシスが点在している。そのオアシスを中心に街が作られているらしい。

 クレストラ大陸の中でも過酷な気候らしいけど、それは人間基準で見た場合だ。

 ダークエルフたちは種族的に暑さにも寒さにも強いらしく、砂漠で過ごす分には困る事はないそうだ。

 ただ、付与の加護を持っていた時も依頼があったけど水不足で悩む事が多々あるとの事だった。

 僕は首都を見渡せる城壁の上に立っていた。

 近くにはギュスタン様とムサシ、それからジュリウスがいた。

 レモンちゃんは砂漠だとぐったりしてしまったのでフソーの根元に置いてきた。

 フソーの周りにいるドライアドたちと仲良くしてくれているといいんだけど……。

 そういった意味でも早く帰りたいな、と思ったのでさっさと終わらせ……たいんだけど、無理だろうな。


「とりあえず首都周辺に雨を降らせてほしい、って事だったけど……いきなり雨を降らせて問題起きないかな?」

「そこら辺はナーディア様が対応してくださるんじゃないでしょうか?」

「そうでござるな。万が一対応できない事態が起きても、拙者やエルフたちが何とかすると思うでござるよ」

「まあ、エルフたちが何とかしてくれるなら大丈夫かな……? あ、ダークエルフとエルフの折り合いが悪いとかない?」

「少なくともシグニール大陸ではありません。クレストラ大陸ではわかりかねますが……」

「そういった話は聞かないでござるよ。良くも悪くも、エルフもダークエルフもどちらもあまり外には出ない種族だからでござるな、きっと」

「なるほど……。じゃあ、いいか」


 そういうわけで、新しく授かった加護『天気祈願』を使ってアルソットの首都一帯に雨が降るようにお祈りをした。

 範囲が広かった事や、砂漠化が深刻な国で雨を降らせようとした事もあったからか、そこそこの魔力が持っていかれた。数日後にお願いしたからか思っていたよりは少なかったけど。


「こんなもんかな。数日後の午後から夕方にかけて程々の量の雨が降るはず、って伝えておいてくれる?」

「承知したでござる。魔力残量は如何ほどでござるか?」

「まだ大体八割くらいかな」

「あれだけの魔力を使って八割でござるか。流石、主殿でござるなぁ。じゃあ魔動車で各地を巡る感じで行くでござるか」

「そうだね。ギュスタン様も来ますか?」

「是非。戻っても家族から見合いの話はどうするのか、と言われるばかりで農作業に集中できませんから……」

「……頑張ってください」


 クレストラ大陸の中でも農業が盛んな国だった気がするし、ギュスタン様の加護を欲しがる所は山のようにいるだろう。クレストラ大陸は転移門で気軽にフソーに集まる事ができるからなおさらだ。

 ギュスタン様には是非複数の女性を娶って欲しい。

 そうすれば育生に対する縁談話も少しは減るかもしれない。




 アルソットに売った魔動車に乗って近場の街を移動しては『天気祈願』を使って回ると流石に魔力が無くなってきた。

 ファマリアでも使う事を考えるとそろそろおしまいにするべきだろう。


「ジュリウス」

「かしこまりました」


 まだ何も言っていないけれど、運転席に座ってハンドルを握っていたジュリウスは進路を首都の方へと変えた。

 全速力で走らせればあっという間に首都につくだろうけど、周囲を並走しているエルフが大変そうなのである程度ゆっくり進んでいる。


「砂漠の上を走るって思ってたからもっと時間かかるかと思っていたけど、精霊魔法って便利だね」

「ジュリウス様や、世界樹の番人たちは別格だと思うよ」

「そうなの?」

「僕も詳しくはないからたぶんだけどね」


 僕の正面に座って苦笑いを浮かべているギュスタン様は、魔動車の中だったら周りからも見られる心配はないからとため口で話してくれている。おかげでだいぶ話しやすい。

 車が来た道を見ると、精霊魔法によって作られた土の道がどんどん崩れて砂へと変わっている様子が見えた。

 前方に視線を戻すと、その逆で砂がどんどん形を作って道になり、見ていて飽きない。

 ただ、まだギュスタンさんとは沈黙が気まずくならないような関係性ではないので何かしら話をしたいところだ。


「そういえば、お見合いの話はどうなったの? 条件付けするって話だったような気がするけど……」

「縁談の申し込みは条件のおかげでだいぶ減ったよ。条件を継続するために貸してもらった脂肪燃焼腹巻は使ってないけど、見た目で困ってるわけじゃないからそれでいいかなって。ただ、残った中から選べって家族から言われてて困ってるんだよね。今まで選ぶ側じゃなかったから選ぶのが難しいし、僕の実家よりも上の人たちが多いから、選ばれなかった方々を断るのも難しそうでね……」

「もういっその事全員娶っちゃいなよ」

「いやいや、流石に人数多すぎるから……」

「どのくらいいるの?」

「シズトさんのお嫁さんたちの倍くらいは普通にいるよ」

「…………それは減らしたいね」

「でしょ?」


 三十人以上を娶るのは王様か勇者くらいだそうだ。

 ギュスタンさんは貴族とは言っても侯爵家なので、家格を考えると多くても十人はいかないくらいが普通だろう、との事だった。


「さらに条件を絞るか、上から順番に自動的に相手を決めるくらいしないと候補は減らなさそうだね」

「家族にも同じような事を言われたよ。……今までは選ばれる側だったのに、いきなり選べって言われても無理だから後者にしようかな、とは思ってる」

「それでいいんじゃない?」


 本音を言えば育生のために少しでも多くの女性を娶って欲しいけど。

 そんな事を思いながら、どういう女性が好みなのかとか、女性の好きな部分とか話し合って過ごしたらアルソットの首都に着くまであっという間に時間が過ぎて行った。

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