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後日譚75.事なかれ主義者は高みの見物をした

 今日行われるのは戦闘職のエルフたちによるトーナメントだ。

 武器も魔法も自由に使っていいルール、との事で治癒魔法使いとして【聖女】の加護を授かった姫花がスタンバイしている様子が見えた。

 何となく彼女の事を見ていると、横に座っていたレヴィさんも僕の視線を辿ろうと会場の方に視線を向けている。


「何を見ているのですわ?」

「前世の知り合いがいたから気になっただけ」

「……ああ、あの方ですわ? 働き者ですわ~。ジュリウスが雇ったのですわ?」

「報酬の提示額が安かったので雇いました。問題ありましたか?」

「いや、別に」

「左様でございますか。もう一人の勇者アキラも舞台の補修係として雇っています」

「へ~。意外だなぁ、二人ともこういうのには参加しなさそうだったんだけど」

「実績が欲しかったのと、ドランで生活を続けていくうえでシズト様との関係が良好である事をアピールしたいのでしょうね」

「ふーん、なるほどね。……陽太は?」

「彼もまた売り込みに来ましたよ。ただ、大会に出場する側として、ですが。今回はエルフのみの御前試合という事でしたのでお帰り頂きました」

「……まあ、それは仕方ないね」


 仲間外れみたいな感じでちょっとかわいそうかも、とか思ったけど必要ない物を雇う必要はないもんね。お金的には問題ないだろうけど。

 そんな事を考えていると、第一試合の選手が入場した。

 先程よりは小さいけれど、歓声の中進む二人はどこか誇らしげだった。


「……そういえば、ジュリウスは出ないの?」

「はい。私はシズト様のお傍に常にいるので辞退しました。今回はお二方の護衛に専念します」

「ふーん。じゃあ、試合の解説をお願いしてもいいかな? 精霊魔法とかよく分からないし、身体強化魔法を使ったすごく速い切り合いも目で追いつけないだろうから」


 あと、血が出た時は見続ける事は出来ないし。

 僕の提案にジュリウスは恭しく首を垂れると「仰せのままに」とだけ答えた。




 今回の御前試合はエルフたちのご褒美、という事で実況席はなく、お喋りタンクのボビーさんはいなかった。なので、ジュリウスの解説頼りになってしまうけど、ジュリウスは精霊魔法に詳しいので適役だった。

 第一試合では都市国家イルミンスールの代表者と都市国家ユグドラシルの代表者の勝負だった。

 両代表とも気迫だけではなく、精霊魔法もすごかった。

 最初に仕掛けたのはイルミンスールの代表者だ。水の精霊の力を借りて大量の水を生み出すと、それが竜のような形になって襲い掛かる。

 だが、ユグドラシルの代表者は慌てる事もなく土の精霊の力を借りて、会場の床のさらに下から地面を隆起させて阻んだ。


「イルミンスール側は魔法を囮として使ったようですね。竜の形にしたのはシズト様を楽しませるためでしょう。ただ、その行動が無くてもユグドラシル側は受け止める事はできていたでしょうね」

「魔法は互角かな?」

「実力でいうとイルミンスール側がやや上。ですが、場所が悪いですね。海上、もしくは沿岸部での戦いであればユグドラシル側が負けていたと思います。精霊魔法はその場にいる精霊の力も借りる事ができると威力が増大しますから」


 不毛の大地周辺は水の精霊よりも土の精霊が多いらしい。だから普段以上の力が出せているのだろう、との事だった。


「勝負あり!」

「え?」


 解説を聞いている間に肉薄していたイルミンスールの代表が、カウンターを食らって場外に殴り飛ばされていた。意識はあるようだけれど、蹲って立ち上がる事ができないようだ。


「身体強化魔法だけでみると、ユグドラシル側が圧勝でしたね。次回開催する場合は公平に期すために、会場もランダムにすると良いかと愚考いたします」

「それは良いですわね。開催される街の活性化にもなるのですわ」

「まあ、次回行う事があったらね」




 その後も順調に御前試合は行われていった。

 イルミンスールとトネリコ出身の代表者たちは水の精霊魔法が得意な人が半分くらいいて、一回戦目で早々に負けてしまっていた。

 それぞれ二回戦目に勝ち進んだ四人はユグドラシルの人が二人と、フソーの人が二人ずつ。

 フソーの代表者たちは奴隷の証である首輪を着けていたけど、御前試合出場者という事で奴隷から解放されていた。


「ジュリウスはどっちが勝つと思う?」

「そうですね。一回戦目で全力を出し切っているのであればユグドラシル側でしょうね。この日のために空いている時間で扱きましたから」


 ジュリウスの言った通り、熱戦は繰り広げられたけど最終的にはユグドラシルの代表者が勝利を手にしていた。

 フソーの代表者二人は負けてしまったけれどまだまだやる気十分の様だったのでお昼休憩を挟んだ後、三位決定戦からする事となった。

 休憩中に選手たちの傷を治すために姫花が走り回っていたり、豪快に破壊されたスタジアムを修繕するために明が駆り出されているのを見ながら僕はのんびりとサンドウィッチを食べた。

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