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後日譚39.事なかれ主義者は浮足立っている

 携帯式転移陣を使って転移をすると、キャプテン・バーナンドさんと一緒にランチェッタさんが船員から話を聞いている所だったようだ。

 僕たちがやってきたのに気づいた様子で船員が話を止めると、ランチェッタさんがこちらを見た。


「どうやらもう既に代官の屋敷を制圧したみたいよ」

「……早くない?」

「この街は国内の交易路の一つで、外敵は魔物くらいだったからそこまで防衛設備がしっかりしていなかったのもあるかもしれないけど、街中にいきなり他国の者が現われるなんて想定している国や街は少ないから不思議じゃないわね。転移魔法の対策を取っている所もあるだろうけど、転移陣や転移門はそれをすり抜けるってルズウィックで検証済みだし……。それを置いといたとしても、エルフたちの中でも精鋭たちが大量に攻めて来たらこの程度の規模の街だったら抵抗もままならないと思うわ」

「そうなんだ……それで、この後はどうするの?」

「民衆の方もこちらに派遣されたエルフたちが発見次第複数個所に分けて集めて監視しているみたいだから、わたくしたちは代官の元へ向かうわ。国内とのやり取りをしていない街の代官だからヤマトの女王や、ラグナクアの公爵を知っているかは期待できないけど、何かしら進展はあるでしょ」


 そういうとランチェッタさんは僕と手を繋いで歩き始めた。

 僕は開いた手でクーを支えると、ランチェッタさんの歩調に合わせて歩く。

 その後ろをついて来るのはレスティナさんとメグミさんで、ぐるりと周りをを護衛が囲んでいる。

 街の通りは舗装はされているけど、結構傷んでいる様子だ。

 建物も古いものが多く、ガレオールと比べると見劣りする。

 ただ、比較対象が首都だから、というのもあるかもしれない。


「ガレオールもこういう港街はあるの?」

「そうね。建物の壁の色以外はだいたい一緒じゃないかしら? ガレオールでは建物の外壁は白が人気だから。ただ、汚れが目立つからメンテナンスにコストがかかるのよね」

「そこに手を回せない家は裕福じゃない、と思われてしまうので商家では特に外壁の白さにこだわりますね」


 ランチェッタさんの話に付け加えたのは彼女の侍女であり僕のお嫁さんの一人でもあるディアーヌさんだ。

 今日もメイド服を着た彼女は袖もスカートの裾も長いのでとても暑そうだけど、これは魔道具化してあるので汗一つかいていない。


「街の景観が損なわれるような建物を放置していると他の貴族から嘲笑されるからって、平民が暮らす建物や公共施設の外壁の白さを維持するのも領主の仕事と思われているわね。その視点で見ると、ここは随分とさびれた街だとは思うけど……そこら辺も代官の屋敷につけばわかる事ね」

「制圧して手が空いたエルフには既に屋敷に保管されていた文書などを手分けして解析させています」

「流石ジュリウスね。仕事が早いわ」

「現場に任せただけですが……お褒めに預かり光栄です」


 そう言ったジュリウスは特に頭を下げる事はなかった。


「……っていうか、軍船が水平線の方に見えるけど、こんなゆったり動いていていいの?」

「下手に攻撃なんてしたら領民が巻き込まれるからしないんじゃないかしら? 気付いていないという事はないだろうけど、こっちの力が未知数だから様子見に徹している可能性もあるわね。一応防衛手段は用意しているそうだけど……ジュリウス、ドローンゴーレムを使って録画は開始しているのかしら?」

「はい、上空から空撮しております」

「……なんでわざわざ撮るの?」


 そう僕が尋ねると、ジュリウスはすぐに答えてくれた。


「無辜の民を敵諸共葬り去ろうとした証拠として残し、結束を揺るがす材料にするためです」

「他にも何か使えるんじゃないかと思うけれど、ヤマトとのトラブルの際に便利だったと聞いたから活用してみようと思ったのよ」

「なるほど。……こっちの世界じゃ映像を記録する魔道具はなかったの?」

「少なくともわたくしは聞いた事がないわ」

「戦闘に使う魔法を応用した技術でしょうけど、私も聞いた事がありません。クレストラ大陸の方でではどうでしょうか?」

「いやぁ、拙者も国際会議に出席した際に色々見聞きしているでござるが、聞いた事がないでござるなぁ。主殿が作った魔動カメラは今後も何かしら影響を及ぼしていくんでござろうなぁ」


 甲冑を身にまとい、のっしのっしと歩いていたムサシがのんびりとそんな事を言う。

 レスティナさんもメグミさんもムサシに同意するように頷いている。

 UFOもどきも魔動カメラ類も取り扱いには気を付けていかないと。

 なんて事を思いながら歩いていると、やっと代官の屋敷に着いたようだ。

 エルフたちが突入して制圧した、と聞いていたけど外観はどこも荒れていない。本当に突入したんだろうか? と思っていると門が開いて中からエルフたちが出てきた。


「お待ちしておりました、シズト様。中の安全は確保してあります。どうぞ中へお進みください」


 今回僕はただついて来ただけなんだけど、先頭歩いちゃって大丈夫なのかな?

 ……まあ、手を繋いでいるランチェッタさんも僕と同じく前を歩いているし、まあ良いのかな……?

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