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後日譚2.事なかれ主義者は同じレベルの相手が欲しい

 ジュリウスに近接戦闘の訓練に付き合ってもらっているんだけど、思っていたのと違う。


「素振りとかしないの?」

「シズト様は攻撃したいのですか? であれば、実戦形式のやり方を変えますが……」

「いや、別にそう言う訳じゃないけど……。戦わずに済むならそれが一番だし。ただ、状況的に逃げる事ができない場合もあるでしょ? それこそ、これから生まれてくる子どもたちを守らなくちゃいけない状況とか……」

「……なるほど。シズト様のお考えは分かりましたが、まずは避ける訓練です。剣の振り方などは身体強化が無意識でできるようになってからにしましょう」


 木剣を構えたジュリウスが話し終わると同時に突きを放ったので、半身になって避けた。


「いてっ」

「申し訳ありません。強すぎたでしょうか?」

「あ、いや全然。なんというか……つい口に出ちゃうというか」


 僕の動きに合わせて木剣の軌道が突きから薙ぎ払いに変わったのに対応しきれなかった。この避け方は良くなかったらしい。


「最低限の動きだけで避ける、という戦い方はあります。ですが、シズト様の場合、帰還の指輪を起動する時間を稼ぐだけでいいので、もっと避けてもいいかもしれません。魔力量だけでいえばシズト様ほどの者はそうそういませんから魔力切れの心配もする必要はありません。大量の魔力を使って一気に移動するのもありでしょう」

「なるほど。……でも、戦わなくちゃいけない時もあるよね? 逃げ癖がつくのはまずくない?」

「シズト様が扱う予定の武器は遠距離武器の予定ですから問題ないかと」


 いつの間にか扱う武器を決められていた件について。

 こだわりとかないし、血を見ると力が抜けるのは今も変わらないから近接系の武器じゃないのは助かるけど……今やってるのは近接戦の訓練だったような気がするんだけどなぁ。


「いてっ」

「シズト様。目の前に敵がいる場合は余計な事を考えてはいけません。相手にだけ集中してください」

「あ、はい」




 お昼時になると戦闘訓練はお開きなった。

 屋敷に残っていた皆と食事を済ませた後は特にする事がない。

 何事も詰め込み過ぎは良くない、との事でお昼は戦闘訓練は禁止されてしまったのだ。

 ただ、魔道具『パワースーツ』を無意識で使う事ができるようになるために、常日頃から使うようにと言われているので特訓していないという訳ではないけど。


「タッチ。シズトさまが鬼だよ!」

「パワースーツの性能、やっぱりもう少し上げとくべきだったんじゃないかなぁ」


 元気よく遠くへ駆けていく桃色の髪の毛の女の子を見ながらそんな事を思った。

 歳が結構離れている彼女の身体強化にすらついていけないこの魔道具が残念な性能なのか、英才教育を受け続けているアンジェラの実力がとんでもないのか……。


「ちょっとパメラ、空を飛ぶのは反則よ!」

「パメラ、走るの苦手だから仕方がないデ~ス」

「リーヴィアちゃんも降りて来ないとダメだよ? シズトさまは空飛べないんだから」

「飛べるんだったら僕も飛びたいなぁ」


 黒い翼を羽ばたかせて空を自在に飛び回っているのは翼人族の女性パメラだ。見た目的には小柄な女の子だけど、ちゃんと成人しているらしい。言動を振り返ると首を傾げたくなるけど、れっきとした大人なんだとか。

 そんな彼女を追いかけているのは小柄なエルフの女の子だ。

 まだ百年も生きていない彼女は魔道具師として働いているロリエルフのジューロちゃんと違って日々少しずつ成長しているらしい。

 名前はリーヴィアという。いろいろあって別館で暮らすようになったけど、会った当初と比べるととても元気になった。一部からはちょっと元気になりすぎだという声もあるけど、僕の目の前では悪戯をしないから何とも言えない。


「シズトさま~。シズトさまが鬼だよ~」

「分かってるよ~」


 余計な事を考えていたら追いかけて来ない事に気付いたアンジェラが遠くから声をかけてきた。

 彼女に返事をした後、どうしたものかと腕を組んで考える。

 そんな僕を真似して周りのドライアドが腕を組んでいるのを見て、ふと鬼ごっこ中、ずっと肩の上にいるドライアドの事を思い出した。




 レモンちゃんを筆頭に、ドライアドたちの協力のおかげでなんとかおやつを賭けた鬼ごっこに勝利する事ができた。


「でも、これじゃあ身体強化の練習にはならないんだよなぁ」

「相手が悪すぎるわよ、シズト様」


 食堂で狐人族のエミリーが用意してくれたおやつを一緒に食べていたリーヴィアが呆れたように言う。

 彼女は「アンジェラはジュリウスにも手ほどきを受けてるのよ?」と首を傾げる。そんな相手に勝てるわけがないだろう、と。

 アンジェラはどこを目指していろんな人から教えを受けているんだろうか。

 この前はモニカから侍女の仕事についていろいろ教わっていた気がする。


「身体強化の練習に丁度いい相手はいないかなぁ」

「街の子たちはどうかしら? 冒険者を目指している子たちだったらある程度の身体強化を使えると思うわよ」


 なるほど。後でジュリウスに相談してみよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 似たような加護を受ければ解決できそうですが。 生育の代わりに生長とか、付与の代わりに魔法陣作りとか、製造の加護とか、そうすると世界樹もまた育てて生活になるんじゃないかと思います。
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