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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第25章 片手間にサポートしながら生きていこう

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529.事なかれ主義者は帰る方法を考えた

 レヴィさんは特に用はなかったからドライアドハウスが気になったからやってきただけだったようだ。

 だけど残念ながら入室の許可が下りなかったので「仲良くなってから出直すのですわ……」ととぼとぼと隣を歩いている。


「どうして僕はオッケーだったんだろうねぇ」

「そうでござるなぁ。色々考えられるでござるが、やはり【生育】の加護を授かっているからな気がするでござる。少し前に研究のために転移門経由でラピス殿がいらっしゃったでござるが、ドライアドたちは世界樹の魔力の影響で生まれた、って言ってたでござる。親の世話をしてくれる人物なら縄張りに入ってきても許容できる、という事かもしれぬでござるなぁ」

「あー、その研究……というか聞き取りの時に同席してたけど、確かにそんな感じの事言ってたね、レヴィさん」

「そうですわね……」


 クレストラ大陸のドライアドたちとは友好的に関わる事ができていただけに、威嚇されたのがショックだったのか元気がない。

 元気を出してほしいけど、どうしたものか……レヴィさんの喜びそうな事ってだいたい農作業なんだよな。

 でも、他の世界樹の周辺と違ってここだと僕たちが自由にできる場所はほとんどない。

 どうしたものかなぁ……。




「それで、ファルニルにいらっしゃった、という事ですか」

「はい。いつでも来ていいと言われていたので」

「なるほど……」


 大量の汗をせっせと可愛らしいハンカチで拭いている大柄な男の人はギュスタン・ド・アリーズ様だ。

 大きな熊のような見た目で縦にも横にも大きな彼は身綺麗な格好をしている者の貴族らしくはなかった。

 急な訪問だったから慌てて来たのか、髪の毛もセットされていない。

 申し訳ないな、と思いつつも手土産を上げるので許してほしい。


「……これは?」

「美味しい果物です」

「見た事ない物もありますね」

「別の大陸で収穫した物もあるからじゃないですかね。ご家族でお食べください」


 たくさんの果物が詰め込まれた籠を彼は大事そうに受け取ると、しげしげと中身を見ていた。

 彼の父親は外交貴族としてファルニルでは有名らしいけど、色々あった時にはそのお父さんの都合がつかず、彼が代理人として交渉の席に着いたらしい。

 今日もまた他の予定が入っていたからとこの場にはいないそうだ。


「父も弟もシズト様には会いたがっていたので残念です」

「また機会がありましたらお会いしましょう」


 ギュスタン様のご家族とは会った事がないけど、ギュスタン様のご家族だし、きっと彼のように関わりやすい方なんだろう。

 畑に来るまでの道中も近隣の住人たちに慕われているようで、彼はよく話しかけられていた。

 今もまた、彼の足元には小さな子どもたちが引っ付いて、僕の方をジッと見ている。

 この子たちの分の果物も用意しておくべきだっただろうか?

 いや、でも流石にドラゴンフルーツはあげると問題あるよな。

 ドライアドたちから貰った余り物でよければたぶんアイテムバッグの中に大量にあるだろうけど……。

 なんて事を考えている間に、レヴィさんは畑を見終わったようだった。


「丁寧に手入れされたいい畑だったのですわ! 魔道具もしっかりと手入れされていたのですわ!」


 レヴィさんはいつものオーバーオールじゃなくて、お腹に負担を賭けないように簡素なワンピースタイプのドレスを着ていた。

 つばの広い帽子を被っている事もあってどこぞのご令嬢のようにも見える。


「ドラゴニアのご令嬢なのですわ」

「あ、はい」

「普段からその様な行動をとっていないからその様に見られないのです」


 レヴィさんは万が一のことを考えて魔道具『加護無しの指輪』を嵌めていなかったので思考を読んだようだった。

 ジト目で僕にちくりと物申してきたけど、すぐそばで控えていたレヴィさんの専属侍女であるセシリアさんがため息をついていた。周囲の近衛兵もそっと視線をそらしている。


「話を戻すのですわ!」


 形勢不利と見てレヴィさんはギュスタン様の方を見た。

 レヴィさんの立場を知っているからか、それともお腹の中に子どもがいる事を察しているからなのか分からないけど、しきりに額を流れる汗を拭いている。


「農作業の際に何か困った事はないのですわ? あれば実演を交えてアドバイスできると思うのですわ~」

「いや、そういうのは街の人たちに教えてもらってるから特には……」

「そうですわ? じゃあ、何か私の知らない事もあるかもしれないのですわ。中断させてしまった今日の作業をお手伝いするのですわ!」


 僕たちが来た時に作業をしていた大人たちがギョッとしている。

 近衛兵の人たちは遠い目をしていて諦めているようだけど、普通、貴族のご令嬢は土いじりなんてしないもんな。

 僕も何かしら手伝った方が良いかな、とは思ったけど、とりあえずギュスタン様の領地に来るまでに乗ってきた魔動車の揺れが気になったので改良案を考えておこう。


「勝手に改良しちゃダメですわ」

「分かってるよ! ちゃんとギュスタン様に確認してから手を加えるし」

「え、いや、あれは王家から貸し出されてる物だから……」


 ……なるほど。じゃあ帰りもあの揺れは我慢しなくちゃいけないのか。

 レヴィさんに万が一の事があると困るし、帰りの時は転移陣を作って設置した方が早いような気がした。

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