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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第24章 異大陸を観光しながら生きていこう

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幕間の物語252.冒険者夫婦は誤解している

 冒険者として活動している内に男女の仲になる事はよくある事だった。

 それがパーティー解散の原因になる事もあれば、とんとん拍子で話が進んで夫婦になる者もいる。アンディーとシルヴェラは後者だった。

 子どもが生まれた後は子育てのために引退する女性も多かったが、シルヴェラは病弱な娘の治療費を稼ぐために再び武器を手に取った復帰勢だった。

 もしもの事を考えると自分のランクよりもいくつか下の物を受けざるを得なかったため、パーティーに他の者を入れる訳にもいかず、夫婦二人三脚で依頼に当たっていた。

 だがそれも長くは続かなかった。

 二人の娘であるアンジェラが六歳になる頃、難病にかかってしまったのだ。

 二人は娘を助けるため、依頼のランクを上げて家を留守にする事が多くなったのだが、それでも足りず、借金をするしかなかった。


「まさか奴隷落ちしたおかげで娘が完治するとは思わなかったけど。人生、どう転ぶか分からないわね」

「そうだな」


 世界樹ファマリーの根元に建てられた建物の小さい方で暮らしている二人は、リビングでのんびりと過ごしていた。

 外は既に日が暮れてしばらく経っているため暗いが、室内は魔道具によって照らされていて昼間のように明るい。


「奴隷になる前よりいい生活だから、急いで借金を返済する必要性も感じないのよね」

「勇者様の奴隷になると時々こういう事がある。ラッキーだった」


 シルヴェラとアンディーと一緒に机を囲み、晩酌を楽しんでいたエルフのジュリーンとダークエルフのダーリアが言った通り、前世の知識から奴隷に対する扱いに慣れずに奴隷を奴隷として扱わない勇者は多い。

 中には『人権』を主張して奴隷商を襲って奴隷解放運動する者もいた。勇者の手を借りて逃げ出す奴隷たちの中には犯罪奴隷も含まれていて、悪さをする事もあったため問題視される事が多い。


「衣食住も保証されてるから、コツコツと報酬を溜めて行けば生きている間に返済できそうなのよね」

「アンジェラの魔道具の対価を考えたら返せそうにない」

「そうね。問題はそこなのよね……」


 病弱なアンジェラのためにシズトが与えた首飾り型の魔道具は、今も彼女を病気から守っていた。

 その効果を知れば多くの王侯貴族が求める事は明白だったが、彼女が使っている魔道具の事を知っている者は身内しかいなかった。

 だが、その身内の誰に聞いてもあの魔道具の値打ちがどのくらいになるのか分からないため明言していなかった。


「シズト様はアンジェラちゃんにプレゼントしたって言ってたわよ?」

「気にしなくていいんじゃないか? ……そういえば、プレゼントと言えば二人はあの事を知っているのか?」

「あの事って?」


 シルヴェラが尋ねるとジュリーンが「余計な事は言わないの」とダーリアを窘めた。


「そういう反応を見ると余計に気になるじゃない。何かあったの?」

「アンジェラの事か?」

「ダーリアのせいよ。あなたが責任を持って二人に伝えなさい」

「構わんぞ。アンジェラに聞かれたんだ。付き合ってもいない異性にプレゼントするのなら何がいいのか、っと」

「ああ、なんだ、そんな事。それなら私たちも聞かれたわ。ね、アンディー」

「ああ」

「相手は聞いたの?」

「別に聞いてないけど、シズト様じゃないの?」

「違う。ジュリーニだ」

「ジュリーニ? ジュリーニって、エルフの?」

「ほら、やっぱり相手を隠してたじゃない! アンジェラが怒っても、ダーリアがバラしちゃったって言うからね」

「構わない」


 シルヴェラが驚いた様子で目を丸くしている隣で、アンディーは咽ていた。

 その背中をさすりながらシルヴェラが先を促すと、ダーリアが真剣な表情で続きを話した。


「もうすぐジュリーニの誕生日らしい。だからジュリーニが喜びそうなプレゼントは何か聞かれた」

「お世話になっているから、とかはないわよね。ほとんど話をしているところ見た事がないし」


 シルヴェラの発言に何度も深く頷くアンディー。

 実際、ジュリーニと関わる機会はあるのだが、それはリーヴィアやジューロと一緒にいる時に話を振られる程度で、ジュリウスのように魔法の使い方などを教わっているわけではなかった。


「エルフは容姿端麗。関わりがなくても好きになる事はある」

「まあ、そうだけど……ジュリーニくんかぁ。あの子、ジューロちゃんの事が好きな気がするのよね。シズト様みたいに複数人娶ってくれればあり得るけど、寿命の違いはどうしてもあるし」


 シルヴェラが嘆息すると、アンディーもまた深く息を吐いた。

 エルフと他種族のカップルが成立しにくいのは寿命の差が大きい。

 中には結婚して子どもを設けるカップルもいるが、そこまで至らずに破局するケースが多かった。


「ライバルはジューロだけじゃない。リーヴィアもジュリーニの事を好いているはず」

「あら、やっぱり? 恋敵が二人とも同種族となると、アンジェラには厳しいかしら?」


 どうやって慰めようか、などと見当違いの議論が始まったが、アンジェラがジュリーニの事を好きなのではないか、という疑惑は解消される事なく、その後もしばらくの間、大人たちの間で話題に上がるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] そもそもアンディー君は自身の腕の治療で生きている間に支払いなんて無理ゲーでは……
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