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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第24章 異大陸を観光しながら生きていこう

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幕間の物語249.道楽息子はのんびり畑を耕していたい

 クレストラ大陸の中央に聳え立つ『魔の山』と呼ばれる魔境の地の南側にはファルニルという国があった。

 転移門によって各国と繋がった事により、以前にも増して農業に力を入れるようになった。

 ファルニルの農作物は品質が良く、美食の国ティエールを筆頭に、他国の料理人たちからの需要はとても高い。

 魔道具を用いた農業はまだ試験段階だったが、作業が効率化される事に加えて魔道具によって作られたたい肥や、水などには魔力が通常よりも多く含まれている事によって品質も向上していた。

 なんとかして自分の街にも導入したい、と考えている領主ばかりだったが、国王に陳情しても新たに魔道具が入荷していない。唯一生産できる者が、今は邪神の信奉者への対策でかかりきりになってしまっているからだった。

 それならば仕方がない、と領主たちは手に入れる事を諦めた。

 だが、手に入れた時の参考にするため、唯一試験的に導入されているアリーズ家の領地に視察に訪れる者が後を絶たない。

 その対応をするのは基本的にはアリーズ家の現当主だが、実際に農業系の魔道具を手に入れて活用しているのはその息子のギュスタン・ド・アリーズだったため、彼が対応する事も珍しくはなかった。

 自身よりも地位が低い者たちばかりとはいえ、他の貴族家の関係者である。

 接待をする経験もほとんどなかったため、ギュスタンはいつも精神的に疲れを感じていた。

 ただ、それ以上に憂鬱なのは、月に一週間ほど王都を経由して元都市国家フソーに訪れる事だった。

 いや、訪れること自体は何も問題ない。問題があるのは、そこでする事だった。


「……父上。今回も国際連合の話し合いに同席しなければいけないのでしょうか」

「当たり前だ。じゃなかったら連れてきていない」


 ギュスタンの父は当たり前の事を聞かれて不快そうに眉間に皺を寄せたが、それ以上は特に何も言わない。

 馬車に揺られながら見える街並みを眺めているだけだった。

 ギュスタンは小さくため息を吐くと、自分の体に合うようにオーダーメイドで作られた服に視線を落とした。


(我ながら、全然似合ってないな。自分用の畑を手に入れたし、自分で世話をするようになったからちょっとは痩せると思ったんだけど、足りないのかなぁ)


 ふっくらと膨らんでいるお腹周りを優しく擦るギュスタンが痩せない原因は他にあるのだが、彼は気づいていないようだった。

 目的地に到着し、馬車が停まった。

 ギュスタンは父の後に続いて降りると、その背を追って建物の中へと入っていった。




 クレストラ国際連合の本部として使われている建物は以前は迎賓館として使われていたため、

 部屋の中には大きな円卓があるが、まだ時間ではないからと各国の代表者たちは席についていない者も多かった。

 ギュスタンと彼の父親は室内を見渡し、ファルニルの代表者の姿を見つけると彼のすぐ後ろに控えるように立った。

 彼らの前に座っているのはファルニル国王だ。他の国々もそのほとんどが国のトップも、シズトがクレストラ大陸に訪れている、という情報を得て今回の会議に出席していた。

 普段であれば代理の外交官だけで行われているのだが、少しでもつながりを持つ機会があれば、とやってきている様だった。


「今回も僕は基本的に静かにしていればいいんでしょうか」

「ああ。話しかけられた事だけに答えればいい」


 話しかけられないといいなぁ、等と考えつつ、自分に与えられた畑の事を考えて乗り切ろうと思っていたギュスタンの近くで、口論が始まった。

 言い争っているのは美食の国として名高いティエールの王、ルノー・ラ・ティエールと芸術の国の王、フェルナン・ド・ノーブリーだった。


「あのお方は我が国を先に訪れた! つまり、貴国よりも我が国の方が魅力が高いという事だ」

「ただ順番通りに巡っているだけだろうが! それよりも、我が国の方が長く滞在している。つまり、貴国よりも我が国の方が見るべきところが多かったという訳だ!」

「十数分程度の差という事は知っているぞ! ただの誤差だ!」


 以前から犬猿の仲だったティエールとノーブリーの王の言い争いは放っておくと延々と続く。

 それを知ってか知らずか、獣人の国ハイランズの王、ダニエル・ハイランズが話に加わった。


「シズト様が長く訪れたところが魅力的という事であれば、我がハイランズは両国よりも魅力的、という事だな!」


 誇らしげに胸を張るダニエルだったが、実際はただお嫁さんに振り回されて時間が伸びてしまっただけだった。

 だが、そんな事をここにいる者たちは知る由もない。

 ぐぬぬ、と似たような表情でダニエルを見る二人の王に視線を向けていたギュスタンは、自分の場違い勘をひしひしと感じていた。


(なんで各国の王様や高位貴族の方々の中に俺がいるんだろうなぁ。せめてシズト様がいらっしゃったら畑の魔道具のお話ができるんだけど……いや、それはそれで注目を浴びるのか。じゃあ来なくてもいいか)


 ギュスタンがそう思ったからではないが、今日もまたシズトが会議に顔を出す事はなく、代理人のムサシという大柄な男が会議を仕切っていた。

 ムサシの話ではもうしばらくこちらに滞在する、という事だったのでギュスタンは手紙を書いて自分の畑の世話を仲のいい平民たちに託す事にするのだった。

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