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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第24章 異大陸を観光しながら生きていこう

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502.事なかれ主義者は選べない

 日が暮れ始め、出かけていた皆が帰ってきた。

 ホムラとユキについて行ったセシリアさんはすぐにレヴィさんの所に向かった。レヴィさんの所にはシンシーラがいるから、彼女が妊娠した事はすぐに伝わるだろう。

 ノエルも魔道具の案を練るために部屋にお邪魔した時に伝えておいた。

 ただ一言「おめでたっすね」とだけ言うと魔道具に視線を戻したからあんまり興味なさそうだ。


「全然驚いてないけど、知ってたの?」

「ある程度魔力探知ができる者だったら、体の中に別の魔力反応がある事はすぐに気づくと思うっすよ」

「なるほど……」


 妊娠している情報を隠すのは難しそうだ。

 妊娠していると悟られないための魔道具の需要はあるだろうか?

 王侯貴族とか、狙われやすい立場の人だったらそういう情報を伏せておくってのをどこかで見たような気もする。……アニメだったかな?

 そんな事を考えつつ、思いつく魔道具の案をさらさらと紙に書いているのをドーラさんに見守られている時に、ノエルの部屋の扉がノックされた。


「………」

「ノエル、誰か来たら返事しないとダメだよ」


 僕がノエルに注意をしている間に、ドーラさんが小走りで扉に向かっていき、ゆっくりと開けた。

 長身の女性二人組が室内に入ってくる。ラオさんとルウさんだ。

 ダンジョンの探検をした際に手に入った物を買い取ってもらうためにギルドに出かけていた二人だったけど、着替えもせずにここにやってきたようだ。

 ドーラさんは既に全身鎧を脱いでいるのにも関わらず、二人はまだ武装している状態だった。


「どうしたの? なんかあった?」

「シズトくん、どうやら私たちも妊娠しちゃったみたい」

「私たちもって……ルウさんとラオさん二人とも!? ほんとに?」

「ほんとみたいっすね。お腹の中に別の魔力を感じるっす」

「ん、間違いない」


 ノエルはラオさんとルウさんの方に視線を向ける素振りもなかったけど魔力で分かるようだ。

 ドーラさんは二人のお腹をジッと見ながら頷いた。


「この前、シンシーラちゃんと一緒に私たちもしたから、もしかしたらって思ったけど、こういう予感って当たるのね」

「わりぃけど、プロス様にどっちの子どもに加護を授かってるか確認してもらっていいか? 加護の有無でどうこうするわけじゃねぇけど、優先順位をつけるために知っておきたくてな」

「まあ、過ごしていくうちにいずれ分かると思うけど、一応ね?」


 ラオさんとルウさんは冒険者ギルドで清算をしている時に気付いたそうだ。

 順番で言うとラオさんの方が先に妊娠したらしいけど、そのすぐ後にルウさんのお腹の中にも命が宿ったらしく、どっちの方に加護が授けられているのか気になるらしい。

 それで優先順位がついてしまうのは何とも言えない気持ちになるけど、神様が身近にいて加護を授けたり神託をしたりするからか、この世界の人々は神様の意思を優先して行動する事が多い。

 加護を授かっている子と授かっていない子だと扱いに差が出る事は貴族の家ではよくあるそうだ。

 この価値観には慣れたくないなぁ、と思いつつもプロス様に報告をするためにも建物を出て世界樹フソーの根元に建てられた真新しい祠へと向かった。




 祠で祈りを捧げるとすぐに周囲の音が消えた。目を開くと、真っ白な世界が広がっている。

 そんな世界には僕以外に三人……いや、三柱いた。

 僕に加護を授けてくださった神々で、今日の主役です! といった感じで真ん中に立って胸を張っているのがプロス様だ。どうやら僕たちの様子を見ていたらしい。


「バッチリ見てたよ! 二人同時に赤ちゃんできるなんてビックリ!」


 大きな目をまん丸にしたプロス様よりもビックリした自信がある。

 っていうか、見られてるんだったらこうして伝えに来る必要もなかったのでは?


「いつも見ているわけじゃないんだよ……?」

「お、おめでとーなんだなー」

「ありがとうございます。それで……プロス様はラオさんかルウさん、どちらの子どもに加護を授けたんですか?」


 僕がそう尋ねると、プロス様は眉間に皺を寄せた。


「まだ決まってないんだよ……?」

「は、早くしないと他の神にとられちゃうんだな」

「分かってるもん! でも同時になるなんて考えてなかったもん!」

「ぜ、贅沢な悩みなんだなぁ」

「シズトくんはどっちがいいとかあるのかな……?」

「そう! シズトの意見を聞こうと思ってたの! だからここまで来てもらったの!」

「よ、呼んだのはオイラなんだなぁ」

「意見って言われても……」


 加護の有無で関わり方を変えるつもりはないし、どっちも僕の子どもだ。

 自分の子どもに苦労させたくはない。

 加護を授かったら仕事に困る事はないだろうけど、大変だという事は目に見えている。

 ただ、加護がなかった事によって辛い思いをしたとモニカさんから聞いてもいた。

 子どもの事だけを考えたらどっちか選ぶ事はできそうにない。

 じゃあラオさんとルウさんの事を考えて選ぶとしたら、と考えてみたけど結局それでも選べそうにない。

 加護を授かったら母体の方の体調不良などがほぼほぼないし安産になるからだ。安全性を保障してもらえるんだったらぶっちゃけ両方ともに授けて欲しい。でも、それは無理な訳で……。

 しばらく考え続けたけど、結局答える事ができず、プロス様にお任せする事になった。

 プロス様はうんうんと唸って考え続けていたようだったけど、僕と一番長い付き合いだったからラオさんが選ばれた。


「そ、それじゃ、また用があったら呼ぶんだな」

「すみません、もう一つエント様に聞きたい事があるんですけど、シンシーラのお腹の中の子には加護を授けてますか?」

「神力が足りないから授けてないよ……?」

「ですよね」

「も、もういいんだな? な、長く呼ぶとそれだけ神力を使うんだな」

「あ、はい。大丈夫です」


 僕がそう答えるとすぐに意識が現実に戻ってきた。

 ラオさんとルウさんは僕の様子をジッと見ていた。

 ラオさんのお腹の中にいる子に加護が宿っている事を二人に伝えると、ラオさんは何とも言えない表情になった。僕も同じような顔になってた気がする。

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