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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第24章 異大陸を観光しながら生きていこう

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幕間の物語246.若き女王の予想は当たった

 今回、シグニール大陸にある半数以上の国々が集まったのは、邪神の信奉者によって広まった『呪い』に関する情報共有と対策が主な理由だった。

 ランチェッタは、各国代表たちの前に置かれた資料と同じ物に目を通した。

 呪いが身体的接触を通じて広がっている事が民衆の間に広まった結果、互いに距離を取るようになったが、経済活動は一時期と比べると回復してきているようだ。

 魔道具『鑑定眼鏡』が転移門の門番をしているエルフたちに配備された事により、転移門を通じて邪神の加護を授かりし信奉者たちが移動する事は防ぐ事も出来ている。

 また、『鑑定眼鏡』が出回り始めているため、邪神の信奉者の発見も増えているようだ。肝心の『呪伝』の加護を授かった者はまだ見つかっていないため、『鑑定眼鏡』が配備されている街を避けているのだろう、との事だった。

 会議場にいる者たちが一通り資料に目を通したであろうと判断したランチェッタは口を開いた。


「皆様、お集まりいただきありがとうございます。資料が行き届いているようですので、シグニール国際会議を開催するのですわ。今回の主な議題は邪神の信奉者に対する情報の共有と、対策について。各国に現れた邪神の信奉者の情報はお手元の資料にある通りですわ。転移門が設置されている街や、首都を避けて現れている様ですわね。ここに載っていないが、最近呪われた者が現われたという報告を受けている国はありますか?」


 ランチェッタが問いかけると、その場にいた者たちは互いの顔を見合わせていたが、一人だけ胡散臭い笑みを浮かべたままランチェッタを真っすぐに見ている者がいた。

 神聖エンジェリア帝国の皇帝でありエンジェリア帝国の国教の法王でもあるアルスリア・デ・エンジェリアだ。

 豪華絢爛な法衣に身を包み、会議が始まるまではヒト族以外の者に対して冷たい視線を向ける事もあった中年の男性は、今はただランチェッタを見ていた。口元は綻んでいるが、目は笑っていない。

 何かしらまた言ってくるんだろうな、と思っていると、ランチェッタの隣に座っていたドラゴニア国王であるリヴァイ・フォン・ドラゴニアがふと思い出したように口を開いた。


「そういえば、少し前にエンジェリアから流行病が広まった際に、エリクサーを求めてユグドラシルを訪れた者がいたそうだ。確か、エンジェリアからの使者で、第一王子が呪われたからだったと思うが、それはここには書かれてないな?」


 リヴァイの声が魔道具を通じて部屋にいた者すべてに届いたが、アルスリアの表情は崩れる事はなかった。

 多くの者たちからの視線を受けた彼は、ゆったりとした動作で自身の手前にあった魔道具を起動した。


「その件に関しては、今回の『呪伝』の加護の騒動とは無関係だと判断して報告しなかっただけだ」

「タイミング的には流行病のような物と同時期に呪われた者が出ているのが気になるんだが、無関係と断言する根拠は?」


 リヴァイが再度確認すると、アルスリアは小さくため息をついた。


「呪いが広まったのは息子の呪いが完治してからしばらく経ってからだ。戦場に現れた邪神の信奉者をその身を犠牲にしてでも退治した功績を褒められるのは分かるが、疑われるのは心外だ。今回、広範囲に呪いが広まってしまっているのは、前回の流行病と同様で異世界転移者が作り出した転移門を各国に設置してしまったのが原因だろう。実際、転移門が設置されている国や街の近くではまだ呪いが広がり続けているじゃないか」

「それは否定しきれないですわね」


 ランチェッタが認めると、アルスリアは口元の笑みを深くした。


「で、あるのにだ。その異世界転移者は呪いの治療薬となる物を流通させる場所を制限している。自身が作った魔道具によって引き起こした事態だというのに、いささか無責任なんじゃないか? ああ、ガレオールもドラゴニアも、ドタウィッチも優先的に薬を回してもらっているから問題視してないのか」

「現実的に考えて、上級ポーションもエリクサーも作れる数が限りがあります。それを何も考えずに平等に分配するより、一国ずつ集中して治療して回った方が効率的ですわ。ガレオールが最優先で薬を供給されたのは転移門が設置された今、シグニール大陸の経済の中心となりつつあるからですわ」

「付け加えるとすれば、根回しがしやすい所からしていっただけじゃな。ワシの所は損害が出た者へは国からも補填すると言ったら各ギルドの抵抗がなくなったぞ? 他の国々もそうすれば早く薬が回ってくるんじゃないかと思うがのう。……ああ、でも世界樹騒動の際に確執ができてしまったエンジェリアは最後の方になるかもしれんのう」


 ランチェッタの隣で自分の白い髭を撫でていたフランシス・ドタウィッチの最後の呟きは、彼の前に置かれていた魔道具に拾われて、部屋にいた者たちの耳に入った。

 元都市国家ユグドラシルの世界樹の使徒が、エンジェリア帝国の勇者に助力を求めて異世界転移者であるシズトを捕らえようとしたのは記憶に新しい。

 エンジェリア帝国が異世界から来た者を独占しようとして裏目に出て、囲い込もうとしていた勇者たちにも逃げられてしまった事も周知の事実だった。


「何より、つながりがある国が優先的に対応してもらえるのはよくある事だろうが。もしも自分の国にシズト殿がいた場合、その力を利用しないと断言できる者はこの部屋にはいないだろう?」


 リヴァイがそう尋ねると、アルスリアだけでなく、先程までひそひそと話をしていたニホン連合の者たちも静かになった。

 リヴァイは「だよな」と満足そうに頷くと、ランチェッタに視線を送った。

 ランチェッタはリヴァイとフランシスに感謝しながらも、会議の序盤でこれだけ時間がかかるのなら今日もまた予定通りに終わらないだろうな、と思うのだった。

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