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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第23章 呪いの対策をしながら生きていこう

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488.事なかれ主義者は予定通りにできなかった

 ドラゴンさんが焼き肉を堪能している間に世界樹イルミンスールのお世話はサクッと終わらせた。

 その後に作った『転移門』はジュリウスに任せ、僕はクーを背負ったまま向日葵ちゃんを探して回った。


「向日葵ちゃん知らない?」

「ドラちゃんの上だよー」

「陽当たりいいんだよー」

「私たちもこれから行くの~」


 起きて活動していたドライアドたちに向日葵ちゃんの居場所を聞いたら、エンシェントツリードラゴンの背中の上を指差した。どうやら彼女はあの背中の上にいるらしい。

 ジュリウスはウィズダム魔法王国から来ているらしい使節団の人と話をしに行っているからここにはいないし、あんまり危ない事をしたら駄目だよな。


「向日葵ちゃんに下りてきてもらうように伝えてくれる?」

「分かったの~」

「伝えたよー」

「眠いから登ってきて~、だってー」


 言いたい事を言い終えると、ドライアドたちはゆらゆらと揺れながらドラゴンの方に歩いて行った。

 ドラゴンの背中に登るって結構ハードなんじゃ……って思ってたけど、クーのおかげであっさりとドラゴンの背中の上に移動する事が出来た。


「貸し一つだからね、お兄ちゃん」

「返すのが大変そうだなぁ」


 ドラゴンの背中には、緑が広がっていた。

 エンシェントツリードラゴンは基本的には四足歩行だから、背中に草木が生い茂っていても問題ないんだろう、きっと。

 ドライアドたちは思い思いの所で日向ぼっこを楽しんでいる。一番の人気スポットは背びれ付近のようだ。背もたれにできて丁度いいのかもしれない。


「向日葵ちゃんはどこかな?」

「あそこじゃない?」


 クーが小さな指で指し示した先には、いつもお裾分けとしてくれるドラゴンフルーツが生っている木があった。

 その幹を背もたれにして、向日葵ちゃんはすやすやと眠っているようだ。

 近づいても起きる気配がなかったので声をかけて見たけど、やはり起きる気配はない。

 仕方がないので肩を揺するとパチッと目が開いてじろっと僕を見てきた。


「えっと……お願いがあるんだけど、今いいかな?」


 さっきまでスヤスヤと眠っていたドライアドたちも目を開いていてジッと僕を凝視してくる。だいぶ緊張するけど、ドライアドたちは僕だと認識できたようで、一人また一人と目を瞑っていった。


「何の用~?」

「ちょっと特殊な草花や実をたくさん手に入れたいから、協力してほしいんだけど、いいかな?」

「んー……私たち、あんまり長い事活動できないよ~?」

「どのくらい活動できる? 一時間くらいあれば十分なんだけど」

「ん~……かわりばんこで良いなら一時間頑張れるよ~」

「じゃあ、まずは好きに植物を育てていい場所を教えてくれるかな?」


 勝手に他の草木を抜いたらドライアド激おこ案件になるので。

 僕がこれからしようと思っている事を説明すると、向日葵ちゃんは「それならぁ、テントの周りは人間さんの場所にする~」と言って、起きているドライアドたちと一緒にドラゴンの背から降りて行った。




 ドライアドたちがテントの周囲に作ってくれた畑は、ファマリーの根元に広がる畑と比べたら狭いけど、一人で作業するには広かった。

 即席で作ったロッキングチェアにクーを座らせて、僕は畑に向かう。

 それぞれの畑ではドライアドたちが種まきやら水やりやらをしている。

 畑に近づいてきた僕に最初に反応したのは向日葵ちゃんだった。


「人間さん、収穫の準備できたよ~」


 彼女は籠を背負っている。どうやら以前までいた世界樹の使徒に貰ったとの事だった。

 他の畑で作業をしていたドライアドたちものろのろと近づいてきた。


「お水たくさんある~」

「種はもうないかも?」

「代わりの子、まだ来ないね~」

「お昼寝したいなぁ」


 ドライアドの一人が大きく欠伸をすると、つられて周りにいた子たちも大きく口を開けて欠伸をし始めた。

 このままだと寝ちゃう流れだ、と慌てて「仕事してからでお願いします!」と言って配置につかせた。

 イルミンスールにいる呪われた人たちを一気に治すためには、各ギルドに根回しするだけでは足りない。

 エリクサーも上級ポーションもどのくらい必要になるか分からないから、とにかく材料を集める必要がある。

 普段は殆ど世界樹にしか使わない【生育】の加護は、本来は『あらゆる植物を育てる力』が備わっている。

 育て方も見れば何となくわかるし、そもそも【生育】を使えばそういうのを無視して急成長する事ができる。

 まあ、成長に足りない分は魔力で補う必要があるから、ある程度環境は整えておいた方が魔力節約になるみたいだけど。


「それじゃ、やってくよ。ドライアドたち、頑張ってね」

「頑張る~」

「たい肥~」

「一杯貰うの~」


 ドライアドたちには例のごとく、魔道具で作ったたい肥を報酬として支払う事とした。

 ここの子たちはやる気がないというか……活動時間に制限があるので、今からやる作業で手に入ったたい肥の半分は彼女たちの物にする事にした。これで少しでもやる気になってくれたらいいんだけど……。

 そう思ってたけど、そういう問題じゃなかったみたいだ。


「実ができるまで育ってください、【生育】! ……よし、それじゃ、収穫から先はお願いね」

「は~い」

「たくさん収穫するの~」

「収穫したら籠の中に入れるんだっけ~」

「収穫し終わったやつ、抜いちゃうよ~」

「堆肥作る~」


 作業を手伝うために集まってくれたドライアドたちは、普段の彼女たちとは比べ物にならないくらいやる気に満ち溢れている。

 ただ、ここのドライアドたちは他の大陸の子たちと比べると、動作がゆっくりとしている。

 そういう習性だから仕方ないのか、ちょっと作業をしたら眠り始める子もいた。

 結局、テントの周りをぐるりと囲んでいる畑全部に【生育】の加護を使う方が早かったので、僕も収穫したり、不要となった草を引っこ抜いたり、たい肥を作るために引っこ抜かれた草を集めて魔道具化した箱の中に入れたりする事になった。

 ……作業用のゴーレムとか、ホムンクルスを作った方が早かったかなぁ、なんて事を思ったけど、交代要員として集まってくるドライアドたちのやる気を見ると、言い出せなかった。

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