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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第23章 呪いの対策をしながら生きていこう

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476.事なかれ主義者は閃かなかった

 シグニール大陸に戻ってきて数日が経ったけど、呪いは蔓延し続けている。

 呪われた人はどんどん増加しているから看護をする手も足りず、看護する人の安全も『身代わりのお守り』の供給が追い付かなくて保障できていない。

 僕と接点が少ない国では、流行病の時と同じように、呪われた人の中で症状が軽い人が看護をするようになった所もあるそうだ。


「重症の人が少ないのがまだ救いですね」


 そう言ったのは、白いもふもふの尻尾がチャームポイントのエミリーだ。

 狐人族の彼女は、普段は厨房で料理をしている事が多いけど、三時のおやつの時間になると僕のところまでやってきておやつの給仕をしてくれる事が最近増えてきた。


「そうだけど……それがいつまでも続くとは限らないからね」


 母数が増えればそれだけ重症の人も増えるし、今は症状が軽い人でも容体が急変して重症化してもおかしくない。

 根本的な解決ができればいいんだけど、邪神の信奉者が見つかったという報告もない。

 結構な数の『鑑定眼鏡』を生産し、各国で使って捜索してもらっているんだけど……やっぱり加護を隠す力を持っていると考えた方が妥当だろうか。

 看破の結界の中でも問題なく変装できる魔道具を以前作った事があるし、そういう魔法があってもおかしくはない。

 ……ああ、でも『看破』じゃなくて『鑑定』だからどうなんだろう?

 ちょっと実験してみよう。

 この部屋の主であるハーフエルフのノエルに視線を向けると、彼女は自分の机でじっと何やら覗き込んでいた。

 乱雑に伸ばされた金色の髪の毛から飛び出た尖った耳は、彼女がエルフの血を引いている証拠だ。


「ノエル、ちょっと手伝って」

「なんすか? 今忙しいっす」


 視線をこちらに向ける事もせずに返事をしたノエルだったけど、返事をするだけまだマシだ。

 僕は無視される事はないけど、他の人の声は届いていないのか意図的に無視しているのかは不明だけど、反応しない事もよくあるそうだ。


「ちょっと『鑑定眼鏡』かけてもらっていい?」


 エミリーにお願いしてもいいけど、彼女は一応仕事中だ。お茶請けの焼き菓子を翼人族のパメラにとられないように威嚇している。

 ノエルはというと、麻雀大会で三位になったご褒美として、一週間ほど魔道具作りのノルマなしで自由に過ごして良い、と許可を貰って自由を満喫中だった。休み明けにノルマの追加も無し、という事で魔道具研究に没頭している。

 仕事の邪魔をするくらいならノエルの方がいいかな、と思ってお願いしたけど彼女は面倒臭がった。


「かけるの面倒っす」

「じゃあかけさせるからさぁ」

「…………まあ、それならいいっすよ」


 隣に座っていた僕の方に顔だけ向けてきたので、アイテムバッグに繋がっている引き出しを開けて、中から専用化していない『鑑定眼鏡』を慌てて取り出す。ノエルの気分が変わらない内にかけさせないと。

 ただ、人に眼鏡をかけた事なんてないんだよなぁ。

 慎重な手つきでノエルに眼鏡をかける。エルフの耳でも眼鏡って駆けれるんだな、なんて当たり前の事を思いつつ、どのみちエミリーはこの眼鏡をかける事ができなかったな、と思い至った。

 眼鏡をかけたノエルは久しぶりに見たけど、それをじっと観察している暇はない。

 急いで変装用の魔道具を身に纏ってみた。

 エミリーがビックリした様子で僕を見てきたのできちんと変装は完了したようだ。

 その隙をパメラが見逃すわけもなく、お皿を抱えて出ていき、それに遅れて気づいたエミリーがパメラを追いかけて部屋から出て行った。


「………普通に加護は読み取れるっすよ。ただ、シズト様が身に着けているのは、姿を変える魔道具だったはずっす。加護を他者に分からせないようにするとか、そういう魔道具は思いつきそうっすか?」

「……まあ、できそう、かな?」

「きっと『偽装』とか闇魔法系のものっすね。じゃあ、『鑑定眼鏡』を欺くほどの魔道具は思いつくっすか?」

「んー……鑑定眼鏡を、ってなるとないかもしれない」


 鑑定眼鏡以外で相手の加護を知る術があるなんて思いつきもしなかったけど、きっとあるんだろう。簡易鑑定とかそういう……できそうだな。ただ、ノエルが言っていた『偽装』とかそういう魔法を見破るほどではなさそう……かな?

 実際に作った方が早いだろうか、と思ったけど朝の間に魔力切れすれすれまで『身代わりのお守り』を作り続けたので、作るほどの余裕はない。明日も明後日も邪神の信奉者対策の魔道具を作り続ける予定だし、そういう魔道具があるって事を知る事ができただけ良しとしよう。


「もういいっすか?」

「うん。ありがとう」


 眼鏡を外したノエルは、再び魔道具に刻まれた魔法陣を読み解く作業に戻った。

 僕は、外を逃げ回るパメラと、彼女を追いかけているエミリーを眺めながら考える。

 魔道具が正常に使われているのであれば、邪神の信奉者は呪われた人の近くにいないのだろう。

 遠方からどうやってたくさんの人を呪っているのか分からないけど、何か方法はないだろうか。

 ずっと考えてみたけど、呪っている方法が分からない以上、『身代わりのお守り』以上の物を思いつく事はなかった。

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