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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第22章 安全第一で生きていこう

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幕間の物語226.『ドライアド観察記録』 著者.ラピス・フォン・ドラゴニア

 今まで謎が多かった種族ドライアド。目撃例は少なく、『魔の森』など前人未到の地に隠れ住んでいるのではないかと考えられていた。

 時折荷物に紛れ込んだ子どもを注意したら頭の上に花が咲いていた事からドライアドだったんじゃないか、と証言する者もいたが、証人は他におらず、真偽がはっきりしなかった。

 ただ、何の偶然か、私の姉であるレヴィア・フォン・ドラゴニアとその夫であるシズト・オトナシが生息地を明らかにし、協力関係を築いていたので観察記録を取ろうと考えた。

 これ以降はその記録である。




 ドライアドたちの生息地は基本的に世界樹周辺らしい。

 世界樹の使徒であるエルフや、彼らに近しい上層部だけがその事実を知っていて、それを隠していたのだろう。

 ドライアドたちは植物と精霊に近い存在のようで、植物を育てるのに長けた種族だった。

 その力を利用して珍しい薬草などを育て、販売していたのだろう。

 世界樹を擁するエルフたちの国が、世界樹の素材だけではなく様々な珍しい植物を育てる事ができたのは、ドライアドたちの影響が大きいだろう。

 そう思って世界樹ファマリーにたくさん集まっていたドライアドたちに聞き取りをしてみた。

 だが、彼女たちは口をそろえてそれは違うと否定した。


「ユグちゃんのおかげだよ!」

「リコちゃんがいるからだよ!」


 ユグちゃん、リコちゃんは誰かの名前ではなく、世界樹ユグドラシルと世界樹トネリコの事だそうだ。

 ドライアドたち曰く、どんな植物でも関係なく育てる事ができるのは、世界樹から漏れ出る魔力のおかげとの事だった。

 世界樹の研究もエルフたちに拒否されていたが、今後、シズト・オトナシに協力を仰げば進む可能性が高い。

 だが、今は世界樹の研究ではなくドライアドの生態調査をする事に集中しようと思う。




 ドライアドは真似をするのが好きらしい。

 シズト・オトナシが誰かを負ぶっているとその様子を見て自分たちも他の子を負ぶったり、自分たちも負ぶってもらおうとよじ登ったりしている。

 レヴィア・フォン・ドラゴニアが何かを話すと、彼女の口癖である「ですわ」の後に「ですわですわ」「ですわ~」と後について言う姿も見受けられた。

 このような事が起きる背景にあると考えられる要因として、ドライアドたちの中では『個』という概念が薄く、他の個体とどこかでつながっている感覚があるからではないかと私は考えている。

 ドライアドたちからしてみると私も姉であるレヴィアもひとくくりに『人間さん』だし、相手が国王だろうが一兵卒だろうが関係なく話しかける。

『個』の概念が全くない訳ではないので、魔力や加護の有無、それからなにより色で判断しているとの事だ。

 ただ、それでもやはり親しい関係になると『同じ個体』という認識ができてくるのだろう。その者の言動を真似する事が増えてくる。

 人族の幼児が親の真似をしたり、職人見習いが親方の様子を観察して真似しようとしたりするのとは異なり、何かしらの意図があって模倣するわけではない。

 ただただ「親しい相手がしていたから私もした」という事らしい。

 ここら辺はドライアドたちとの会話で証明はできなかったので私の推測ではあるが、親しくなる事でドライアドたちの『身内』として認識されるが、身内なのに同じ情報を得る事ができないから自分も同じ事をして同じ感覚を得ようとしているのではないだろうか。


「にょきにょきにょきにょきにょきっにょき~」

「?」


 試しに姉がよく口ずさんでいる歌を歌ってみたが、姉の時とは違って続けて歌ってくれなかった。

 まだまだ私はドライアドたちの仲間として認識されていないようだ。




 ドライアドたちの生活リズムはある程度一定である。

 朝日と共に起床し、日の入りとともに就寝する。

 ただ、ファマリー周辺で過ごしているドライアドたちは若干異なるようだ。


「野菜泥棒を捕まえるの!」

「ぐるぐるってするの~」


 どうやら、彼女たちのテリトリーに侵入し、育てていた植物に危害が加えられた事が原因のようだ。

 それは人間である私たちからしてみると少し前の事だが、彼女たちにしてみると最近起こった出来事だと思っているようだ。

 基本的には好奇心旺盛で人見知りせず、友好的なドライアドたちだが、彼女たちが丹精込めて育てている植物に危害を与えた相手には容赦しないようだ。

 ドライアドと友好的な関係を築きたいと思うのであれば、くれぐれもドライアドたちが育てている植物を伐採したり、成っている実を盗んだりしないように。


「貴女たちが育てている植物って見分け方はあるのかしら?」

「見れば分かるでしょ?」

「………………なるほど」


 ドライアドがいそうなところの植物には触れないようにした方が無難だろう。




 ドライアドたちは活動的だ。

 自分が育てている植物を一通りお世話し終えると、周辺の探索をし始める。

 ファマリアの町の中でドライアドを見かけるのはそれが理由だろう。

 ただ、彼女たちは緑がない場所は苦手らしい。

 ファマリアの周辺は草木も生えないと言われている不毛の大地である。

 町の中も、世界樹を中心に徐々に緑が広がっているが、外縁区周辺には草一つ生えていない。

 だから彼女たちは基本的に緑が広がっている町の内側を散策している。

 彼女たちの散策の目的は、どうやら気に入った場所に『精霊の道』と呼ばれる精霊たちだけが使える道を増やすためのようだ。

 精霊の道を繋げるには条件があるようで、彼女たちの頭の上に生えている植物と同じ物を繋げたい場所に植える必要があるらしい。

 だから放っておくと変な所に種や苗木を植えてしまう。

 ファマリアでは一時期問題となってしまったが、姉であるレヴィア・フォン・ドラゴニアの提案で道を舗装する時に、専用のスペースを作り、ドライアドたちが好むたい肥を混ぜ込んだ土をそこに集めた事によって解決した。

 どうやら、一つ道が繋がれば満足する様で、ある一定の範囲内には種や苗木を植えなくなるようだ。

 ただ、それとは関係なく植物の世話が好きなようで、『精霊の道』を通っていきなり現れたドライアドが周辺の草花に水やりをする姿がファマリアではよくみられる。

 一目見たいと思うのであれば、数日間ファマリアに滞在すれば見る事ができるだろう。

 数カ月だけしかまだ見る事ができていないので、今後も根気よく彼女たちと付き合い、生態を記録していこうと思う。

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