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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第22章 安全第一で生きていこう

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幕間の物語223.お嫁さんたちは止めなかった

 それは、シズトの嫁であるレヴィアとモニカの妊娠が発覚してしばらく経っての事である。

 朝食を自分のペースで食べていたシズトが、ふと思い出したように口を開いた。


「こっちの世界だと妊娠とか出産とかあった時にお祝いってするの?」


 その質問に答えたのは、現在妊娠中のレヴィアだった。

 食後の彼女は無意識でお腹を撫でながらシズトの方を見ると頷いた。


「出産した後は盛大に祝うのですわ。国によって祝い方は差はあるかもしれないのですけれど、基本的にパーティを開いたり、お披露目会をしたりすると思うのですわ」

「そうね。ガレオールでも王侯貴族だけじゃなくて、大商人とかも出産を祝してお祝いをするのが殆どね」


 レヴィアの正面に座っていたガレオールの女王ランチェッタはオークキングのステーキを切り分けつつ、レヴィアの補足をした。


「アタシら庶民だと、基本的に飲み会で祝うだけだな」

「祝い事がなくても飲み会を開いている困った人もいるけどね」


 既に食事を終えていたラオは魔力マシマシ飴を舐めながら、記憶を探るように天井を見上げ、ルウは苦笑いを浮かべた。

 机を囲んでいる者たちの反応を見て、シズトは首を傾げた。


「妊娠の時はお祝いとかしないの?」

「流れてしまう時があるからしないですわ」

「個人的に祝う事もあるかもしれないけど、ガレオールでも聞いた事がないわね」

「私はあまり他の人と関わって来なかったのでぇ、ちょっと分からないですぅ」

「たまーに、妊娠を祝して、って飲んだくれてる奴いなかったか?」

「いたかもしれないけど、たぶんその人たちは何かあったら酒を飲んでるだけだと思うわ」

「なるほど……」


 シズトはもぐもぐとサラダを咀嚼しながら何事か考えている様子だった。

 食卓を囲んでいる面々は、食事を取ったり、食後の休憩を取ったりしながらシズトの様子を窺っている。

 シズトはごくん、と口の中に詰め込まれていたサラダを飲み込むと、口を開いた。


「町の子たちの事でちょっと考えてたんだけど、理由もなしに怪我とか治したら問題になるんだよね?」

「問題、というよりも厄介事が起こりそうってだけですわ」

「小さな怪我だったら問題ねぇけど、部位欠損とかをぽんぽん治してたら、それ目的で冒険者崩れが集まってくる可能性はあるだろうな」

「ただでさえ、シズトくんの奴隷になりたがる人は多いと聞くわ」

「そりゃ奴隷とは思えねぇ待遇だからなぁ」


 ラオとルウの会話を聞いて、シズトは「問題ない怪我ってどのくらいなの?」と尋ねると、ラオは「自然治癒するような怪我だな」と即答した。


「奴隷に無償で与えるぐらいなら、俺たちによこせ、っていう貴族や商人は出てくるわね、きっと」


 ランチェッタは、思案するかのように腕を組むと、その規格外の大きな胸がさらに強調される。

 シズトはその強調された部分をチラッと見たがすぐに視線を逸らしてレヴィアを見た。彼女もまた腕を組んでいたのでさらに視線を逸らして奥の方に座っていたドーラを見る。


「理由がなかったらダメなら、祝い事とかそういう理由があったら良いって事だよね?」

「ん。前やった大会。その賞品ならいい」


 普段は会話に参加しない事が多いドーラだったが、視線を向けられて話しかけられたら流石に返答はするようだ。

 こくりと頷くと、その眠たそうな印象を与える青い目でシズトを真っすぐに見た。


「じゃあ、出産祝いで町の子たちの怪我を治すとかどうかな? エリクサーとか、上級ポーションとか、ある程度余裕あるんでしょ?」


 シズトが振り返って後ろに控えていたジュリウスに確認すると、彼は「現在の奴隷全員に供給できる程はありませんが」と言った。


「選別はどうするのですわ? 初期の頃は、とにかく人手を増やすために、安価な怪我をした奴隷を買ってたから相当数いるのですわ」

「真面目に働いている子から順番にしたら? 管理はホムラとユキがしてるんだっけ? そういうの、分かる?」


 話を振られたホムラとユキは揃って首を横に振った。


「怠惰な者は一人もおりません、マスター」

「奴隷だからってのもあるけど、今の奴隷とは思えない程の扱いを維持してもらうために、捨てられないようにみんな頑張ってるのよ、ご主人様」

「生活に支障が出るレベルの者からしていくのが良いと思うのですわ。中には、戦闘奴隷だったけど怪我をして戦えなくなった腕利きの者もいたはずなのですわ! 今後、護衛として使えるようになるのは良い事だと思うのですわ!」

「怪我をしてない者たちの中から一定数、奴隷から解放してもいいかもしれないわね。他の国じゃ分からないけど、ガレオールだと借金奴隷の借金を免除していた時があったはずだわ。そうよね、ディアーヌ」

「はい。直近では侯爵家の出産祝いに行われていたはずです」


 ランチェッタの後ろに控えていたディアーヌという専属侍女が答えると、ランチェッタは満足そうに頷き「奴隷たちの間で生まれるだろう不公平感を減らすためにもいいんじゃないかしら?」と小首を傾げた。

 シズトは何度も頷きながら小さな声で反芻するように呟いていたが、しばらくするといい笑顔を浮かべた。

 ラオはその笑顔を見てまた何かやらかしそうだな、なんて思ったそうだが、止める事はしなかった。


「じゃあ、出産祝いで町の子たちの怪我をエリクサーを使って治そうか。日常生活で苦労してそうな人から順番で。ジュリウス、どのくらい準備できそう?」

「シズト様達に万が一のことがあった時のための予備として数十本残すとして、出産時期までにはエリクサーを二十本ほどご用意できるかと。他の材料を大量に仕入れればそれ以上の数を用意できますが、市場の混乱は避けられないでしょう」

「じゃあ迷惑をかけない範囲で作っておいて」

「かしこまりました」

「あと、借金奴隷を中心に、奴隷から解放をする人を選定しておいてもらえる? 勤務態度……はみんな同じなら、勤続年数が長い人から順番にでいいから。人数は……よく分かんないからホムラとユキに任せていい?」

「かしこまりました、マスター」

「しっかり選定しておくわ、ご主人様」


 このような経緯があり、シズトの奴隷たちへのエリクサーの使用と、一部の者たちの奴隷からの解放が決まった。

 数か月後、出産祝いの祭りと共に実施されると、シズトの奴隷になりたがる者が急増したのは言うまでもない事だった。

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