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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第22章 安全第一で生きていこう

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453.事なかれ主義者は帰っていくのを見送った

 イルミンスールの人に「良きに計らえ」と言ったら面倒な事になりそうだったのは分かっていたからジュリウスに視線を送ると、彼は僕の代わりに交渉をしてくれた。

 金銀財宝は興味なかったんだけど、ジュリウスはまずそこから求めた。


「もちろんです。宝物庫の中のものは全て差し上げます。目録も用意させてありますからご覧ください」


 間に置かれた机の上に紙束が置かれた。

 僕が座っている椅子の隣で立っているジュリウスを見ると、頷かれたので紙束を持って中を見てみるとめちゃくちゃいろいろ書かれている。


「随分と溜め込んでたんですね」

「我々が、というよりも前任の使徒様が、ですね」

「前任の人から没収したんですか?」

「いえ、前任は我々が捕える前に亡くなっていたので」

「そうなんですか? 何かあったんですか?」

「呪い殺されてしまったようです」


 イルミンスールに広まっている呪いの矛先が彼にも向いてしまったようだ。

 これは本格的に向かう時の事を考える必要がありそうだ。

 目録を見ながら考え込んでいると、キラリーさんと僕のやり取りを黙って見守っていたジュリウスが耳打ちしてきた。


「いかがですか、シズト様。この目録にある物だけで問題ありませんか?」

「いいんじゃない?」

「いや、それだけじゃ全然足りないです! 我々の過ちを償う機会をください! そのために若い娘を――」

「シズト様はあなたたちが考えているような事は厭います。不利な立場になりたくないのであれば口に出すは避けた方が良いでしょう。対外的なポーズで言うのであればこれで十分だとシズト様が判断したのです。その後、シズト様に忠誠を誓ったり、生育の神ファマ様を信仰したりするのは自由にすればよろしいかと」


 若い娘をどうするつもりだったんだろうなぁ。

 言われなくてもわかるから何とも言えない表情になってしまったけど、その表情をキラリーさんとその後ろにいる人々が見て、それ以上何も言わなくなってしまった。


「忠誠を誓うとかは別にいいんですけど、ファマ様はちゃんと信仰してくださいね」

「は、はい! 国を挙げて信仰させていただきます!」

「あと、ファマ様と仲良しの神様が二柱いますから、彼女たちも信仰してくれると嬉しいです」

「シズト様が信仰されている他の神々の事ですね、もちろんです! お任せください!」

「具体的に言うと、加工の神様とか特に信仰してくれると嬉しいですね」

「御心のままに!」


 エント様は放っておいても勝手にどんどん信仰されるから、放っておいても大丈夫だろうけど、プロス様はなぁ……信仰を得るために動いて行かなくちゃ。

 そう考えていたら、ジュリウスが僕の方を見て口を開いた。


「イルミンスールの一部の者たちを宣教師にしてはいかがでしょうか」

「宣教師っていうと……他の国に行って宗教を広める人? そういう事しても大丈夫なの? 国際問題とかにならない?」

「国にもよりますが、だいたい大丈夫です。シズト様が直接教会を建てていくのは良き事かと思いますが、シズト様だけだと限りがありますし、危険も伴います」

「……確かに? じゃあ、そこら辺もいい感じにやっておいてくれますか?」

「お任せください!」


 僕がお願いをしているからか、キラリーさんは先程からはきはきと返事をしている。

 ただ、一部のエルフは狂信的だったりするしなぁ。イルミンスールのエルフがそうならないとは言い切れないだろう。

 エルフだけに任せるのはちょっと怖いから、宣教師の教育係として誰か派遣しよう。


「ファマ様たちの教えについては、また今度しっかり伝える事ができる人を派遣します。その人から教わってくださいね」

「かしこまりました!」


 その他、世界樹の素材の取り扱いや収益についてはジュリウスが良い感じにまとめてくれた。

 後は僕がどう向かうか、で話し合いをしたけど、結局転移陣を持って帰ってもらって、世界樹の根元に設置してもらう事になった。


「世界樹の根元にはドライアドと世界樹を守っているドラゴンがいますが、事前に伝えておきます!」


 ……守護龍かぁ。

 ちょっといきなりのご対面は怖いけど、邪神の信奉者の事を考えると街中に設置してもらうわけにもいかないし……しっかりと話を付けておいてもらうようにしよう。




「それでは、一週間後の正午に起動しますので、よろしくお願いします」


 そう言って、キラリーさんたちは転移陣を使って王城から去っていった。

 リヴァイさんが時間短縮のために王都と港街ドラコを繋ぐ転移陣を設置しておいてくれたおかげだ。

 僕も行くかもしれない、という事だったけど一週間の船旅は飽きるだろうし、呪いが蔓延している国に正規ルートで行くのはちょっと怖い。


「この転移陣はどうすればいい?」


キラリーさんたちが転移した後、リヴァイさんが転移陣を指差しながら聞いてきた。


「んー……ドラゴニアだけにいくつも転移陣があるのは良くないかな? どう思う、ジュリウス」

「問題ないかと。ガレオールにも複数設置していますし、シズト様と良好な関係を築いている国はメリットがある、と思わせるためにも必要な事だと思います」

「あー、そういえばガレオールにも島同士を繋ぐ転移陣を設置してたっけ」


 自分が使ってないからすっかり忘れていた。

 でもまあ、ジュリウスが問題ないって言うなら大丈夫かな。

 港街の観光はガレオールで十分満喫できるし僕が利用する事はないけど。


「そういう訳だから、このままでいいよ」

「助かる。異大陸からの使者を王都に招きやすくなるからな」


 他に思惑がありそうだけど、僕は知らなくてもよさそうな事だから深くは聞かないでおこう。

 それよりも、さっさと帰ってレヴィさんとモニカが無理してないか見に行かないと。

 そう思いながら、背中に張り付いているクーを背負い直し、ジュリウスと共にファマリーの根元に帰る。


「……どうしてリヴァイさんがついて来るんですか?」

「レヴィの事が心配だからだ」


 まあ、分かる。ちょっと目を離したら無理してそうだよね。

 ファマリーの根元に転移するとドライアドたちが出迎えてくれたので、彼女たちにレヴィさんの下へ案内してもらうと、レヴィさんは元気に農作業をしていた。

 ただ、その近くにはパールさんがなぜかいた。

 彼女はリヴァイさんを見ると目を吊り上げて、少しの間言い合いをしていたけど、リヴァイさんを引き摺って転移陣の方へと歩き出した。

 まあ、娘が元気に過ごしているのを見る事ができただろうし、満足だろう。


「まだ一言も話しとらんぞ~~~」

「お仕事頑張るのですわ~~~」


 残りたいと駄々を捏ねるリヴァイさんを連れて行くパールさんを、レヴィさんとその真似をするドライアドたちと一緒に見送った。

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