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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第22章 安全第一で生きていこう

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幕間の物語222.元訳アリ冒険者は続けるつもりだった

 シズトがファマリーの根元にある屋敷に引き籠って魔道具製作に専念しているため暇ができた専属護衛のラオとルウは、ドーラを連れてドラン公爵の領都ドランにやってきていた。

 元パーティメンバーであるイザベラからの指名依頼はすでに終えていたが、腕が鈍らないようにダンジョンに潜って鍛錬を続けているようだ。

 ただ、その前に必ず立ち寄る場所がある。

 主にお喋りなルウが、長い赤い髪の毛を指で弄りながら話しつつ、彼女たちは歓楽街の方へと歩いていた。

 だんだん扇情的な格好をした女性たちが通りの端の方に目立つようになったところで、目的の場所が見えてきた。

 ずいぶんと年季の入った教会だ。敷地の手入れは行き届いているが、建物自体は古いのだろう。以前は真っ白だったであろう壁は、雨風に晒されて若干くすんでいる。

 その教会の特徴は、礼拝に来るのが女性ばかりという事だろうか。

 その教会に祀られている神は地母神アイア。大地の女神であり、豊穣を司る神でもあり、出産に関係する加護を授ける神でもあった。

 上流階級であろう身なりの者たちの目的は安産祈願だったり、妊娠祈願だったりする。

 肌の露出が多く、魅惑的な肢体をした者たちの目的はその反対の避妊だろう。

 ラオとルウ、それからドーラは後者の目的のためにやってきていた。

 加護を授かっている神父に流れ作業のように【避妊】の加護を使われ、豊満な肢体を持つ女神像の前で祈りを捧げた後、三人はすぐに教会を後にした。あまり長居するような場所ではないからだ。

 ダンジョンへと向かう道中で最初に口を開いたのはルウだった。


「しばらくは避妊のお願いをし続けるとして、プロス様の準備が整ったらどうする?」

「またその話かよ」


 ラオがうんざりしたような表情を浮かべながらため息を吐いた。

 ここ最近、シズトがいない所で同じ話が繰り返されていた。


「大事な事よ」

「順番なんてどうでもいいだろうが」

「一番最初、プロス様の加護、授かる可能性高い。大事」

「まあ、ドラン公爵の関係者のお前からしたら一番大事な事かもしれんけどよ」

「違う。二番目。一番はシズトの命」


 ドーラが淡々と述べた事に、ラオは足を止めて思わず彼女の方を見た。

 全身鎧のせいで彼女の表情は見えないが、本音だという事はある程度付き合いがあるから分かった。

 ラオは再び歩き始め、後ろからついて来る二人を見ずに言う。


「……分かってんじゃねぇか。だから、一気に全員が妊娠するわけには行かねぇだろ」

「だからって、ラオちゃんだけが避妊の祈りを続ける必要はないでしょ」

「いいんだよ、アタシは。元々危なっかしいあいつを守る事ができればそれでいいし」

「シズトくんの子どもは欲しくないの?」

「そうは言ってねぇだろ。いつか作るってだけだ。早いか遅いかってだけだろ」

「だから、遅くなると加護を授かれないかもしれないじゃない」

「別に加護がなくたって構わんさ。むしろのんびり過ごせるんじゃねぇか?」

「一理ある」

「ドーラちゃん!?」


 ラオの隣で姉の考えを変えさせようとしていたルウが、驚いた様子で後ろからついて来ていたドーラを見た。

 だが、ドーラは気にした様子もなく淡々と話し続ける。


「シズトに集まっていた負担が子どもに向かう。のんびり過ごさせるなら加護を授からない方が良い」

「そういう事だ。プロス様にはわりぃけど、元々避妊しようかと考えていたところだったんだ。金がかかるだけでデメリットはねぇし、このまま避妊を続けるさ」

「……デメリットはない。でも、リスクはある」

「リスクって何かしら……?」

「子どもができる前にシズトが死ぬかもしれない」


 ドーラの発言に、仲良く並んで歩いていた二人とも石のように固まった。

 流石双子、息がぴったり、なんてどうでもいい事を考えながらドーラも立ち止まった。


「……そんな事にならないようにアタシが専属護衛としていつでも動けるようにするって話だろ」

「実質的な専属護衛はジュリウス。彼に行けない場所は確かにある。でも、避ければ彼だけで問題ない。それに、襲撃については心配してない」

「じゃあ、シズトくんがどうして死ぬなんて思うの?」

「護衛じゃどうしようもない事だってある。邪神の信奉者の超遠距離からの呪いとか」

「魔道具で対策してるじゃない」

「万全じゃない。それに、呪いじゃなくても病気で死ぬ人もいる。エリクサーは万能じゃない」


 進行が遅い病気であればだいたい治るエリクサーだが、急に発症して投与が間に合わなければ意味がない。

 エリクサーはだいたい何でも治してしまう薬ではあるが、死んだ人を蘇らせるものではないのだ。


「シズトは、護衛として知らない人を周囲に置くのは嫌がるかも。でも、シズトも、私たちも、いつ死ぬか分からない。子どもを授かるのも運任せな所もある。ずっとできないかも。だから私も、貴女が意図的に妊娠の時期をずらすのは反対」

「……ドーラよりも早く子どもが出来たらどうすんだよ。そうしたら加護を授かるのはお前の子どもじゃないかもしれないぞ?」

「構わない。なかったらのんびり過ごせそう」

「まあ、そうだけどよ……」


 話は終わった、とドーラはダンジョンへ続く道を歩き始める。

 その後ろを何とも言えない表情のラオと、姉の様子を心配そうに見るルウが続くのだった。

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