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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第4章 助手と一緒に魔道具を作って生きていく。

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幕間の物語20.借金奴隷は奴隷のままでいたい

ブックマーク登録といいね、ありがとうございます。

 ドラゴニア王国内では南の方にあるドラン公爵領。

 その公爵領の中でも南に位置するダンジョン都市ドランではいろんな技術者が生活を営んでいる。

 ダンジョンから取れる質のいい魔物の素材や、珍しい鉱石の数々。国境を越えてやってくる商人たちが持ち込んでくる世界樹の葉を代表とする珍しい交易品等々、職人たちにとって必要な材料が揃う街として有名だった。

 その職人集団に自分も含まれるのだろうか、と元愛妾屋敷に住んでいる奴隷はふと作業の手を止めて考える。

 癖のある金色の髪をガシガシとかきながら考える物の、彼女は自身の身分の事を考え、「職人の前に奴隷だったっす」と、考えを切り捨てた。

 奴隷である事に彼女は不満を持っていなかった。

 奴隷になる前の頃の生活と比べても劣っていない。ご飯やお風呂に関しては生活水準が劇的に上がっているからも理由ではあった。ただ、何より彼女の趣味と言っても過言ではない魔道具研究にここでは没頭できる事が何よりも大きな理由だった。

 そんな彼女に、彼女の主である黒髪の少年はいきなりこう言った。


「ノエル、奴隷辞めて魔道具師になってよ!」

「え、嫌っす」


 ノエルは考える素振りすら見せなかった。

 主が部屋にやってきたというのに、彼女の緑色の瞳が写しているのは今も解析しようと努力している新しい魔道具……というかボウリングのボールから目が離れなかったし、拒否の言葉も全く話を聞いていないかのような返事だった。

 当然、提案した主は驚いている。


「なんで!? 奴隷じゃなくなるんだよ? めっちゃいい事でしょ?」

「そうっすねぇ。確かに外に出るんだったら奴隷じゃない方が何かと便利っすね。ただ、シズト様の奴隷になってからだいぶ経つっすけど、外に出る気が全く起きないっす。そう考えたら別に奴隷から解放される必要ないかなぁ、って思うっす。何より、今の奴隷生活に不満はないっすし、ここで奴隷じゃなくなったらご飯とか身の回りの世話とか誰が面倒見てくれるんすか。魔道具だって奴隷だから好きなように見せて貰えてるっていう状況っすよね。奴隷じゃなくなったら他人じゃないっすか。魔道具の中でも見せてもらえないものも出てくる可能性があるって考えたら奴隷から解放されるデメリットの方が大きいんすよ」


 ノエルはボウリングのボールに刻まれた魔法陣を見ながら「もっと大きく刻んでくれないっすかね」とぼやいた。


「じゃあ今まで通りの生活を維持するから魔道具師になってよ! 養うから!」

「なんか胡散臭いっす。そんな感じの事言われてお金を工面してくれてた人たちがボクを騙して借金漬けになってたっす。絶対裏があるっすよね?」

「いや、裏っていうかちょっと色々あって僕の身代わりになる魔道具師が欲しくてね?」

「なんかきな臭いっすね。変な魔道具作って誰か死んじゃったとかじゃないっすよね?」

「あ、そういうのじゃないです」

「じゃあ何なんすか」


 ノエルはやっとボウリングのボールから視線を外して、ひび割れたレンズを通してシズトを真っすぐに見た。

 シズトはどこから話したものか、とうんうん唸っていたが、少しすると口を開いた。


「何というか、昔の知人がドランに来てるらしい? から見つかりたくないんだよね。変装はするんだけど、魔道具売ってるホムラがどうしても注目は集めるだろうし。ホムラが注目を集めたら当然ここにやってくる可能性は高い訳だし、そうなった時の身代わりが欲しいんだよ」

「そうなんすねぇ。今更感がすごいっすけど、その程度だったらボクは奴隷のままでもいいんじゃないっすか? 別にシズト様に成りすまして昔の知人の相手をしろってわけじゃないんすよね?」

「いや、確かにそうなんだけどね。それとは別件で貴族の相手もさせようかな、って。貴族の話す相手が奴隷だったら面倒な事になりかねないでしょう?」

「やっぱクソ面倒臭い事じゃないっすか!」

「いやいや、まだ関わるって決まったわけじゃないし? 借金も肩代わりしてチャラにしてあげるからさ」

「その借金はシズト様の側で魔道具作ってたらそのうちなくなる物なんで、交渉材料にならないっすね」

「ぐぬぬっ。こうなったら……奴隷のままでいたいなら、よ、夜の相手とかもしてもらうよ! それでもいいのっ?」

「いいっすよ」

「軽っ!! もっと自分の体大事にしよう?」

「いや、別にシズト様の事、嫌いじゃないっすし。夜の相手は奴隷になった時に、女だとばれたらさせられるだろうなぁ、って覚悟はしてたから問題ないっすよ。シズト様の見た目、好みではあるっすし」

「じゃあ変なプレイとかしてやってやんよ! それでもいいの?」

「別にいいんじゃないっすかね」


 どこまでも話は平行線だった。

 シズトにとっては脅しだと思う言葉はどれも奴隷に対する扱いとしてはあり得る事だったからノエルにとっては何を今更、という印象だ。

 そもそも奴隷に対しての扱いがこれでいいのか、と思うのがシズトに雇われている奴隷たちの総意だった。

 確かに彼らの主は黒髪で、おそらく転移者の子孫だったんだろう。そして、転移者からの価値観を少なからず受け継いでいて、奴隷に対する扱いもそれが起因するものなのだろう。

 転移者の子孫は少なからず転移者から転移者の常識を受け継いでおり、それがいい物もあれば、悪い物もあるのだが、シズトはいい物を多く受け継いでしまったのだろうな、とノエルは再確認した。


「とにかく、今の理想の生活を維持するために、ボクは奴隷から解放なんてされないっすからね! 夜の相手だろうが、変態プレイだろうが理想の生活を守るためだったら何だってしてやるっすよ!」


 主従契約は仲介人である奴隷商を通して結ばれるものであり、主人の希望で勝手に切る事が出来ない。

 主人を脅して仲間だった奴隷を解放する事を阻止するためとも言われているが、実際はよく分かっていないのが契約魔法だった。

 いつか解明したいなぁ、なんて思いながらノエルは周りでキャンキャン騒ぐ主人を置いておいてホムラから頼まれていた魔道具制作に取り掛かった。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
何でって?ってさ~・・・ここに・・・アンタの傍に居たいだけだよ。 分かれよポンコツ  ヽ(`Д´)ノプンプン
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