439.事なかれ主義者は一安心した
世界樹フソーからアルバイトをしにやってきていたドライアドたちに、世界樹フソーの根元の様子を聞いてみたけど、危険はなさそうという事で様子を見にフソーへやってきた。
出迎えてくれたのは小柄なドライアドたちだけだった。古株のお菊ちゃんは見当たらない。
いつも世界樹フソーの上の方の枝に止まっているフクちゃんもいなかった。どうやら向こうでドライアドたちが言っていた通り、二人……一人と一匹? で外に出ているらしい。
普段転移してきたらすぐに現れるムサシも、どこかに行ってしまっているようだ。
とりあえず世界樹のお世話でもするか、と皆に周囲の警戒をしてもらいながらフソーに【生育】の加護を使って魔力を与えた。加護を使われた世界樹が淡く輝く。
加護を使った時の魔力に気が付いたのか、ジュリウスがアダマンタイト製の格子の向こう側に現れた。
彼は精霊魔法で空を飛んでいる。ドーム状の檻だけど、上の方にはフクちゃんが通り抜ける事ができるくらいの隙間があるので、そこを通って、僕の前に降り立った。
「連絡が遅くなり、ご心配をおかけして申し訳ございませんでした」
開口一番、ジュリウスが謝罪してきた。深々と頭を下げて、上げようとしない。
「いや、無事だったらいいんだけど……どこも怪我してない?」
頭を下げているジュリウスの周りをくるくると回って、彼の体を観察してみたけど、目立った外傷はなさそうだ。防具がちょっと汚れているくらいだろうか。
「どこにも傷は負っておりません。呪いも、シズト様がたくさん『身代わりのお守り』を作って頂けたので、受けてないかと思われます」
ジュリウスがやっと顔を上げた。
レヴィさんを見ると、大丈夫、という感じでこくりと頷いている。魔道具『加護無しの指輪』は彼女の首元にあるから、嘘はついていないという事だろう。
ラオさんが僕の頭をポンポンと叩く。
「だからジュリウスだったら大丈夫って言っただろ。むしろジュリウスで倒せねぇ敵がいたらアタシらじゃどうしようもねぇよ」
「そうねぇ。私も、とっておきの技を使えば、数回くらいジュリウスよりも速く動けるけど、その後は反動で動けなくなっちゃうから、シズトくんを逃がすくらいしかできないわ」
「パメラは魔法を使わなくても空を飛べるデス!」
「それだけじゃん。私も五感は鋭いけれど、それだけじゃん」
冒険者組はジュリウスの力を認めていて、信頼しているようだ。
ジュリウスも特に否定しない所を見ると、この中にいる誰よりも強いと自負しているのだろう。
「僕たちと別れた後、邪神の信奉者? と戦ってたんだよね? ずっと戦ってたの?」
「いえ、シズト様を襲撃した者に関しては相性が良かった事や、シズト様の魔道具があった事もあり、一時間もかからずに戦いが終わりました」
「一時間ってなげぇな。そんなに厄介な加護を持ってたのか?」
「呪われないように警戒しながらだったらそのくらいになるんじゃないかしら?」
「時間がかかったのは生け捕りにして情報を吐かせるためです。呪躰の加護も持っていたようなので遠距離からの打撃系の魔法を使い続け相手の魔力切れを狙っていたのですが、あと少しという所で相手が自決しました」
「邪神の信奉者の特徴として、負けそうになったら自決するのはどこの大陸でも同じみたいですわね」
「その後は、北部同盟軍の方々に協力してもらいながら、邪神の信奉者を手引きした者がいないかムサシ様に探してもらい、私は他に邪神の加護を授かっている者がいない見て回っていました。シズト様が以前作られていた魔道具で加護持ちを見つける事はすぐにできたのですが、観光客や商人が大勢フソーにやってきていたので全員確認するのに時間がかかりました」
「見つけた者たちはどうしたのですわ?」
「北部同盟軍の兵士に協力してもらい、各個撃破していきました。周囲にいた者たちには事前に『身代わりのお守り』を渡していたので被害は最小限に抑えられたかと思います」
あんなにいるか疑問だったけど、身代わりのお守りを量産しておいてよかった。これからもとりあえず魔力余っていたら量産しとこう。
呪われた後の治療をするための魔道具は思いつかないから予防するしかないんだよね。
ルウさんはちょっと特殊な呪いだったらしいから後遺症とかは特に残らなかったけど、レヴィさんはエリクサーを使っても紋様が残っちゃってるし。
「ただ、残念ながらどの邪神の加護持ちも捕える事はできませんでした。意識を失っていた者もいましたが、決まって最後に自決するのは何かしら神の思惑もあるのかもしれません」
「邪神が加護を授けた者を自決させている、ということですわ?」
「加護持ちが事前に条件を決めてその時に発動するように調整している可能性もあるかもしれませんが、おそらく……」
なにそれこわ!
三柱はそういう雰囲気ないけど、お願いはしっかり聞いておこう。
とりあえず、世界樹フソーの根元に作り忘れていた祠をササッと作ってお祈りをしたけど、特に何も言われる事はなかった。




