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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第21章 魔道具を作りながら生きていこう

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438.事なかれ主義者は聞くのに苦労した

 朝ご飯の時間になってもジュリウスは戻って来なかった。

 手紙も来ないからジュリウスとムサシに何かあったのかもしれない、と良くない方向に思考が加速していたが、レヴィさんが「とりあえずご飯を食べるのですわ!」と部屋にやってきて今に至る。

 今日の方針を話す、という事で一度警備のために外に出ていたラオさんとルウさんや、寝ずの番をしてくれていたホムンクルスのホムラとユキも戻ってきて食卓を囲んでいた。


「二人とも大丈夫なの?」

「魔法生物には睡眠は不要です、マスター」


 牛乳を飲んで白いお髭を口の上に作ったまま、無表情で答えたホムラの口の周りをハンカチで拭う。

 その様子を見ていたユキも、わざわざ牛乳を飲んで口の上に白い髭を作った。


「寝ようと思えばいつでも眠る事ができるけれど、本来は不要なのよ、ご主人様」

「そうなんだ。……でも、無理しないでね? 万が一の時のために魔力は残してるけど、防犯用のゴーレムとかだったら量産できるし」

「それよりも『身代わりのお守り』を作るといいと思うわ、ご主人様」


 僕が口元を拭うと、嬉しそうに頬を緩めたユキが言った通り、身代わりのお守りはいずれにしても量産しておいた方がよさそうだ。

 僕の関係者って事で、ファマリーの子たちが狙われるかもしれないし、あればあるだけ使うだろう。

 ただ、欠点があるとすれば同じ人が持っていても意味がない、という事だろうか。

 呪いを肩代わりしてくれるんだけど、同時に持っていると両方とも発動しちゃって無駄になってしまう。

 アイテムバッグなど異空間にしまっておいて、そろそろ切れそうだ、という時に取り出さないと何個も持っている意味がない。


「今日から余裕がある時に作っておくよ」

「今日はジュリウスからの連絡を待ちつつ魔道具作りに専念するのですわ?」

「難しい所だよね。一日経っても連絡ないってなるとなんかあったんじゃないかって不安になるし、待っている間に手遅れになっちゃうもしれないし。……何とかして向こうの状況を知りたいんだけど」


 んー、と悩んでいると、綺麗な所作で食事をしていたランチェッタさんが手を止めた。


「世界樹フソーの周辺の状況なら聞けばわかるんじゃないかしら?」

「聞くって誰に?」

「実験農場で働いてくれているドライアドたちに」

「……なるほど」


 ファマリーの周りの畑には姿が見えないから忘れてたわ。

 僕たちの食事を覗いている子たちよりも小柄で、日本人と似たような肌の色をしたフソーのドライアドたちが海を渡ってやってきて、ランチェッタさんの下でアルバイトをしている。

 今は『精霊の道』という物を使って行き来しているらしいから、それを使えば向こうに行って戻ってきてもらうのもできるだろう。


「とりあえず、実験農場に行って話を聞こうか」

「分かったのですわ」

「警備を厳重にするようにと伝えておくわ。まあ、畑の外からは木が邪魔で見えないんだけど」




 食事が終わった後、転移陣を使ってガレオールの実験農場に転移すると、そこにはたくさんのドライアドたちがいた。


「多くない? いつもこんなにいるの?」


 狭い範囲にたくさんいるから多く感じるのかな、って思ったけどそうでもないぞこれ。


「そういえば今日はいつもよりも多かった気がするわ。やっぱり向こうで何かあったのかしら?」

「聞いてみるのですわ~。こんにちはなのですわ~」

「こんにちは~」

「ですわ~~」


 近くの地面をなんか掘っていたドライアドにレヴィさんが話しかけると、他の子たちも反応した。ドライアドの研究をしているラピスさん曰く、個という意識が薄いから自分たちも話しかけられた、と思ってしまうらしい。

 わらわらと近くにいたドライアドたちが集まってくるけど、レヴィさんは気後れした様子もなく最初に話しかけた子に向けて尋ねる。


「今日はどうしてこんなにもこっちに来てるのですわ?」

「なんでだっけ?」

「わかんなーい」

「面白そうだったから?」

「あるばいと!」

「あー、それだったね」

「だから皆で来たんだよね~」


 このカオスっぷり、見覚えがあるぞ。古株の子がいなくて統制が取れてない時のパターンだ。

 きょろきょろとあたりを見回してみたけど見つからなかったので、近くにいたドライアドに話しかける。


「お菊ちゃんはどこ?」

「フクちゃんと一緒に飛んでっちゃったの~」

「キラキラの向こう側のお空に行っちゃったんだ~」

「あるばいとの時間になっても戻って来なかったの!」

「だからみんなで来たの~」

「なるほど。向こうにはドライアドは残ってないの?」

「そんな事ないよ~」

「お世話があるから」

「それにフソーちゃんも寂しがっちゃうもんねー」

「一緒に遠くを見て上げてる子もいるよ」


 ラピスさんの研究によって証明された事だけど、ドライアドたちは同じ種類だったら離れていてもどこかで意識が繋がっていて、何をしているのか何となく分かるらしい。ただ、古株の子は種全体の様子を知る事ができるらしいけど、幼い子が古株の子の様子を知る事は出来ないんだとか。上下関係がなさそうなドライアドたちの中にもそういう関係性があるのが意外だ。

 古株の子がいないから話があっちこっちに行ってしまうけど、とりあえず世界樹フソー周辺は安全だ、という事がドライアドたちへの聞き取りで分かったので、ファマリーの根元に戻り、転移陣を繋いでもらってフソーに向かうのだった。

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