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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第21章 魔道具を作りながら生きていこう

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幕間の物語213.大王は依頼した

 クレストラ大陸の南を治めているのは、大国ヤマト。過去の勇者が建国した歴史ある国だった。

 勇者が建国した当初から徐々に版図を広げていき、今ではクレストラ大陸の中で一番大きな国となっている。

 その国を治めているのはヤマト・タケルという男だった。

 子どもの頃から複数の加護を用いて武功を重ね、英雄として祀り上げられた男だった。

 だが、即位してからは思うような戦果は上がっていない。

 反乱が起きれば即座に鎮圧している手腕は認められているものの、大陸を統一するために行動をしていても結果が伴っていないため、彼を次代の大王として推薦していた者たちは「彼を大王にするのは間違っていたかもしれない」と考え始めている。

 だが、だれもそんな事を本人には言わない。

 血も涙もないと言われているタケルは、例え親族だったとしても諫言した者や反意を示した者を悉く投獄するか処刑していたからだ。

 豊富な戦闘経験に加えて、加護を用いた訓練を人一倍していた彼を止める事ができる者は、広大な土地と大量の国民がいるヤマトですらいなかった。それだけ武に突出した王だった。

 大柄で屈強な体つきの彼は、眉間にしわを寄せながら眼前で跪いている兵士の報告を静かに聞いていた。


「向こうは軍事行動の兆候はない、という事か」

「ハッ! 仰る通りでございます。間者からの報告で、どうやら世界樹の使徒が戦争を嫌っているとの事です」

「……そうか。下がってよいぞ」


 報告をしていた兵士は一礼をすると、踵を返して足早に玉座の間から出て行った。

 悪い報告をする貧乏くじを引かされた彼だったが、首と胴体が無事繋がって部屋から出る事ができて安堵していた。

 そんな彼を気にした様子もなく、タケルは大きく息を吐いた。


「……こうも上手く行かんのはやはり奴のせいか。あの時、さっさと殺しておけばこんな事にはならんかったな」


 配下に置いて上手く使おうと考えていたのが仇となった事を後悔してももう遅い。

 面倒な相手は鳥籠のような物の中に引き籠り、その周囲には北部同盟と名を改めた同盟軍の精鋭が周りを固めている。

 同盟軍に亀裂を入れようとエクツァーの内部分裂を目論んでいたのだが、つい先日、潜ませていた間諜からヤマトの息がかかっていた新興貴族が軒並み没落したと連絡があった。どうやって見抜たのか疑問だったがどうやら異世界転移者が作った魔道具で見分けたらしい。

 搦め手が上手くいなかった事を理解したタケルは、すぐさま軍事作戦に移行してエクツァーに攻め込む準備をさせているが、向こうには転移門と呼ばれる魔道具がある。他国からの援軍が派遣される可能性が極めて高かった。

 まだ国境の近くの町や村にはその姿は見受けられないそうだが、すでに潜んでいるのではないか、という意見も戦略会議の中で出ていた事をタケルは思い出した。


「……まずはやはり、あの者を潰さねばならん、か」


 幸いな事に世界樹の使徒は、鳥籠の外に出てくる事があるらしい。

 狙うならそこだろう、と判断したタケルは服の下から黒い十字架がついたネックレスを取り出した。

 魔力を込めると中央に嵌めこまれていた宝石が怪しく輝く。


「聞こえているか」

『これはこれは大王様。いかがなさいましたか?』

「其方たちの力を借りたい」

『いつでもお貸しいたしますとも。それで? 今回はどなたですかな? 前回のように他国の要人ですか? 我々の神の恐ろしさと共に力を広める良い機会ですから、張り切らせていただきますとも。無論、それ相応の対価は頂きますが』

「分かっておる」

『結構。それで、今回の標的は?』

「オトナシ・シズトとかいう者だ」

『あ~、最近噂の……異世界の者ですか。厄介ですね。真の名を隠しているのかは分かりませんが、呪いが効き辛いんですよ。ですが、彼ほどの有名人を呪い殺せたとしたら、その影響は計り知れないでしょう。最善を尽くさせていただきます。我々の神のために』


 ロザリオから放たれていた怪しげな光が消え、先程まで聞こえていた男の声もなくなった。

 タケルは再び服の下にネックレスをしまうと、次善策を考え始めた。

 それは夕刻まで続き、食事の時間となった。

 ありとあらゆる手段で毒がないか検査された冷めきった食事を一人、食べている所に一人の男が入ってくる。

 二十代前半のその男は、タケルの息子のうちの一人だ。


「フソーに潜入していた愚弟たちから献上された魔道具の検査が終わりました」

「……何か使える物はあったか」

「ハッ。戦闘に直接関係する物はほとんどなく、水の魔道具やアイテムバッグを大量に仕入れた、との事でした。北部同盟軍に下ろされているため市場に出回っていないのかもしれません」

「そうか」

「数を揃える事は出来なかったそうですが、毒を検知する魔道具や髪を乾かすための魔道具、それから――」

「戦いに使えそうな物だけでよい」

「……で、あれば加護無しの腕輪と呼ばれる魔道具くらいかと。一週間かけてすべての魔道具の安全性は確認しております。使い方さえ誤らなければ危険な物はないでしょう」


 目録を見ながら報告をしていた男はタケルの様子を見て話を切り上げた。

 タケルは目録を置いていくように目だけで指示して食事を続けた。

 食事を終えると湯浴みを手早く済ませ、自室に戻る。

 自室にはほとんど物が置かれておらず、大きなベッドがあるくらいだった。

 タケルは今日の夜伽の相手が来るまで一休みしよう、と大きなベッドの上に横たわると、すぐに寝息を立て始めるのだった。

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