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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第21章 魔道具を作りながら生きていこう

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429.事なかれ主義者は否定できなかった

 北部同盟の代表者たちとの顔合わせから数日が過ぎた。

 この数日間で、都市国家フソーの旧市街地には新しい建物ができた。

 いくつも小部屋があるのが特徴の魔道具工房だ。

 小部屋はそれぞれ作業部屋として使われていて、魔道具作成に必要な材料が室内の備品として揃えられている。

 工房長は暫定的にノエルが就任する事になった。

 本人は面倒臭がっていたけど、魔法の国クロトーネからは十数人以上の魔道具師やその卵がやってくると聞いて「しょうがないからやってやるっす」と多少乗り気になった。

 クロトーネ側としては魔道具の研究成果を自国に持ち帰りたいという思惑があるみたいだけど、ご自由にやってくれという感じだ。

 その代わり、クロトーネの大きな街に三柱の教会を建てる事を約束してもらった。管理は元フソーの住人だったエルフたちに任せようと思っている。

 本当は魔法の国だし、エント様の教会だけでいいかなって思ってたんだけど、朝の日課のお祈りの時にエント様が「二人の分も作ってくれるよね……?」と語りかけてきたのでファマ様とプロス様の教会も建てるように追加で要望を出す事になった。


「それにしても……魔道具師は女性しかいないの?」

「そんな事ないと思うっすよ」


 個室を見て回ると魔法使い然とした格好の女性しかいなかった。

 僕より少し年上かな? という見た目の人もいれば、アンジェラたちと同い年くらいだろうか、と思う子もいた。

 工房長のノエルは肩をすくめて「お手付きになる事も考えているんじゃないっすか?」というけど、それだけは断固たる決意で断らねばならない。

 例え身分が高そうな女性からスキンシップをされたとしてもだ。

 シグニール大陸にいる時は毎夜、皆といろいろな事をした……というか、されたからかある程度の耐性はついている……はずだ。


「顔赤くなってたっすよ」

「そこは仕方なくない!?」


 まあ、何にせよ、何事も問題なく工房が稼働しているので良かった。

 ノエルが書いたマニュアルを魔道具『オートトレース』で複製したおかげだろうか。スムーズに魔道具製作に移る事ができている。

 量産できる廉価版の商品はここの人たちに作成をお願いしてもいいかもしれない。

 魔道具工房の様子は見終わったので、指導をする予定のノエルと別れて、馬車で寝泊まりしている旅館へと戻る。

 アダマンタイトの檻の内側に入るために、いちいち【加工】をするのは面倒だなぁ、と思いつつも馬車から降りて、人が通れるくらいのスペースを生み出し、中に入る。

 出入口を作るとか、転移陣を設置するとかいろいろ案は上がっているけど、侵入される可能性がある事を考慮してとりあえず僕が決められた時間に【加工】して出かける人と帰ってくる人を出迎える事になっていた。


「ヤマトとのゴタゴタが終わるまでは仕方ないよね」

「シズト様がお望みであれば、終わらせる事も可能かと思いますが……」

「ヤマトへの被害が大変な事になるだろうから避けたいかな」


 ヤマト対それ以外の大戦が勃発するのはやめて欲しい。

 ただ、それは僕の我儘なので、北部同盟の方々が侵略戦争をするというのであれば好きにすればいいと思う。

 まあ、その場合はビッグマーケットはお終いにするけど。

 転移門は対価を支払ってもらったので悩みどころだけど……状況によるかな。


「シズト様との関係を悪化させてまで侵略しようと考える者は今の所いないようですし、もうしばらくこの状態が続くかもしれませんね」

「まあ、仕方ないか」


 話をしている間に旅館に到着した。ジュリウスは屋内に入るつもりはないらしいので、僕一人で旅館の中に入る。

 従業員のエルフたちが開けてくれた扉をくぐると、出迎えてくれたのは留守番をしていたエミリーとモニカだった。モニカは微笑を浮かべて頭を下げ、エミリーはもふもふの白い尻尾を嬉しそうに振っている。


「「お帰りなさいませ、ご主人様」」


 綺麗に挨拶が揃うのは練習か何かしているのだろうか。

 それとも何かしらの合図があるのか……とどうでもいい事を考えつつも靴を脱ぐとエミリーが靴を棚にしまってくれた。


「何か変わった事はなかった?」

「特にはありません」

「向こうも特に何事もないようです」


 旅館の廊下を歩きながらシグニール大陸にいる人たちの様子をモニカが共有してくれた。

 やる事がないからと、手紙を書いては向こうにいる人たちに送っているそうだけど、別館に住んでいる人たちも本館で暮らしているジューンさんも元気にやっているそうだ。

 ジューンさんからは「夜になると人気が全くなくなる屋敷が少し寂しい」という感じの手紙が来たらしいので、そろそろ帰った方が良いかもしれない。

 とりあえず皆が戻ってきてから相談しよう、と思って夕方まではのんびり三人でボードゲームを楽しんだ。

 もう亡くなってしまったらしいけど、僕と同じように戦闘系以外の加護を授かった転移者がいたらしい。遊戯の神様から授かった加護を使って生み出したボードゲームの一つが、今している遊びだった。

 残念ながら庶民にはそれほど普及していないらしいけど、王侯貴族の間でボードゲームはひそかに人気なんだとか。

 サイコロを振って駒を進める。同じマスにエミリーの駒があったのでその上に自分の駒を重ねた。


「またですか……シズト様は上に乗るのが好きなんですね……」

「誤解を招きそうな発言やめてもらえるかな?」

「次は私の番ですね。……あ、一番上は私のようです。シズト様はどちらも好きなのかもしれません」


 サイコロを二つ振って出た目の二倍の数、コマを進めたモニカが僕の駒の上に自分の駒を乗せながら言った。


「二人でお相手した方が良いのでしょうか」

「一人でお願いしたいです……。あと、こういう話は日が落ちてからでお願いしたいです……」

「そうですか。エミリー、次はあなたの番ですよ。とりあえずサイコロを一つ振ってください」


 しょんぼりとしているエミリーがサイコロを振ると出目は一だった。

 小さな声で「どうしてこういう時だけ出目が良いのかしら」と呟くエミリーに、激しく同意した。

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