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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第21章 魔道具を作りながら生きていこう

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幕間の物語210.公爵家の女主人は念押しした

 クレストラ大陸に新しくできた北部同盟は元々、大国ヤマトに対抗するためにラグナクア、ファルニル、エクツァー、サンペリエの四ヵ国が結んでいた同盟だった。

 ヤマトと隣接していない国々にとっては遠い場所の話だった事もあり、四ヵ国同盟に協力的ではなかったのだが、異大陸からやってきたシズトによって転移門が持ち込まれた事により、一気にヤマト以外の国々がその同盟に加盟し、今では北部同盟という名前に変わっていた。

 転移門によって、元都市国家フソーの首都と、各々の国の大都市が繋がった事により、経済的効果は計り知れないものとなっている。

 ただ、それだけではなく、国主が短時間で集まって話し合いの場を設ける事もできるようになっていた。

 かつて迎賓館として使われていた建物の一室で、円卓の席を囲んでいるのは十三人の男女だった。

 その中でも注目を集めているのは、艶やかな着物と呼ばれる衣装に身を包んだ女性だ。

 彼女は大国ヤマトと同じく、過去の勇者が建国した国の現女王で、ヒミコと呼ばれている。

 彼女が統治しているのはアマテラスといい、建国当初からずっと永世中立国だった。

 だが、そんな国でも北部同盟に参加している。それだけ経済に与える影響は大きいのだろう。

 本人は「占いでそう出たから加わった」と主張しているが、永世中立国だったアマテラスが加盟した事は大きい。

 主導権を握られないように気を付けなければ、と気を引き締めたのはレスティナ・マグナだ。四ヵ国同盟の中で最も国土が広い事もあり、彼女が話を進める事が多かった。

 円卓に座っているとはいえ、主導権を握りたいと考えているのはどこの国も同じはずだ、とレスティナが考えている通り他の三か国もそれ相応の地位の者を会議に出席させている。

 ファルニルのギュスタン・ド・アリーズは例外だが、エクツァーからは第一王子のエメリート・フォン・エクツァーが来ていた。『癒しの王子』と呼ばれる事もある彼は、優し気な顔立ちの青年だった。

 また、サンペリエから外交官として派遣されたサラディオ・ディ・サンペリエは先代国王である。

 そんな中に侯爵家の令息である自分がいるのはやっぱり何かの間違いなんじゃないだろうか、とボーッと遠い目をしながら窓の外を眺めているギュスタンを放っておいて、レスティアは口を開いた。


「そろそろ約束の刻限となります。くれぐれも、現世界樹の使徒様であるシズト殿を怒らせないように注意してください」


 それまで近くの席の者と話をしていた者たちが静かになり、当然だ、というように皆頷いた。

 世界樹の使徒であり複数の加護を授かった異世界転移者であるシズトの実力を侮る者は今この場にはいない。

 世界樹を育てる事ができる加護だけではなく、ダンジョン産の魔道具と同等かそれ以上の出力を出せるものを作る事ができる上に、アダマンタイトすら瞬時に加工し敵を捕まえる事ができるのだ。侮るわけがなかった。


「念のために確認しておきたい事があるのですけれど、良いかしら?」

「なんでしょうか?」


 スッと手を挙げたのは優しげな雰囲気を漂わせている老女だ。

 黒いとんがり帽子をかぶり、体をすっぽりと覆うローブに身を包んだその姿は魔法使い然としていて、一国の女王には見えない。


「禁句のようなものはあるのかしら? もしくは、してはいけない事とか……過去の勇者の一部には差別を極端に嫌う者や、戦争を嫌う者がいたと聞いた事があります」

「そうですね。あまり関わった事がありませんが、あのお方の奥方様とお会いした時にお話を聞きましたが、やはり争い事を嫌うようです。ただ、ヤマトとの事については目を瞑って頂けているのか、今の所何も言ってきていません。ギュスタン様は何かお気づきになった事はありますか?」

「ぼ、僕ですか?」


 その場の全員の視線が集まり、冷や汗が流れたギュスタンは懐から取り出したハンカチで拭いながらしばし考える。


「そう、ですね。使用人のための魔道具を作る御方なので、身分を気にせずに一人一人を大切にする御方なのかな、と思います。選民思想とか、そういうお考えがある方は表に出さない方が良いかな、と」

「なるほど。確かに、生活に関する魔道具がたくさんありましたね」

「それは興味深いわね」


 ダンジョンから手に入る魔道具の多くは、戦闘に関する物だ。水を生み出したり物を収納したリする魔道具はあるにはあるが、それらも冒険者や軍部の人間が使う事が殆どだった。

 生活に関する魔道具がどのような物なのか、興味が湧いた様子の魔法使い然とした老女は『魔法の国クロトーネ』の女王だ。


「是非とも関係を築いてそういう魔道具を見せて欲しい物だね」

「そのためにも、今日の顔合わせでは言動に十分注意してくださいね」


 レスティナが再度念押ししたところで、部屋の扉がノックされ、兵士が中に入ってきた。

 どうやら待ち人が到着したようだ。

 レスティナが立ち上がると、他の十二人も立ち上がって扉に視線を向けた。

 兵士が出ていった後、しばらくしてから扉が再び開かれる。

 扉の向こう側から現れたのは、真っ白な服に身を包んだ黒髪の少年だった。

 注目を集めている事に一瞬ビクッとした様子だったが、彼の手を握っていた少女に促されて室内に入ってくる。

 そうして、自分が座るべき椅子の近くまでやってくると、困ったような笑顔を浮かべ、口を開いた。


「音無静人です。よ、よろしくお願いします……?」

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