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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第20章 魔国を観光しながら生きていこう

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幕間の物語203.賢者たちは今日も進めなかった

 ダンジョンを探索中だったシグニール大陸の勇者一行は、突然の雪山エリアへの転移を理由に退却し、装備を整えた後、翌日には離れ小島のダンジョンを訪れていた。

 勇者の御目付け役兼護衛役であるラック、カレン、シルダーの三人も勇者である明たちと同じデザインの魔道具『適温コート』を身に着けていた。

 転移陣からダンジョンの入口へと向かいながら、ラックたちは話をしていた。


「いやぁ、ドランにサイレンスがあってよかったわ」

「ファマリアにもあるといいんですけど、基本的にはシズト様の奴隷ばかりですから必要ありませんもんね」


 ラックがまとめて買ってきた適温コートを羽織っているカレンは、動作を確認しながら相槌を打った。

 その後ろではシルダーも無言で頷いている。


「これで寒さだけじゃなくて、暑さの初見殺しも対応できるだろ」

「あのダンジョンだったらありそうですよね。……そういえば、ギルドへの報告はされましたか?」


 カレンに問いかけられた明は、当然だ、と頷いた。


「はい。昨日の内に終わらせておきました。元々、未知の領域である六十一階層以降はファマリアの子たちが足を踏み入れないようにお目付け役の冒険者たちに通達されていたようですが、改めて警告してくださるそうです」

「それなら安心ですね。分散させるために各ボス部屋の後ろに設置した転移陣を使って探索をしているみたいですし、六十階層のボスを倒したら行けちゃいますからね」

「あの大量のビッグスライムやポイズンスライムなどを殲滅できるレベルの子がいるんですかね?」

「どうでしょう。アキラの魔法レベルまでは流石に難しいと思いますが、エルフや元冒険者たちに講義をされ、幼い頃から魔道具を使って魔力を扱い、魔力切れになるまで魔力を使い切って増やしているようですからできるかもしれません」

「なるほど。魔力の増加は僕もしたいところですが……魔力切れになるまで魔力を使い切っても安全が保障されているからこそできる事ですね」

「ダンジョンの調査が一段落したらお休みの日を設けてその日に行うのもありかもしれませんが……」

「王家の庇護があるわけでもなく、何が起きるか分からない以上できないですね」


 そのような話をしている間にダンジョンの出入り口に到着していた。

 例のごとく、既に日が昇ってしばらく経っており、ダンジョン入場待ちの列はなく、出入り口から出てくる集団ばかりだ。

 どの集団もそのほとんどの者が奴隷の証である首輪を着け、その後ろを中年の冒険者やエルフが様子を見守りながらついて歩いていた。

 楽しそうにお喋りをしていた彼女たちだったが、明たちとすれ違う時にはしんと静まり返ってジロジロと明たちを見ていく。

 まだ勇者一行は信用されているわけではないらしい。

 こちらの世界で一度、シズトを捕まえようとした事が伝わっているから、これからの行動で信頼を勝ち取っていくしかないと思う明だった。

 ただ、彼の目の前を歩く金髪の少年が、奴隷の集団の中に女性がいるとじろじろと不躾な視線を送るので、しばらく時間がかかりそうだ、とため息を吐いた。




 六十階層のボス部屋の後にあるセーフティーゾーンに設置したままだった転移陣を使って転移した明たちは、物資の最終確認を済ませた後、さらに下の階層へと降りて行った。

 階段を下りきると、昨日設置しておいた転移陣がある空間へと出た。

 明が組み立て式の転移陣を解体しながらアイテムバッグにしまっていると、その様子を後ろからのぞき込んでいたカレンが明に話しかけた。


「この洞窟も一種のセーフティーエリアなのでしょうか」

「どうでしょう。単純に魔物が転移陣に興味を示さなかっただけかもしれません」


 片付けが終わると、斥候として洞窟の外の様子を見に行っていた陽太とラックが戻ってきた。コートについているフードの上には雪が積もっていた。


「外は吹雪いていて先がよく見えん。雪に足を取られながら歩く事になると厄介だから、当初の予定通りここを拠点として周辺をマッピングしつつどんな魔物が出るのか確認していくのが良いと思うがどうする?」

「そうですね。下へと続く階段がここのようにどこかの洞窟にあるのならいいんですけど、雪に埋もれていると厄介ですし、そうしますか。広範囲の雪を火魔法で溶かす予定でしたが、吹雪いているのならしばらく待機にしましょう」

「あの雪だるまを静人から買い取ったら?」

「「雪だるま?」」


 ドワーフの国ウェルズブラの国土を縦横無尽に飛び跳ねて移動している魔道具『除雪雪だるま』の存在を知っている姫花が唇を尖らせながら言った言葉に引っかかったのは、その存在を知らないラックたちだった。姫花の近くにいた寡黙な男シルダーも不思議そうに首を傾げている。


「なんというか……ゴーレムのようなものが飛び跳ねながら進んで道を作っていくんですよ。豪雪地帯のウェルズブラで最近活躍している魔道具の内の一つです」

「っていうか明が同じような物を作って除雪すればいいんじゃね?」

「なるほど……溶かす事ばかり考えてましたけど、それもありかもしれません。ただ、静人が作ったあの雪だるまは様々な魔法を付与しているようですので全く同じものは無理でしょうけど……」

「周辺を探索するのならゴーレムじゃない方が良いんじゃねぇか? ゴーレムや使役した魔物を使って目的地まで突っ切る方法もあるにはあるが、下の階層へと続く階段がどこにあるか分かんないだろ?」


軍隊として従軍した際の経験からラックがそう言うと、明はしばらく考え込んだ後、頷いた。


「……ですね。いずれにせよ、吹雪が止むまではここで待機するしかないですね」


 明たちは洞窟の奥に戻り、再び転移陣を設置すると、その傍で警戒をしながら吹雪が止むのを待ったのだが、結局その日、吹雪が止む事はなかった。

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[気になる点] >突然の雪山エリアに飛ばされた事を理由に退却し 突然“の”で続けるには文章的におかしい気がします →雪山エリアに突然飛ばされた事を理由に退却し でよろしいのでは? 突然“の”に…
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