407.事なかれ主義者は体臭が気になる
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魔国ドタウィッチの王様とお話をした数日後、行くかどうか悩んだけど、結局魔法学校に行く事になった。
しばらく間が空いたのは話し合いをしていたのもあるけど、ノエルが「ボクも絶対行くっす!!」と言ったからだ。
ここ数日、ノルマ以上の魔道具を鬼気迫る勢いで作っていたおかげで、ホムラたちにオッケーを貰ってついて来る事が確定した。
「研究せずに頑張ったね」
「今後楽になるためっす。背に腹は代えられないっす」
そのことわざ、こっちにもあるんだね。過去の勇者が広めたのかな。
朝食を食べ終えた僕とノエルは既に屋敷の外に出ていた。
近くには転移陣があり、その管理をしているドライアドたちは僕の体に纏わりついている。
頭のてっぺんで「レモーン!」と歓喜の雄叫びを上げているレモンちゃんを落ち着かせながらノエルに釘を刺す。
「今日はまず、魔道具店を見て、そこに転移陣を設置する事が先だからね。いきなり一人で魔法学校に行かないでね」
「分かってるっす」
「言う事聞かなかったらホムラとユキに連れて帰ってもらうからね」
「……重々承知してるっす」
今日、ドタウィッチに行くメンバーの中にはホムラとユキもいる。新しい魔道具店の準備と管理を任せるためだ。魔法学校にもついて来てもらうのもありかな、とは思ったけど、ホムンクルス……じゃなくて人型の魔法生物をみんな見た事がないらしいので、万が一のことを考えて店番を頼むつもりだ。
ただでさえ魔法が使えない者がいるのに、これ以上火種になりそうな者は連れて行かない方が良いだろう、という判断だった。
……クーはきっとついて来るだろうけど、彼女は何かあった際に僕を緊急避難させる要員らしいのでオッケーが出ている。まあ、おんぶして移動するから守りやすいってのもあるかもしれないけど、それはホムラととユキには伝えないでおこう。伝えたら二人とも負ぶさってくるかもしれないから。
「それにしても遅いっすね」
「レヴィさんがドレスに着替えてるからね。貴族階級の人間も生徒の中にいるから、念のためそういう格好で行くってセシリアさんが言ってたじゃん……って、ノエルはもうその時にはいなかったか」
朝食の時に予定の確認をしていたけど、その前にノエルは口に物を詰め込んだまま食堂を後にしていた。
こういう事もあるから食事が終わるまで待っていて、って言った方が良いかもしれないな。
「ラオさんとルウさん、ドーラさんは装備の最終確認をしてくるって。ジュリウスは問題ないの?」
「はい。常に万全の状態で待機しておりますから。仮面をつけるくらいですね」
世界樹の番人は全員仮面をつけている。ジュリウスはいつも近くにいるのなら仮面を外してほしい、と言ったらやめてくれたんだけど、今回はつけていくようだ。既に仮面を装着している。
「それにしても、相変わらずドライアドに人気っすね」
「ちょっとくらいノエルやジュリウスの所に行ってもいいのにね」
「私には作物を渡すだけですから、シズト様は特別好かれているのかもしれません」
「なんかドライアドが好む匂いでも出てるんじゃないっすか」
「そんな事はない……と思うけど」
ドライアドたちによじ登られつつも自分の体の匂いを嗅いでみたけど、正直自分じゃ分からん。
フェロモンとかだったらいいけど、変な匂いがするって言われるとなんか嫌だなぁ。
念のため、帰ってきたらしっかりと体を洗おうかな。
念入りに匂いを嗅いでいたら、ふっと肩より上が軽くなった。
振り返るとルウさんがレモンちゃんを持ち上げている。
その後ろにはラオさんが僕の方を見ながら不思議そうに首を傾げていた。
姉妹という事で似ている二人だけど、燃えるような赤い髪が短くて、専用のグローブを身に着けているのがラオさんだ。接近戦をするため、防具もある程度耐久力のある物を身に着けているけど、動きやすいように最小限しかない。
妹のルウさんは髪を長く伸ばしていて、今は後ろで一つに結んでいた。
武器はごついブーツだ。ラオさん以上に機動力重視だから、上半身の防具はそこまで耐久性はないらしい。
「シズトくん、何してるの?」
「ドライアドに好かれるのはなんか匂いがするんじゃないかってノエルが言うんだけど……変な匂いするかなって」
「んー、特にしないと思うけどなぁ。あ、汗の匂いは好きよ?」
汗臭い!?
「単純に加護の影響とかじゃねぇか? そいつらは個人の識別はうまくできないけど、加護があれば識別しやすいっていつだったか言ってただろ」
「あとは良く関わるからとかだと思うのですわ~」
ドレスに着替え終わったレヴィさんも、話が聞こえていたのかそれとも心を読んだのか話に加わってきた。
独特な匂いは出ていない説が有力なようだ。
……ただ、だれも汗の臭いの事は否定してくれないから、明日から朝風呂もした方が良いかもしれない。
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