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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第20章 魔国を観光しながら生きていこう

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406.事なかれ主義者は諦めきれない

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 クーに転移魔法の相殺をしないようにというと、膨れっ面になって拗ねてしまった。

 ただ、それ以外は特に問題なく、フランシス様が転移させてくれた部屋へ無事についた。


「ほら、ちゃんと大丈夫だったじゃん」

「結果論ってやつでしょ~」

「そんな事ないよ。レヴィさんが警戒してなかったんだから」


 今のレヴィさんは魔道具『加護無しの指輪』を首から下げている。

 フランシス様が何かしら企んでいたらレヴィさんが誰よりも早く気付くだろう。

 そう思っていたけど、フランシス様が「加護を過信しない方がよいぞ?」と椅子に腰かけながら言った。


「相手がどんな加護や技能、魔法を使えるか分からない以上、『もしかしたら心を読めないかもしれない』と警戒しておく事に越した事はない」

「……ほらね」

「フランシス様はそういう魔法やコツをご存じなのですか?」

「いや、知らんわい」


 知らないんかい!


「そんな事より、ほれ、空いている椅子に座るといい。謁見の間じゃと気楽に話せんからここにしたが、良かったかのう?」

「お気遣いありがとうございます」


 おんぶ紐の結び目をセシリアさんが解いてくれた。

 クーはしばらくの間しがみ付いていたけど、僕が椅子に座ろうとする気配を察知すると転移して隣の空いていた椅子に移動していた。


「見事な転移魔法じゃのう。しかもワシと同じ無詠唱とは……。相殺されたのには驚いたが、転移魔法に関してはお嬢さんの方が上手かもしれんのう」

「かもじゃなくて上手だけど?」

「ちょっと、クー!」

「ふん!」


 プイッとそっぽを向いてしまったクーはまだご機嫌斜めなようだ。

 すみません、とフランシス様に頭を下げると「気にしなくていい」と許していただけた。


「そもそも非公式の会談じゃし、ワシから招いた結果じゃからのう。多少の事は目を瞑るつもりじゃ」

「ありがとうございます」

「よいよい。さて、不貞腐れてしまっておるお嬢さんもいる事じゃし、話をできるだけ手短に済まそうかのう。事前に調べさせた者の報告によれば、魔道具の交渉に関してはレヴィア王女殿下が担当している……という事で間違いないかの?」

「そうですね。物の価値とか、相手の事とか他者との関係性諸々知らないですし、レヴィさんは交渉上手なので任せっきりです」

「そうか。であれば、先にそちらから話を済ませてしまってもいいかの?」

「どーぞどーぞ」


 僕はのんびりと目の前に用意された茶菓子と飲み物を楽しんでいるので。

 お茶菓子は食べても食べても「お代わりってあります?」と聞く前に、部屋に待機していたドタウィッチの侍女が動いて用意してくれた。

 クーのご機嫌も食べさせている間に少しずつ回復してきている。

 たくさんの菓子を食べ続けている間にも「転移門」やら、「魔力マシマシ飴」やらいろいろ話が聞こえてくるけど、僕はノータッチを決め込んでいるので、クーと一緒におやつを食べ続けた。



 フランシス様は下民区と呼ばれている内壁の外側の現状をよく思っていないらしい。

 できる事ならすべての国民に平等に魔法が行き渡れば、と思っているようだ。

 ただ、建国当初から少しずつ生まれ、溜まってしまった選民思想のようなものは、一代でどうこうできるものではなかった。


「だから、魔道具には期待をしておるんじゃよ。誰でも魔法を当たり前のように使えるようになれば、少しはそういう意識がなくなるのではないか、とな。ただ、知っておるかは分からんが、魔道具の複製はなかなか難しい。ダンジョン産の魔道具は同じ様な物は探せばあるが、まったく同じ物はないからのう。サンプルも比較する物も少ない中で頑張ってくれておるんじゃが、どうしても質の劣る物しかできんのじゃ」

「僕の所で作ってくれている魔道具師たちもそうですね」

「ほぉ、シズト殿も魔道具師を雇っておるのか。まあ、加護の事を考えれば当然じゃな」

「ただ、研究は一部の者しかしてないですね。ほとんどは魔道具店の魔道具を量産する毎日です」

「何だか勿体ないのう」

「そうしないとシズトが魔道具を作り続ける事になりかねないから仕方がないのですわ。魔道具師候補を育成中ですし、いずれは解決するとは思うのですわ。……ただ、それよりも早く新しい店ができてしまうのが問題ですけれど」

「なるほど。それで、この国に寄った、というわけじゃな」

「他にもシズトが魔法学校に興味を示してたから、というのもあるのですわ」


 フランシス様は自慢の髭を弄りながら「そうじゃのう……」と考え込んでいるようだ。

 レヴィさんと一緒に茶菓子をつまみながら待つ。


「先程も少し言ったが、内壁の内側――『学生区』と呼ばれている場所じゃが、選民思想が広がっておるが、魔法学校内もそうなんじゃよ。多少マシではあるが、一部の生徒は目に余るものがあるんじゃ。その事を考えるとあまりオススメはできんのう」

「そう、ですか」


 問題が起こるのは本意ではない。っていうかぶっちゃけ巻き込まれたくないので諦めるしかないかな。

 そう思ったけど、フランシス様は「じゃが……」と言葉を続けた。


「そこら辺は風紀委員に任せればよいじゃろう。幸いな事に、現風紀委員長はそういう思想を毛嫌いしておるし、なによりドラゴニア王国の姫君じゃからのう。頼みやすいじゃろう?」

「………そう、ですわね」


 どこか歯切れ悪く答えるレヴィさんの様子が気になったけど、どうやら学校に入れそうだ。

 魔法学校にいけばもしかしたら魔法を使えるようになるんじゃないか、とか思ってたけど面倒事に巻き込まれたくないし、スカウトするだけに留めようかな。

 ………いや、身体強化は基礎って言うし教える人が先生ならもしかしたらできるかも……?

 教わる場所も気をつければいい気がするし……後で相談するか。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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